第90話「永遠へ」
僕の背後で闇が羊を作り上げ、更に狐やクラゲを月面に吐き出していく。
同時に月の都市から飛び出した狼が、遅れて現れた兎や巨人を引き連れてこちらを睨む。
「ワォォォォン!!!!」
「ワァァァァルッ!!!!」
月狐と月狼が咆哮し、群れを引き連れながら互いを爪で斬りつけた。
衝突する2つの群れは限りなく増えていき、やがては月面どころか宇宙すらも埋め尽くしていく。
『来いよ……どこからでも……!!』
狐やクラゲの上を乗り継ぎ、注射器のようなシルエットの剣を構えた僕の眼前で数匹の光り輝く狼が死月鉱の牙や爪を煌めかせた。
恐らくはアダムの強化を受けた大狼が紫雷を纏っていたように、アレらもまたリプラに強化された事で容姿を変化させているのだろう。
「グォァ……キリサク!!!!」
「グルッ……コロス!!!!」
「カミクダク!!ワンッ!!!!」
『えぇ!?喋ったぁぁぁぁ!?!?』
言葉を紡ぐことができるほどの知能を手に入れた光の狼達が光速を纏って僕へ襲いかかるその背後で、何よりも濃い殺気が鎌の形をとった。
『……挟撃だね〜?』
音よりも速く襲いかかる幾億の斬撃と口撃と咬撃を躱し、それでも更に自身を貫きにかかる鎌の先を僕は剣の先で受け止める。
「シネッ!!!!」
「バラバラニナレ!!!!」
「クタバレェッ!!!!」
『確かに僕が警戒しなきゃいけない対象は増えたけどサ、あの妙に賢いワンちゃんは作る必要無かったんじゃないの〜?ちょっと疲れたりしたんじゃない?』
「私達を舐めるな。」
僕達2人が広げた月獣の暴走の全体が光り輝いていき、空間全体が闇と争いの次に光と殺意で埋め尽くされる。
『(この一瞬で全部乗っ取られたか……なるほど、ソイツら作るのは全然苦じゃなかったわけネ。)』
「「「「カミツク!!カミツク!!カミツク!!!!」」」」
何千億といるであろう獣達が輝きと共に僕1人へ襲いかかってくる中。
この手の中から溢れ出した純粋で何も無い闇が、空間と共に弾ける。
「グワ――」
「ギッ!――」
「……なんだこれは……純粋な闇で月獣の暴走が溶かされた?」
『三竦みだね〜?強化した月獣はそりゃ強いけど、闇と生命の狭間での不安定さが増しているから……純粋な闇に触れればこういう風にサッと闇に傾いて溶けちゃうのさ⭐』
暗闇の中、僕達は互いを弾き飛ばして剣と大鎌を構える。
『同じ理由でクリキンディーやシ長が作り出していた異空間にも彼らは入り込めない……そこへ行けない以上、この生物モドキ共にゃ月人の殲滅なんて不可能だったんだよ~。』
「無駄話が多い。」
背後で風が歪んだ。
裂け目から飛び出した死月鉱の針は僕の後頭部目がけてその先端を煌めかせていた。
だが、それを僕は後頭部につけていた目と半分に裂けた頭で回避する。
「!?」
僕の割れた頭の隙間を通って飛んできた針を受け止め、再び裂け目に放り込みながらリプラは歯を食い縛っていた。
「当然か、支配者だもんね……人間じゃない!」
『Yes!別の何かに塗り潰されない限り支配者はどんな形になっても死なないよ……その点、死月鉱は支配者を殺すために存在している物質と言っていいかもねぇ~。ただ相手を潰したり斬ったりするだけじゃなくて、死で塗り替える事もできるからサ。』
頭の隙間が閉じていって、僕の顔を見慣れたソレに戻していく。
肩に届く程度の水色に煌めく髪、十芒星と11の〇と同時に菱形の模様をその内に閉じ込めている紫色の目。
かつての親友が名前と共に僕へ与えたこの姿とメイド服を、新たな親友を手に入れた時の僕はようやく捨てられるようになるだろうか?
ずれたカチューシャを戻しながら、僕は自分の顔を裂いて無数の口を作り出す。
『君もできるだろ?力が人型に最適な形で作られてるせいであんまりメリットないけどサ!』
『支配者に並び立てるほどの力を、人型に最適化する事であの失敗作は多く作り出せたんだろう。』
『どうして僕が作ったお前が僕に逆らう?』
『新たな親友となろう~?』
『本当に僕に勝てると思っているのか?』
「……勝てる、私達なら……お前と違って仲間が居る。」
……。
お前と違って?
いいや違うね、リプラと僕は同じだ。
同じ支配者だ、同じ目の色だ、同じ親友を失った者だ、同じ孤独な者だ、同じ人殺しだ、同じ力を持つ者だ。
お前は何もわかっちゃいないのさ。
最後まで、何も理解することなどない。
『『『『『期待外れだ、お前も。』』』』』
アイツが消えてから姿を隠し、失敗作を作り上げて始まりの支配者の本気を見た。
始まりを操るアレなら僕の期待に応えられると思ったが、期待外れだった。
失敗作が逃げた先、復活を遂げようとしたソレに反旗を翻したジャン・バルジャンの執念に興味をそそられた。
失敗作以上の力を手に入れたアレは、だがしかし僕に気づく事なく人類の復活へその力のほとんどを使ってしまった。
ジャンは滅王やニューオーダーを打ち倒すために1人の勇者を作り上げ、彼は……クロマは最期に世界全体へ影響をおよぼした。
だがその爆発的な成長も、ソレに体が耐え切れなかったのだ。
そして、クロマの力を受け継いだ双子が生まれた。
木槿やニューオーダーを利用した僕による誘導のもと、ソイツらはとうとう僕の前へこうして立ち塞がった。
違う、僕が望んでいるのはそうじゃない!!!!
『誘導し続けてやったのに。』
『幸せも苦難も平等に与えてやったのに。』
『意志を固くさせてやったのに。』
『力を渡してやったのに。』
『尽くしてやったのに。』
『『『『『ガッカリだ。』』』』』
そこまで僕を拒むなら。
お前の敵になってやる。
それでも僕を受け入れないなら。
お前を終わらせる悪夢そのものになってやる。
『お前のせいだ!』
『望み通りか!?』
『抗えないぞ!!』
『絶望に堕ちろ!』
『フィナーレだ!』
『『『『『お前を殺し、レイズは時の流れから永遠に排除してやる!!木槿はあの日あの場所で家ごと燃やして何度も焼き殺してやる!!!!月の都市は絶えず獣共に食い荒らされる!!!!地球人は皆血反吐を吐きながら生死を繰り返す!!!!希望ある未来など想像もさせない!!!!絶望の1秒で世界は回り続けるんだ!!!!』』』』』
僕の背後で、中身の無い文字が輝く。
『『『『『【As if】!!!!』』』』』
リプラが纏った殺気が乱れる。
彼女の視線の先で、僕の背後にあるものが見えたからだろう。
『これは、僕が見た全てを模した夢だ。』
小さな死の天使が尖らせた殺意が僕に命令されて、僕と彼女との間に降り立つ。
「……アスク……?」
『いいや、アスクが放ち残してきた彼以外の全てさ。』
同時に、僕の背後からは次々と様々な形の殺意が現れていった。
とある殺意は空間を選択し、とある殺意は熱の剣を握りしめ、とある殺意は白銀に輝くブーメランを構え、とある殺意は蔦のように伸び、とある殺意は保存した打撃を飛ばし、とある殺意は虹色に輝き、とある殺意は恒星ほどに大きく輝き、とある殺意は手に馴染んだ2丁の固い殺意を握りしめ、とある殺意は人ならざる者を斬り払うため手にした煌めく殺意を握りしめ、とある殺意は衛星すら割るほどの一撃を構え、とある殺意は不安定かつ膨大で弾ける乱撃を放つための構えをとり、とある殺意は音色と共にリプラの隙を見極め、とある殺意は変幻自在の形をとり、とある殺意は全てを終わらせんとする意志を握りしめた。
『見覚えのある殺意も、ない殺意もあるだろう……当然だ、君と僕は同じじゃないって君が言ったんだからね
〜✨』
「……UR/ELに巻き込まれた皆の殺意……なのか!?」
リプラへ向かって駆け出した小さな死の天使の殺意が、彼女の振り回した鎌とすれ違う。
そして彼女の胴体を正面から背中に至るまで容赦なく斬り裂いた。
「な……っ……!?!?」
『めあ~っはっはっはっはっはぁ~っ!!!!ダメじゃないか!!ソレはアスク以外の全てだ!!!!殺意だ!!!!アスクそのものじゃない実体の無いソレと!!死月鉱を衝突させて防げるわけねぇんだよ!!!!アホが!!!!!!!!』
リプラの体からグリッチノイズが広がり始める。
ソレが空間の闇と溶け、混ざり、急速に彼女の体を壊していく。
「……まだ……。」
『終わりだよ……幸せ者だね~……絶望に堕ちる直前、1人ぼっち……でも最期の最後に親友(の殺意⭐)に殺される事ができてさ。』
震えながら前へ突き出された彼女の手から鎌は滑り落ち、闇の中へ沈んでいく。
膝をつき、とうとうこちらを睨む事すらできなくなったリプラの目が、ゆっくりと輝きを失っていく。
『おしまい。』
「…………リプラ……。」
白い光と共に、リプラの体からグリッチノイズが時を戻すように消えていく。
いや……白く光るだけではない、ノイズの中を駆け巡る紫色の雷が一瞬の内にソレらを抑え込んで消していく。
『なんだ?それは……ラフィエルとアダムの力?何故治癒を自分に使えている?』
立ち上がろうとした彼女へ、小さな死の天使の殺意が自身を尖らせながら再び接近する。
「【マーナガルム】!!!!」
そして、リプラの背後から現れたアスク・スーリエルによって消し飛ばされた。
「アスク……本物?」
『……はぁぁぁぁ!?!?』
大鎌を素早く2本作り出し、片方を彼女に渡しながらアスクはリプラの手を引いて立ち上がらせている。
「遅くなっちゃったよね?ごめんね。」
「……ううん!!大丈夫……来てくれてありがとう!!!!」
『(どういう事だ!!!!何故……!?!?)……まぁいい!!イチャつけるのも今のうちだ!!!!』
僕が剣の先で円を描き、前へ突き出した瞬間に全ての殺意が彼女達へ向かう。
恐らく小さな死の天使の殺意はその本体であるアスクに干渉された事で消えてしまったのだろう……ならば、この場に居ない全ての殺意をぶつけてしまえばそれだけで終わる!!!!
『仲良死しちゃえよ!!!!!!!!』
「……リプラ?」
一斉に突き進んでいく殺意の先、アスクはリプラへ曇りの無い眼を向ける。
「そうだね、やっちゃおう!!私達で!!!!」
リプラはアスクへ輝くような笑顔を向けながら、共にまっすぐとこちらを見つめた。
……何故、希望に満ち溢れている!?
「メアー!!!!!!!!」
空間に声が響き、同時に全てを終わらせんとする意志を握りしめた殺意が何者かの一撃によって跳ね返された。
「……お前が全ての元凶だな?」
アスクとリプラの前へ降り立った彼は、白い髪と赤い目を輝かせる。
『始まりの支配者!?!?』
「死の先で全ての魂と繋がり、理解したぞ……1の仲間も……彼も……全て貴様が殺したんだな!!!!」
始まりの支配者の背後、双子の背後から駆け出した1人の影が自分の殺意を的確に見抜き、そして無限の混沌でソレを破壊した。
『……失敗作……裏切り者が!!!!』
そういう事か。
死へと向かったリプラが……死の支配者が死そのものに繋がった事で、全ての死者とも繋がってしまったという事か!!
『……燃えるねぇ~!!⭐どこまでやれるか見てやるよぉ~っ!!!!被造物!!!!!!!!』
「私達で一緒に倒そう!!!!」
剣を何度も突き出し、全ての殺意を押し出しながら僕は空いている手で空間へ触れる。
『君と殺意、僕とソイツら……空間で遮断しちゃえば!おしまい――』
「させない!!!!」
膨らむように現れた聖堂の壁が作り出そうとすればするほどに消えていく。
前進しようとして逆に進んでいるような……時を戻されているような感覚……!?
『なるほど、ラフィエルの治癒対象を空間に――』
「リメイムさんの力だ!!!!」
リプラが叫んだ直後、白銀に輝きながら舞うブーメラン型の殺意がロベリアの寂しがり屋の閑古鳥によって斬り飛ばされる。
「うへっ……!夢みたいだねぇ!!アスク君達や――」
「伏せろロベリア!!」
そしてブーメラン型の殺意の後方へ隠されていた、飛来する小さく鋭い殺意が異空間より飛び出したナイフ付のリボルバーによって弾き飛ばされた。
「君とも一緒に戦えるなんてさぁ。」
「……同感だ。」
目を細める木槿達の視線の先、蔦のように伸び全てを押し潰そうとする殺意と、衛星を断てるほどの巨大で鋭い殺意が、異空間やリプラの背後から飛び出したレイズとホープの繰り出す巨闇斬りと、謳華流 千本桜に押し負ける。
「リプラをメアーの所まで通すわよ!!皆、力を貸してちょうだい!!!!」
「とにかく自分の殺意を見つけるんだ!!僕達にできる精一杯をやりきるぞ!!!!」
「突撃~~~~!!!!」
「僕達の殺意の見分けがつかなくても!!」
「とにかく戦っていればタンポポ達の殺意と当たります!!!!」
大量の小さい安定した殺意と月人達がぶつかり合うその真上、虹色に輝く殺意と不安定に弾ける殺意が広がっていく。
「アレって――」
「下がってろホープ!!!!」
「下がってろレイズ!!!!」
自分達の上を跳んでいき、拳を構えながら並び立つ2人の姿が殺意と同じく虹と紫に光り輝く。
「アイツ……ふっ……やっちゃえクロマ!!もう限界なんて関係ないぞ!!!!」
「戦ってくれるのね……お願い……道を開いて!!アダム!!!!」
「【ハイランダー・フルムーン】!!!!」
「【惨々裂烈苛烈惨劇斬・簒斬】!!!!」
虹色に輝く殺意と不安定に弾ける殺意は跡形もなく消し飛び、そして無限に広がる黒い殺意がその後から津波のように押し寄せる。
「おいおいコレって!?」
「滅王の闇なのか――」
「【絶大滅暴鏖殺破】!!!!」
個人的な理由でアダムとクロマを巻き込みながら放ったソレで殺意を押し返し、滅王は竜の姿のまま空間を飛び回った。
「アンデルセン……私の名を思い出せず滅王と呼ぶのは……仕方のない事か?」
「わ……悪い……。」
「なんでオレまで……。」
殺意が次々に消し飛ばされていく光景を見つめていた僕の視線の先、滅王の背後から飛び上がったリプラがアウレオラと共にこちらへ接近している。
その間へ割り込んだ殺意は保存した打撃を飛ばそうとし、だが即座にリプラのソレとは違う円形のアウレオラに迎え撃たれる。
続いて降り立った熱の剣型の殺意は銀色の火治の剣によって即座に焼き尽くされた。
「ロイヤーテメェ!!意外とマトモな連携できんじゃねぇかよ!!!!」
「勘違いするなよインヘリット、俺のセリフだ!!!!」
隙を観測していた騒々しい殺意は角笛に叩き割られ、その隣にあった殺意も同時にリメイムの杖が砕いた。
「殺意の召喚に相当力を使ったみたいだ!!今のアイツは隙だらけですよ!!!!」
「行くんじゃ!!!!」
全ての魂から背中を押され、大鎌をこれまで以上に鋭く輝かせていくリプラに向かって、僕は咄嗟に付近にあった殺意を全力で投げつけた。
『近寄るな!!!!』
「ニューオーダー万歳!!!!」
変幻自在の殺意が伸ばした全てがカラスカのエル・ヒガンテに踏み潰され、その中から彼の喘ぎ声が響く。
「あぁん、なんて幸福……私が、あのお方を今度こそ助けられた!!!!」
『(あのお方?……まさか!?!?)』
僕の予想通り、恒星のように輝く膨大な殺意が全く同じ大きさの蒼い光によって滅却されていく。
『マリーゴールド!!貴様まで裏切るのか!?!?』
「……先に全てを利用したのは貴方でしょう。」
自身を追い越し進もうとするリプラの横で、マリーゴールドはまっすぐとこちらを睨みつけていた。
「リプラ……君とアスクが進む先にこそあたし達が望む未来がある……勝ってくれ。」
『……被造物ぅぅぅぅ!!!!』
3つの殺意を纏い、僕は指でフレームを作り上げる。
そしてリプラの動きを止め、同時に放った無数の小さく光る殺意で彼女を射殺そうとした。
光る殺意と軌跡を描く殺意が同時に彼女の眼前まで迫った時、3人分の魂が光り輝いた。
「【謳歌流 白梅】!!!!」
「【イノベイティブ・レイ】!!!!」
「【スクエア・セレクト】!!!!」
B.3の光線が無数の殺意を消し飛ばし、一武の剣撃が殺意の軌跡を斬り払い、一葉の四角形の選択が僕を固定する。
『ク……!!!!』
満足に口も動かせなくなった僕の視線の先、1人の老人がリプラの肩へ背後から手を置いた。
「声量はどれくらいがいい!?!?」
「できるだけでっかく、思いっきり叫んじゃってください!!!!」
……コリウスの絶叫は力によるもの、ソレは身体が限界を迎えるまでエネルギーを生み出す事ができる!!!!
今のアイツは、呼び出された者達は死者!!力の限界を決める身体が存在しない!!!!
「う お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お お ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !」
「空間が膨張し続ければ……殺意が出した力でしかない四角形は崩壊する!!!!」
リプラを縛る四角形だけが砕けた瞬間、彼女は叫びのエネルギーを保存していた数多の七芒星のアウレオラで足元を固める。
「【死月に……集え】!!!!」
彼女が持つ全ての力が、彼女に光も遥かに超えてしまうほどの加速をもたらす。
目を開き続けたまま、閉じる事も動かす事もできぬまま僕はまっすぐと前を見つめる。
間違いない。
僕は殺される。
殺意に満ちた彼女の鎌は確実に僕を切り裂くだろう。
視界の端で自分達の殺意を打ち消しながら、アイスバーグとガイアがジャンと共に緑の死月鉱を煌めかせている。
反対側で、巨大な2つの殺意とオーダーやリプロダクションがぶつかりあう。
リプラの後方に立つ一葉の視線の先で、二葉が裂け目の中に自分の殺意を勢いよく投げ込んでいる。
その二葉の隣でハグマーダーが自身の殺意と斬り結ぶ横で、ピューパッドはブラットバッドと共に月鉱を輝かせている。
クリキンディーが全員の移動を援護しながら、金色のハルバードを振り回している。
それ以外の……僕が知る全ての魂が、全ての殺意に対抗している。
……もうこの状況から生き延びる手段も、手元に残っている殺意も無い。
僕は全力を出し切った。
満足だ。
ようやくこの時がやってきた。
ありがとう救世主。
僕の……勝ちだ。
「「お前の負けだ!!!!」」
聞こえた2重の声に思わず僕は自分の耳を疑った。
『(……アスクの声……目の前から……リプラとほぼ同じ位置から聞こえて……?……まさか!?!?)』
まさかコイツら……いやリプラは……最初から!!!!
まずい!!動けない!!!!
この鎌は、まさか!!!!
やはり透けた!!僕の体を斬り裂けない、全力の殺気をこめてリプラと同時に動いたアスクの魂でできた鎌だ!!!!
掴む振りをやめたリプラの手が、僕の首根っこを思いっきり握りしめてくる!
力が抜けていく!!やはり分かっている!!!!
待て!!やめてくれ!!!!
離してくれ!!!!
やめr




