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第24話 神速の銀狼、ついに牙を剥く

「なっ、なっ、なんでっ!?」


ボンッ!と音がしそうなほど顔を真っ赤にして、イリスは完全にパニックに陥った。

本能的な危機感を覚え、ジタバタと腕の中でもがいて後ずさろうとする。しかし、彼女の腰に回されたレイの腕はビクともしない。日々剣を振るい魔物を一刀両断する強靭な腕力が、逃げようとする小柄な幼馴染をあっさりと閉じ込めてしまう。


「ちょっと、離しなさいよ! そんな素振り、今まで全然なかったじゃない!」


混乱の極みで抗議するイリス。しかし、レイは不満そうに唇を尖らせた。


「え? ずっと『好き』だって言ってたのに」

「だから、それは家族としての『好き』で……っ」

「違うよ」


レイの声が、スッと一段低くなった。

普段の甘えたトーンから、緋翼騎士団のエースとしての、そして一人の『男』としての静かで熱を帯びた声へ。


「俺が、そういう大人の意味での『好き』だって……イリスがわかってなかっただけじゃない」

「――っ」


言い逃れを許さないように、レイはさらに深くイリスを腕の中に抱き込んだ。

密着した体から、レイの高い体温と、力強い心音がダイレクトに伝わってくる。今まで「手のかかる幼馴染の体温」だと思っていたものが、急に強烈な『男の熱』としてイリスの脳を激しく揺さぶった。


逃げ場を失い、完全にその腕の中にすっぽりと収まってしまったイリス。

そんな彼女の耳元へ、レイはゆっくりと顔を近づけた。銀色の髪がイリスの頬をくすぐり、長いまつ毛に縁取られた蒼い瞳が、獲物を捕らえた肉食獣のように妖しく光る。


そして、吐息が直接かかるほどの至近距離で。


「……やっと、わかってくれた?」


甘く、かすれた低音のイケボが、イリスの耳に直接注ぎ込まれた。


「ひゃぅ……っ」


あまりの刺激にイリスは背筋をゾクッと震わせ、腰の力が抜けそうになるのをレイの胸に手をついて必死に堪えた。顔からは火が出そうに熱く、心臓は早鐘のように打ち鳴らされている。


泣き虫で、甘えん坊で、手のかかるワンコ。

ずっとそう思っていた幼馴染の皮がベロリと剥がれ落ち、中から途方もなく美しく、そして雄の匂いを纏った『銀狼』が姿を現した瞬間だった。


十七年分の重すぎる執着と独占欲を隠し持っていた男に完全にロックオンされ、世話焼きのイリス・ベルは、いよいよ一切の退路を断たれることとなるのだった。

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