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第11話 神速の銀狼、愛の教えを乞う

「ねえ! みんな! 『かっこいい男』ってどんなの!?」


その日、緋翼騎士団の休憩室で、レイは声を大にして叫んだ。

室内でくつろいでいた休憩中の騎士たちは、一斉にトランプやコーヒーカップを持つ手を止め、ポカンと口を開けた。


「…………は?」

「え、何? こいつ、俺たちに対する嫌味か何かか?」

「いやいや待て。レイの頭に、そんな高等な皮肉を言える技術スペックはないはずだ」


ざわざわと戸惑う騎士たちをよそに、レイは「ねえってば!」と目を輝かせながら一番近くにいた先輩騎士の肩を揺さぶる。

「イリス……じゃなくて、女の子に『男らしい』って思われるカッコいい男って、どういう男!?」


切羽詰まった様子のレイを見て、騎士たちは顔を見合わせ、やがて全員が真顔で同じ答えを返した。


「いや、お前」

「うん。お前だな」

「鏡見てから出直してこい」


突然の総ツッコミに、レイはきょとんと首を傾げた。

「俺? 俺ってカッコいいの?」

「自覚なしかよ! お前のその顔面、王都じゃ国宝級って言われてんだぞ!」

「おまけに緋翼騎士団のエースで、剣の腕は天才的。ついでに言うなら若くて将来有望。お前以上の『カッコいい男』のテンプレがどこにあるってんだよ」


先輩たちから口々に褒めちぎられ、レイの白い頬がぽっ、と赤く染まる。

「えへへ……そうかなぁ? 俺、そんなにカッコいい……?」

照れくさそうに頭を掻き、見えない犬の尻尾をパタパタと振るレイ。

しかし、次の瞬間ハッと我に返り、横に振った。


「ちがう! そうじゃなくて!」

「あ? じゃあなんだよ」

「俺が知りたいのは……」


レイは少しだけモジモジしながら、意を決したように深呼吸をして、休憩室中に響き渡る声で宣言した。


「女の子が、『この人と結婚したい!』って思うような男の人って、どんな人なの!?」


――けっこん。

その単語が出た瞬間、休憩室の空気がピタッと止まった。

直後。


「おいおいおいおい!」

「我らが緋翼のピュア・エース様から、まさかの『結婚』ワードが出たぞ!?」

「面白え! 誰だ相手は! どうせあの幼馴染のイリスちゃんだろ!」


レイの爆弾発言を聞きつけた他の部隊の騎士たちまでが、「なんだなんだ」「恋愛相談か?」と、砂糖に群がるアリのようにわらわらと集まってきた。

日々の厳しい魔物討伐任務に明け暮れ、娯楽に飢えきっているむさい男たちにとって、若き天才剣士の初々しすぎる恋愛相談など、極上のエンターテインメント以外の何物でもない。


「よしレイ! 女心ならこの俺に任せろ!」

「バカ言うな、お前この前フラれたばっかだろ! 俺が教えてやるよ!」

「まあ座れ! まずは状況を詳しく説明してみろ!」


あっという間に先輩騎士たちに取り囲まれ、質問責めと謎のアドバイス合戦の中心に祭り上げられてしまうレイ。

「えっ、あ、ちょっ、みんな近い……!」

男たちの熱気に押され気味になりながらも、レイはイリスと結婚するためのヒントを得ようと、必死にメモ帳を取り出すのだった。


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