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バタフライエフェクトギルド〜異世界のギルド、書類が山積みだったので全部やっておきました〜  作者: くろかっぱ
二章

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第三十三話:手紙と、音と、なんとかなりそうだ

朝、ギルドに手紙が届いた。

王都からだった。


封を開けた。


イレーナの字だった。

二つのことが書いてあった。


一つ目。ランバルトの動きが活発になっている。国境付近の魔獣の討伐数が増えている。注意してほしい。


二つ目。ラルタ村の防衛強化と収益改善の指導を依頼したい。ベルタから近い。できれば早めに動いてほしい。


返事を書いた。


わかりました、動きます。それだけ書いた。


封をして、使いに渡した。


王都まで何日かかるだろう。

五日、いや一週間か。向こうからまた返事が来るまで、さらに一週間。


手紙を見ていた。

遅い。


メールがあれば。いや、スマホがあれば。

音を届ける方法があれば。


少し止まった。


音。


帳面を開いた。先日のメモを見た。

魔石。同じ音がしていた二つの石。

机の引き出しを開けた。

買った二つの魔石が入っていた。


取り出した。


片方の石に魔力を少し込めた。


「聞こえますか」


もう片方の石が、小さく震えた。


もう一度やった。

「聞こえますか」


小さく音がした。

「……こ」


止まった。


固まった。

魔力が足りないのか。


立ち上がった。カウンターに出た。

ギルドの棚に魔石が並んでいた。討伐報酬の残りだ。大きいものもある。

一つ手に取った。

魔力を込めた。


「聞こえますか」

何も起きなかった。


もう一度やった。

何も起きなかった。


首を傾けた。

なぜ買った石は反応したのに、こちらは反応しないのか。


引き出しから買った石を取り出した。


並べた。


よく見た。


加工されていた。

装飾用に削った跡がある。


少し止まった。


元は一つだったのかもしれない。


帳面を開いた。



『同じ音』

メモを追記した。




『分割?』




廊下に出た。


「アンばあさーーーん!!」


マーサが「どうしたんだい!!」と飛び出てきた。

ベックが「何事ですか」と顔を出した。

ティナが「ケンジさん!?」と言った。

ジンが耳を押さえていた。

ルウは真顔でみてた。

ポウが「アハハ!」と笑った。


「…………すみません、取り乱しました、ジン少しいいですか。ガドさんの所へ一緒に来てもらえますか」



執務室に三人が集まった。

買った二つの魔石を取り出した。


「ジン、廊下に出てもらえますか。この石を持って、扉を閉めてください」


ジンが「……わかった」と言って出ていった。

扉が閉まった。


片方の石に魔力を込めた。

「聞こえますか」


しばらくして、扉の向こうからジンの声がした。


「聞こえる」


ガドが少し目を細めた。


「もう一度」


「聞こえますか」


「聞こえる」


ジンが扉を開けて戻ってきた。

「クリアに聞こえました」


「ガドさん、試してもらえますか」

石を渡した。


ガドが石を手に取った。

魔力を込めた。

「聞こえるか」


扉の外から声がした。

「っ……!!」


ジンだった。


全員が止まった。


ジンが扉を開けた。顔が青かった。

「……でかすぎる」


「ガドさん、少し抑えてもらえますか」


「……これでも抑えている」


全員が黙った。


「別の魔石では反応しませんでした」


ガドが石を見た。

「理由は」


「まだわかりません」


ガドが「……使えるのか」と言った。


「使えます。まだ完成ではないですが」


「レイモンドに伝えろ」


「わかりました」


ガドがしばらく石を見ていた。


「……よくやった」

それだけ言って、書類に視線を戻した。



役場に向かった。


レイモンドが出てきた。

「あらまあ、ケンジさん」


石を見せた。実演した。


レイモンドが黙っていた。

長い沈黙だった。


ペコペコが完全に止まっていた。

「……これが完成したら」


「街と街が繋がります。王都とも、ラルタ村とも」


レイモンドが石を見た。

少し黙った。


「……これは、外に出さない方がいい話かもしれませんね」


「まずは集めましょう」


「気付かれる前に」

レイモンドが立ち上がった。


「ガドさんに魔石の回収依頼を冒険者に出してもらうよう話します。報酬も上乗せして」

目が笑っていなかった。


「……先手を打ちますね」


「当然です」

レイモンドがそそくさと動き始めた。



夜、帳面を開いた。


イレーナへの返事は出した。

魔石は動いた。まだ完成ではない。でも見えてきた。

やることが増えた。


帳面を閉じた。


そういえば、銭湯の話はどうなっただろう。

アンばあさんに聞いていなかった。



翌朝、食堂に行った。

アンばあさんが「あ、ケンジさん」と笑った。


「銭湯の話ですが」


「もう動いてるよ」


少し止まった。


「……いつの間に」


「ルードさんとミゲルさんが昨日から話してたよ。ゲオルクさんも巻き込んだみたい」


「そうですか」


「ケンジさんが魔石で走り回ってる間にね」

アンばあさんがにこにこした。

「なんとかなるもんだねえ」


「そうですね」


外が明るかった。

なんとかなりそうだ。


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