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第49話 神速の銀狼、結婚の事実で王都の女性たちを絶望のどん底へ叩き落とす

「――嘘よぉぉぉっ!! あのレイ様が、結婚しただなんてえぇぇっ!!」

「信じない! 公式発表があるまでは絶対に信じないわよ!!」


その日、王都中に未曾有の激震が走った。

原因はただ一つ。緋翼騎士団が誇る最高戦力にして、王都中の女性たちの憧れの的である『神速の銀狼』レイ・アルジュの電撃結婚の噂である。


無理もない。

レイ・アルジュといえば、弱冠十七歳にして騎士団のエースを務める『圧倒的な実力と将来性』。

誰もが振り返る、透き通るような蒼い瞳と銀糸の髪を持つ『超絶イケメン』。

長身で手足が長く、無駄な肉の一切ない『完璧なスタイル』。

さらには、休日は真面目に訓練か買い物しかせず、酒も飲まず、女遊びの噂などただの一つも出たことがない『国宝級の誠実さ』。


まさに、非の打ち所がない『極上の超優良物件』であった。

王都の貴族令嬢から平民の娘まで、皆が「あわよくば」と密かに狙っていた、絶対不可侵のアイドル。

そんな彼が、何の前触れもなく、恋人の噂すら一切ない状態から、いきなり「結婚した」というのだ。


「お相手は誰!? どこの高位貴族のご令嬢なの!?」

「まさか他国の王女様とか……!?」

「いいえ、先日のスタンピードから王都を救った彼への褒賞として、どこぞの姫君が強引に押し掛けたに違いないわ!」


パニックに陥った女性たちは、噂の真偽を確かめるべく、我先にと緋翼騎士団の正門へと押し寄せた。


――一方、その頃の緋翼騎士団・正門前。


「お、おい! 押すな! 危険だから下がってくれ!」

「団長! 門前の警備が突破されそうです! 女たちの圧が凄すぎて、歴戦の騎士でも押し負けそうです!!」


正門を警備していた騎士たちは、詰めかけた数百人規模の女性ファンの暴動(もはや魔獣のスタンピードと同レベル)を前に、悲鳴を上げていた。

オーガの群れよりも恐ろしい、絶望と怒りと悲しみに狂った乙女たちの波。


「レイ様を出して!! ご本人の口から聞くまで信じないわ!」

「泥棒猫の女の顔を見せなさいよぉぉっ!!」


対応に駆り出されたヘイズは、もみくちゃにされながら空を仰いだ。

(……だから言ったんだ。あいつが結婚なんてしたら、王都がパニックになるって……!!)


「ちょ、ヘイズ! お前、レイの親友だろ!? この騒ぎ、なんとかしてあいつを呼んでこい!!」

先輩騎士に泣きつかれ、ヘイズはボロボロになりながら騎士団の待機所へと走った。


「レーイッ!! お前、外が大変なことになってるぞ!!」

バンッ!と待機所のドアを開け放つと、そこには。


「あーっ、ダメだよイリス! まだ腰痛いんでしょ? 俺が抱っこして運んであげるから!」

「や、やめなさいよ! バカ! 外で抱き上げるとか恥ずかしいでしょ! 歩けるから下ろしなさい!!」


初夜の激しすぎる愛の営みにより、腰に大ダメージを負って生まれたての小鹿のようにフラフラなイリス。

それを、レイが満面の笑みでお姫様抱っこしようとじゃれ合っている、どこまでも平和で甘ったるい空間が広がっていた。


「……お前ら」


外の阿鼻叫喚と、中のバカップル。

その落差に、ヘイズはこめかみに青筋を立てた。


「レイ、表に王都中の女が詰めかけてるぞ。お前が結婚したって噂を聞きつけてな」

「え? そうなの?」

レイはキョトンと首を傾げる。


「相手は誰だとか、嘘だとか騒ぎ立てて暴動寸前だ。……お前、自分で蒔いた種なんだから、ちゃんと責任持って説明してこい」

ヘイズの言葉に、レイは「ふーん」と興味なさそうに呟いた。しかし、すぐに何かを閃いたように、パァッと顔を輝かせた。


「そっか! みんな、俺の奥さんが誰か知りたいんだね!」

「……まあ、そうだな(嫉妬で狂ってるだけだが)」


「ちょうどいいや! 周りのみんなにも『イリスは俺のもの』ってちゃんと知ってもらいたかったし!」


レイは、抵抗してポカポカと胸を叩くイリスを問答無用でお姫様抱っこで軽々と抱き上げると、そのままズンズンと表門へと向かって歩き始めた。


「ちょ、レイ!? あんた、まさかこのまま外に出る気!?」

顔を真っ赤にして慌てるイリス。


「うん! 俺の可愛いお嫁さん、みんなに自慢してくる!!」

「やめなさい! 殺される! 王都の女たちに嫉妬で呪い殺されるぅぅっ!!」


暴動寸前の女性ファンたちの前に、世界一幸せそうな顔をした神速の銀狼が、腰砕けの新妻をお姫様抱っこして登場するという、最悪の『火に油を注ぐ』展開が幕を開けようとしていた。


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