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バタフライエフェクトギルド〜異世界のギルド、書類が山積みだったので全部やっておきました〜  作者: くろかっぱ
二章

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第三十四話:動く街と、明日の準備

朝、ギルドのカウンターに立った。

依頼板が埋まっていた。

魔獣討伐の依頼が増えていた。先週より多い。先々週よりもっと多い。

ティナが「今日も満員ですね」と言いながら帳面を開いた。


「魔石の回収依頼、好評ですよ。昨日だけで十二件でました」


「そうですか」


「冒険者の皆さん、なんか楽しそうで」


「報酬が上乗せされているので」


「それだけじゃない気がするんですけどね」

ティナが笑いながら次の書類を手に取った。



昼前、マレクが顔を出した。

「困ったことになった」


「何がですか」


「肉が余ってる。魔獣の討伐が多すぎて処理が追いつかない」


「買い取れない分はどうするんですか」


「干し肉にするか塩漬けにするかしかない。でも量が多すぎる」


少し考えた。


「ヴェタ家に持っていきますか」


「ヴェタ家に?」


「明日、ラルタ村に行きます。ルウとポウに護衛を頼もうと思っています。ついでに持たせます」


マレクが「……お前、いつの間にあそこと仲良くなったんだ」と言った。


「仕事です」


「そうか」とマレクが言った。少し口元が緩んでいた。



午後、ゲオルクが来た。

作業台に魔石をいくつか並べた。

「割り方で音が変わる」


「どう変わりましたか」


「雑に割ると断面がでこぼこになる。でこぼこが多いほどノイズが増える。丁寧に割るほどクリアになる」


「大きさと通信距離の関係は」


「試した。大きい石ほど遠くまで届く。魔力が少なくても届く」


「つまり」


「魔力が多くて大きい石を丁寧に割れば、一番遠くまで届く」


少し間があった。


「……ガドさんに頼めば」


「化け物みたいな距離になるな」


ゲオルクが腕を組んだ。

「バッハとルードも面白そうな顔をしていた。加工の工夫を試したいと言っている」


「ありがとうございます」


「俺が楽しいからやってる」

ゲオルクが帰っていった。



夕方、レイモンドが来た。

「銭湯の件、順調ですよ」


「そうですか」


「ルードさんが湯船の設計を終えました。ミゲルさんが材料を確認しています。ゲオルクさんが釜の増設に取り掛かっています」


「レイモンドさんも動いているんですか」


「人材を出しました。あとは資材の手配を少し」


レイモンドが微笑む。

「なんとかなりそうですよ」


「ありがとうございます」


レイモンドが帰り際に振り返った。

「ケンジさん、魔石の件ですが」


「はい」


「大きい魔石、いくつか集まり始めています」


少し止まった。


「皆さん、何に使うかは知らないまま楽しそうですよ」


「早いですね」


「当然です」

レイモンドがにこにこしたまま帰っていった。



夜、ギルドの書庫でラルタ村の資料を探した。

薄い束が一冊あった。

川沿いの農村。農業と漁業がメイン。人口は四十人ほど。最近魔獣の目撃が増えている。定期的な討伐依頼は少ない。


地図を広げた。

ベルタから南東に半日ほど。川沿いの道を行けばいい。川の向こうがランバルト方向になる。


帳面にメモを取った。

確認すること。魔獣の被害状況。村の収益。人口の動き。川の向こうの様子。



翌朝、ギルドの前にルウとポウがいた。

ルウが腕を組んで立っていた。

ポウがにこにこしていた。


「おはよー!」


「おはようございます。来てくれてありがとうございます」


「依頼か」


「護衛をお願いしたいです。ラルタ村まで」


ルウが少し目を細めた。

「字の勉強はあるか」


「道中教えます」


「了解」


「これもどうぞ」

大きな袋を渡した。

旅人の一口、蜜の雫、串焼き、マレクから預かった塩漬けの肉。

ルウが袋を受け取った。

ポウが「いっぱい!」と笑った。

ルウが「黙れ」と言った。


「2日後に迎えに来てもらえますか」


「了解」


「道中、字を教えます」

ルウが少し止まった。


「……今からか」


「歩きながらでも教えられます」


ポウが「やったー!」と笑った。

ルウが袋を持ち直した。


「……行くか」



街道を歩き始めた。

空が広かった。

久しぶりに街の外に出た気がした。


ラルタ村まで、半日。


今はまだ、歩く方が早い。


なんとかなりそうだ。


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