第17話
『帰ってきたな!よしつ『本日の終業時間です。職員は速やかに帰宅してください』グアァァァ!?もうかよ!?』
「づっ、づがれだ…」
トンガリ造船所の蛍の光的な曲を聴きながら、フラフラと船を降りる。
チラリと外を見れば、次々に帰投するトンガリ造船所所属の実験船も見える。
「拠点砲の威力はどうだ?」
「宙賊基地の防御力にブレが大きくてなぁ…あーあ、後20か所くらい宙賊基地ねぇかなぁ…」
耳をすませば研究員の会話も聞こえる…どうやら、ステップ星系に目ぼしい宙賊基地がないらしく、スタート星系にも遠征していたそうだ。
オンボロ船で2日かかった航路を、1日で往復していて技術格差を感じつつも、フラフラと外へ出て、目的の店を目指す。
「賑やかだなぁ」
遠目に繁華街が見え、賑やかな光景に目を細める。
最近、本当にここ5日位で、このステップ星系は尋常でなく治安が改善している。
宇宙へは宇宙船開発者が宙賊討伐へ向かい、コロニー内へは陸上武具開発者が宙賊討伐へ向かう。
見える範囲に居なくなれば、宙賊の用いる通信方法を即効で解析し、草の根掻き分けてでも、1匹残らず宙賊討伐してやろうと動いた研究員達の成果によって、この星系は異常に治安が改善している。
更に訪れた監査官達の働きにより、コロニーの癌が一掃。
それによって空いた空白に様々な企業が参入し、首都コロニーは今空前の好景気であった。
「おっ、ここだ」
そんな好景気に沸く町を横目に、たどり着きましたは《快適マート》だ。
名前そのまま庶民の味方なスーパーマーケットなんだが、ここの特徴はお惣菜!
大体の食べ物がフードプリンターで出来上がるこの時代において、中々挑戦的な試みなのだが…これが結構美味しいのだ!
作っているのがフードプリンターなのは変わらず、しかし幾つかのプリンターを経由する事で独特の美味しさを出しているお惣菜!
最近のマイブームは、これを1品買って持ち帰り、ローズとワイワイ言いながら一緒につつく事である!
「…きゃるぅ」
「ふんふーん♪」
「スキャルぅ…」
「ふんふ…ん?」
「スキャルぅ!助けて欲しいのですぅ!うわぁぁぁん!」
「ペトラぁ!?」
「美味しい…美味しいのですぅ…グスッ、グスッ…」
ペトラ発見から1時間程、急いでローズに連絡し、ローズに指定されたアレコレを快適マートで買い込み帰宅した俺は、涙を流すペトラを横目にローズから事情を聞いていた。
「嵌められた?」
「ペトラ曰くそうみたいね。
なんでも、あの猫お局だけじゃなく、もう数人からも目を付けられてたらしくて…監査が入ったタイミングで、そいつらの不正を押し付けられたと」
「なんでそこまで…」
「チューは…孤児なのです…だから、宙賊の仲間だって…」
「おいおい…」
そんな子供みたいな…
「実際孤児から宙賊になる人は多いわ。
親族からの助けがないから、1度の失敗でガラガラっと…ね?」
「マジかぁ…」
「とはいえ、そんなこともなく生活してる人が大半ではあるのよ。
今回の件も、大っぴらになると中々大きな問題なのだけど…」
「アイツら…早々に逃げたのです…責任を取るって…不正を全部押し付けて!」
「おっふ…」
キッツいなぁ…
「良かったのですスキャル…3万エネ帰って来るのです…チューはその着服がトドメで懲戒免職なのです!」
うわぁ…うわぁ…あれかぁ…
「映像しっかり残ってたんでしょうね」
「証言も有りそうだなぁ…」
「うわぁぁぁん!」
まぁでも、お局猫の指示っぽいのと…
「懐に入れてるのもお局猫っぽいよなぁ…」
「そうなのです!あの後ブランドのバック自慢してきたから、間違いないのです!」
泣きながら怒り、ご飯を食べては大粒の涙を流すペトラを横目に、ローズへと集合をかける。
「…どうするよ?」
「…どうするの?」
「…選択肢有るかぁ?」
「一応、見捨ててペトラ宙賊へルートなら有るわよ」
「…この好景気効果で就職できたりは?」
「無理よ。
口座が凍結されてるのを確認したわ。
…有り体に言うと、信用無さすぎて論外ね」
「そっかぁ…」
この前の《手料理ステップ》も、今回の《快適マート》もペトラに教えて貰ったお店だし、シュミレーターの利用やら、トンガリの実験体になる時の契約関係やら、結構世話になってるんだよなぁ…
「………はぁ…雇うかぁ」
「ふふっ、貴方ならそう言うと思ってたわ」
「…ふぅ…今回は部屋があるから気楽だな」
「あら?私はあの生活も悪くなかったわよ?」
「俺はドキドキが止まらなかったけどな」
「ふふっ………ふぇ?」
なんかまたブツブツ言い始めたローズは一旦放置しつつ、ペトラの方へと移動する。
「ペトラ、俺に雇われる気はあるか?」
「グスッ…グスッ…」
「おーいペトラー」
「グスッ…グスッ…あぇ?」
「あー、あー、顔がグズグズに…」
ティッシュ有ったっけ…取り敢えずハンカ「ぐふっ」…ペトラ強襲!?
「ある!あるのです!一生ついていくのです!」
顔グリグリ止めて!?服が…服がぁ!?
「へっ?…あっ!雇うやつ?」
「なのです!スキャルは命の恩人なのです!」
「じゃあ条件の擦り合わせを…」
「衣住食!衣住食だけは保証して欲しいのです!」
「おぉぅ…押し強いな…衣はともかく、住と食は船に付いてるから大丈夫だぞ」
「全裸は!全裸は嫌なのです!」
「しねぇよ!?何処の好色貴族だよ俺は!?」
「よっ、良かったのです…」
後ろの方で〔全裸!?〕と叫んだきりまたブツブツ言い始めたローズは、一体何なんだよ!もう怖いよ!
「とにかく、服は給料から買って貰うとして…給料は幾らにしようか…」
「チューの役職が決まってないから、ちょっと決めにくいのです…」
「それもそうか…とは言え、無しもマズいだろうしなぁ…」
「一応、チューの立場を元に言うと、利益の0.1%~1%が相場なのです」
ペトラの目がキリッとしてる。
仕事モードっぽいな…顔涙と鼻水でグッチャグチャだけど…威厳がねぇ…
「そうだなぁ」
1%がどのくらいの負荷なのかも、いまいちわからない…
「後は固定給として支払う方法もあるのです。
いずれにしても、衣住食を保証すれば桁が1つレベルで安くなるから、大抵の傭兵はそこを保証するのです」
「ほえー、なるほど」
「ぶっちゃけるのですけど、そこを保証しない傭兵はヤバイのです」
「…というと?」
「保証されてないから、食料を買い込んで、倉庫の隅を借りてテント暮らしなのですけど…大体、船長が洒落にならない利用料を取るのです」
「Oh…」
「最悪の場合、船長が敢えて寄港せずに餓えさせて、食費請求で借金地獄なのです」
「マジかよ…」
「この際、衣住食が保証されるなら暫く無給でいいのです。
傭兵ギルドの統計的にも、大体1月くらいでポジションが定まるから…その時に決めればいいのです」
「うぅむ…じゃあ、それでいくかぁ…決まったタイミングで、遡って給料を支払うってことで」
「ラジャーなのです!」
スキャル は ペトラ を 仲間にした
「よし!じゃあ俺達も晩御飯とするか!ローズ!食べるぞー!」
「………はっ!わっ、わかったわ」
そうして、人数の増えた食卓は…やはりその分だけ輝きを増すのだった。




