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第12話 神速の銀狼、完璧すぎるスペックを持て余す

「おいおい、お前ら。こいつの恋愛相談にまともに乗ろうとするな。火傷するぞ」


人だかりをかき分けてやってきたヘイズが、呆れ顔で深くため息をついた。


「あっ、ヘイズ! みんなが『カッコいい男』の条件教えてくれるって!」

「お前は少し黙ってろ」


目を輝かせるレイの頭をペシッと軽く叩き、ヘイズは興味津々の騎士たちに向き直った。


「いいか、こいつのポンコツぶりを聞いて驚けよ。こいつ、昨日いきなり『ずっと一緒にいれるから』って理由だけで、色気もムードもゼロのプロポーズかまして見事に玉砕したんだぞ。しかも相手は、毎日こいつの世話を焼いてご飯作ってくれてる、あの幼馴染のイリスちゃんだ」


その言葉に、休憩室は水を打ったように静まり返った。


「……マジか」

「あの堅物で有名なイリスちゃんに……?」

「つーか、恋人すっ飛ばしていきなり結婚って、順序ぶっ飛びすぎだろ! バカなのかお前は!」


騎士たちはドン引きしつつも、目の前できょとんとしている絶世の美少年をまじまじと見つめた。


「いや、でもさ……」

先輩騎士の一人が、信じられないというように呟く。


「このレイ・アルジュに、落とせない女がいるとはな……」

「本当だよ。客観的にこいつのスペック見てみろよ?」


別の騎士が、指を折りながらレイの魅力を数え始めた。


「顔面は国宝級の超絶イケメンだろ?」

「緋翼騎士団の若きエースで、将来有望」

「当然、同年代と比べても圧倒的な高給取り」

「剣の腕は天才的で、討伐任務じゃ負け知らず」

「背も高くてスタイルも抜群」

「おまけに女遊びひとつしない。チャラチャラもしてなくて、性格は犬みたいに一途で素直」


数え終わった騎士は、バンッ!と勢いよく机を叩いた。


「女にとっては、これ以上ないってくらい完璧で理想的だろ! なんでそれでフラれるんだよ!」

「俺たちが血の滲むような努力をしてるのに、なんでこんな優良物件が幼馴染一人落とせないんだ! 世の中間違ってんだろ!」


むさい男たちの嫉妬と悲哀が入り混じった叫びが響き渡る。

しかし、当のレイは腕を組んで不思議そうに首を傾げていた。


「うーん……? みんなが言う通り俺がそんなにカッコいいなら、なんでイリスは俺と結婚してくれないんだ?」

「だから! お前の中身がポンコツだからだよ!」


ヘイズの容赦ないツッコミが炸裂する。


「いいか、レイ! いくら外見や条件が完璧でもな、毎日毎日『ごはんおかわり!』『疲れたから匂い嗅がせて!』って無邪気にすり寄ってくるだけの相手に、女はドキドキしねぇんだよ! 母性本能はくすぐられても、『男』としては見られないってこと!」

「ええーっ!? じゃあ俺、どうすればいいのさ!」

「そこを今から俺たちが叩き込んでやるって言ってんだよ!」


先輩騎士が腕まくりをして立ち上がった。

「よしレイ、まずは壁ドンからだ! 男の力強さでキュンとさせるんだよ!」

「いやいや、まずは甘い言葉で囁く練習だろ!」

「ちがうね、無言で強引に抱き寄せるのが正解だ!」


「か、かべどん……? 強引に……?」

パニックになりながらも、必死にメモ帳にペンを走らせるレイ。


モテない男たちによる、超絶モテ男への『神速の銀狼・男磨き大作戦』という名の無責任な恋愛講座が、こうして幕を開けたのであった。


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