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第46話 神速の銀狼、恋人期間不要論で騎士たちを論破する


「えっ? 恋人の期間って、いるのかなぁ?」


ヘイズからのもっともな指摘に対し、レイは心底不思議そうにコテンと首を捻った。


「だって、夫婦になればすぐに、ずっと一緒にいれるでしょ? わざわざ『恋人』の期間なんて挟む必要ある?」

「いや、あるだろ普通! 段階ってものがあるじゃないか。例えば一緒に買い物に行ってデートを楽しんだりとか……」

「買い物なら、今までもずっと一緒に市場に行ってたよ?」

「むっ。じゃ、じゃあ、お互いの家を行き来してドキドキしたりとか……」

「部屋なら隣同士だし、俺いつもイリスの部屋でご飯食べてるよ?」

「うぐっ……」


先輩騎士たちが必死に「恋人らしさ」を提示するものの、物心ついた時から衣食住を共にし、距離感がおかしくなっている幼馴染のレイには全く通じない。


「あのね、ヘイズ、みんな」

レイは少しだけ表情を引き締め、まっすぐな蒼い瞳で騎士たちを見回した。


「俺の中では、今までもこれからも、ずっとイリスだけなんだ。イリス以外の女の子なんて考えられないし、俺の気持ちは絶対に変わらない」


その言葉には、一切の迷いも嘘もなかった。


「関係が『幼馴染』でも『恋人』でも『夫婦』でも、俺がイリスを大好きで大切にしたいって気持ちは同じでしょ? だったら、一番俺にとって都合がいい関係になった方がいいじゃない」

「つ、都合がいい関係って……」


「『夫婦』になれば、周りのみんなが『イリスはレイのものだ』って、はっきり認識してくれるでしょ。虫除けにもなるし、もう誰にも渡さなくて済むもん」


ニコッと、極上の美貌で人畜無害な笑みを浮かべるレイ。

しかし、その言葉の奥底には、長年溜め込んできた「イリスを独占したい」という大型肉食獣の恐ろしく重たい執着心がたっぷりと詰まっていた。


「「「…………」」」


その、あまりにも合理的かつ純粋(で、ちょっと重たい)理論を聞かされ、待機所の騎士たちは顔を見合わせた。


「……あれ? なんか、妙に説得力なくないか?」

「確かに。あいつら、今更『恋人になりました!』って言ったところで、やってること今までと何一つ変わらねえよな……」

「気持ちが一生変わらないなら、無駄な期間をすっ飛ばしてゴールインした方が、周りへの牽制にもなって合理的……」

「……結婚で、よくね?」


「「「うん、結婚だな!!」」」


恋愛偏差値がそれほど高くない(むさ苦しい)緋翼騎士団の面々は、神速の銀狼の謎のロジックに、コロッと変に納得してしまった。


「おいあんたら!! 流されないでくれ、こいつの常識は一般社会からズレてるんだぞ!!」

ヘイズが必死にツッコミを入れるが、すっかり感化された先輩騎士たちは「いけいけレイ!」「早く役所に行ってこい!」と、レイの背中をバンバンと叩いて送り出し始めた。


「えへへ、だよね! じゃあ俺、パパッと届出もらってくる! あ、その前にガイル団長に報告報告っと!」


「みんな後でイリスちゃんに怒られても知らないからな……」と頭を抱えるヘイズを置き去りにして。

レイはルンルン気分で幻の尻尾を振り乱しながら、愛しのつがいを完全に自分のものとするための法的手続きへと、神速の脚力で駆け出していくのだった。


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