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URIEL【4つの神話と月人の双子】 ~ある日、大切な親友と離れ離れになった少年が身を投じたのはカラフルな電子海か、支配者を決める戦いか、永い過去の清算か……あるいはその全てか~  作者: リプラ
集結編「どうして」

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第71話「希望も絶望も膨張して」

 コスモス大陸、闇の兵士達が自身の体で黒く染めていく大地の1部に、突如として巨大なクレーターが発生した。


「きりが無い……やはり、一刻も早く発生源をなんとかせねば。」


「BREAKもどんな技も……まるでティッシュじゃねぇか!!海を拭き取ろうとするティッシュ!!!!」


 空を舞うB.2とB.1へ投げられた無数のハルバードは見えない球のようなものに弾かれたかと思えば、そのまま兵士達に向かって跳ね返っていく。


「……なんだ?リプロダクション、君はそんな言い回しをするような奴だったか?」


「いいや違うね!!だがまぁ、キリが無さすぎて頭がおかしくなってきてんだろ!?モヤモヤしてき……あっ!!!!」


 違和感に気づいた2者が目つきを鋭くさせ、背中を合わせ、陸海空を満遍なく警戒し始めた。


「居るな。」


「おう……。」


 こちらの存在に気づいたようだが、彼女らが警戒すべきはこっちではないのだ。

 肉塊は絶えずその中で闇を蠢かせ、闇の兵士を生み出し続けている。

 だが少し、落ち着き始めていた。

 まさに別の何かへリソースを割こうとしているのだ。


「……メアーが居る、先回りして待ってたみたいだ。」


「ふむ……頼むから傍観しててほしいけど……。」


 赤黒い空と地面の間で、白鳥のようなライボットが空を飛んでいく。

 その中でB.13は操縦桿を握りしめながら、システムへと話しかけた。


「B.7、回避行動の補助を頼む。」


「了解した。」


 モニターに映されていた外の景色が少しだけ青く光り、その左下の隅には『B.7』の文字が打ち込まれ現れた。


「……本当にこんな戦い方でいいのか?人型の体は気に入っていたろ。」


「私は機械生命体だが、世界を守るために戦う存在だ。目的を達成するために私にしかできない事(システムとして動く事)なら何でもやる……そうしてこそ、私はただの機械ではなくブライツの7番目として存在できるんだ。」


 ひび割れた赤い土の大地と点在する枯れ木しか見えなかった景色の奥に、増殖し続けて巨大なカーペットのようになった闇の兵士達が現れる。


「分析完了、来るぞ。」


「あぁ……。(別にそんな事ないと思うんだけどな。)」


 粘性の体と機械じかけの外装全体へ力を込めたB,13の背中を見て、アスクは座席の横にある棒を握りしめた。

 闇の兵士が遠くに見つけたライボットへ、自身の体から作り出したハルバードを投げる。

 空を切り裂くハルバードが1本、100本、1000本と増えていく。

 空高く飛んで、雨のように落ちる。


「っ……!!」


「(密度がありすぎる……1本でも直撃すれば落とされる……回避方法を再分析……いや、ここは彼らに任せるしかないか。)」


「包め死月鉱!!」

「蔦よ!!」


 ハルバードが空に向いた先端を歪ませ、微かに加速した直後。

 ライボットの隙間から生えた蔦がそれらを弾き飛ばした。

 蔦をすり抜けたハルバードはライボットを包む死月鉱のベールに弾かれ、砂のように崩れていく。


「……これ以上は進めそうにないね。私達はここで降りるから君達は墜落しないように本部まで撤退してよ。」


「本部まで?俺達だって戦います、機銃でも使ってこいつらの増殖を少しでも止めて――」


「……急いで!!」


 シートベルトを引きちぎり、操縦席の背もたれへ掴みかかりながらリプラは叫んだ。

 恐ろしく強い、大事な何かが消えてしまう予感にホープより少し遅れて気づいたのだ。


「ガイア、私はB.13と7に同行する。2人の事を頼んでもいいかな。」


「無論だ……早急に片付けた後、儂らも合流する。」


「……ねぇ、皆何に焦ってるの?肉塊よりも何がマズい感じなの?」


 ガイアが鎧に包まれた手を強く握りしめる横で、アスクは首を傾げている。


「……シ長が……殺されるかもしれない。」



 ­­­――­­­――­­­――­­­――



「お前……!!どうやって……ここに来た……!?!?」


 暗闇の中、アイスバーグが虹色のオーラをまとう。

 彼女の背後で腕を組むシ長は、何かを悟りながらも自分達の前に立つソレを凝視した。


「どうやって……か。全部を説明すると長くなるが……。」


 銀髪の髪を輝かせながら、マリーゴールドが眼前に居るシ長を見つめている。


「まずはコレかな……【タキグチ】。」


「……!!その裂け目……シ長の(タキツボ)と同じ!?!?」


「(魂と力の繋がりが荒々しい……彼女自身から発現したものではないな……誰かから奪ったのか!?……どうやって?)」


 睨み合いを続ける3人の頭上で、異空間を包む暗闇が微かに揺れた。


「ん……まぁいい、話を続けよう。アイスバーグ……君の言う通りこの力はジャン・バルジャンのソレと対をなすものだ。正確には排出する力(タキツボ)入れる力(タキグチ)だったものがそれぞれ解釈を広げた結果、2つの全く同じ裂け目を作り出す力となったんだがね。」


「……君のものではないだろう、どうやって他人から力を奪えたんだ。」


 僕以外にも現れたこの空間を覗く者。

 ソレの魂を察知しながらもマリーゴールドは少し得意気な様子で説明を続ける事にした。


「奪った?いいや違う、この裂け目の力は未だ本人のものだよ……まぁ、本人は今や私と同一になったが。」


「……は?」


「どういう事だ――」



 マリーゴールドの腕が黒く変色し、闇そのものへと戻り、触手のようになって頭上の暗闇へと素早く伸びていく。



「見せた方が早いだろうね。」


「あっ!?!?」


 暗闇の中へ突き刺さったマリーゴールドの腕は何かへ絡みつき、アイスバーグが受け止める事も叶わないほどの恐ろしい速度で2人の前に1人の男を叩きつけた。


「が……っ……何が……起き……。」


「B.11ハヤテ?なんで此処に!?」


「……まさか!()めろバーグ!!」


 微かに震えながら赤黒い血を吐く彼へバーグが手を伸ばすよりも少しだけ早く、マリーゴールドは腕とハヤテを自身のもとへ引き寄せる。

 彼女の腕から広がった闇はハヤテの体を一瞬にしてマリーゴールドの体内へと取り込んでいった。


「(くそっ……バーグ()よりも断然速い……!?!?)」


「体を闇に戻す(すべ)を……加えて、その体内に人の魂を縛りつける方法まで見つけたか。」


「その通り……ところで、君達はそうではないけれど、この魂を死の天使(スリエル)が見たらどう見えるのだろうかね。」


 ハヤテの姿が彼女の中へと消え去り、闇がマリーゴールドの腕を再構築した直後。

 蒼い風の刃が瞬きも終わらないような一瞬の内に5発放たれた。


「まぁ、今はいいか……【飛刃(ひじん)】。」


「!!」


「シ長!!!!」


 刃とシ長の間へ滑り込み、アイスバーグが虹色を纏ったチョップで飛刃を打ち消し、歯を食い縛る。


「ジャン・バルジャン……君は元からバッファー寄りの性格だったそうだが、メアーに『UR/EL 2(第2のウリエル)』と呼ばれた男が、今や被造物に守られる事しかできないとは……ね。」


「黙れ!!メアーが……いいや……()()が!!」


 突然マリーゴールドから視線を外し、アイスバーグはこちらを睨みつけた。

 マリーゴールドは静かに笑みを浮かべたまま、わざとらしくその手を数度叩く。


「おや、気づいていたのか……ようやく知恵の天使(ガブリエル)の先輩らしい1面が見れた。」


「黙ってろ!!……お前(メアー、つまりは僕)がなんでこんな事を始めたのかは分からない……でも、お前が滅ぼした地球を……踏み潰した命を……シ長はたった1人で復活させたんだ!それに力のほとんどを使ってしまったけど……その後も巨人と戦って地球に堕ちてきた私達を助けてくれて、クリキンディーと一緒にお前らを倒す準備を整えてきたんだぞ!!」


 2つの得体の知れない気配に見つめられながら、アイスバーグは徐々にヘッドホンから聞こえるリズムに乗り始めた。

 ステップが軽快な音をたて、暗闇の中に響かせていく。


「皆がお前のせいで……お前らのせいでどれだけ苦しんできたか……シ長も、旧世界に居た人々も……私達も、あの時一緒に滅王を倒した皆も……滅王でさえも、クロマも……アスク君とリプラちゃんも……!!」


「(アイスバーグ・ガァブリエルドに与えられた力……滅王軍と戦った時には一定のリズムを刻んで攻撃する事で、そこへ徐々に強くなっていく衝撃波を追加できるといった物だったが……あの虹色のオーラ……まさか、クロマと同じ芸当を?)」


 マリーゴールドが胸のざわつきから眉を微かにしかめ、両手に滅光を纏おうとした。


「【滅纏(べつて)――」


「【(hug)グット(gut)】!!!!」

「【エレファンツ・ショットグラス】!!!!」

「レジスタンサー3、ブラックライダー!!!!」


 B.3の白い光の輪がマリーゴールドの腕を縛り、弾き飛ばす。

 受け身をとった彼女の頭部へ、B.12の極めて正確な狙いで巨大な銃弾が放たれた。

 少女のような姿のマリーゴールドの小さな顔が銃弾を潰して弾き飛ばすという異様な光景を目にしながらも、B.4(ガーベラ)は冷静に彼女の懐へ潜り込んで拳を叩き込む。


「これでも喰らいなヨ!!」


「……こんな攻撃に……何の意味がある?」


 頭だけで拳を押し返し、マリーゴールドがブラックライダーのマスク越しにB.4を見下した。


「(レジスタンサーの身体強化が全然通用してないネ……木槿と一緒に倒したブラットバッドより、何十段も格上の存在……でも、これなら通る!!)」


 黒い装甲の隙間から噴出した煙がB.4の意志に呼応するかのごとく、マリーゴールドの体を包んでいく。

 ガーベラ・バスクエダ(B.4 メイフライ)の力、幻覚を見せるガスを発生させる力。

 マリーゴールドは現れた景色に目を見開き、咄嗟に前方を腕で薙ぎ払った。

 掠ったような手応えと共に、B.4の吐息が混じった笑い声が彼女に届く。


「(何故コイツがこの景色を……『死の天使(スリエル)の視界』を知っている?)」


 目の前で蠢くおぞましい危険信号の幻覚に動きを止めたマリーゴールドの目の前で、ガーベラはひび割れたブラックライダーのマスクを撫でる。



「正確に伝えてくれて助かったヨ……さすがだネ、木槿……皆!!今だヨ!!!!」



 ガーベラが叫んだ直後、暗闇の中を虹色の光が照らし始めた。


「溜まった……リズムが上がり切った……!!!!クロマの願いを、今度こそバーグ達が叶える!!!!【フィナーレ(F)ラスト(L)サウン(S)――」


「くたばりやがれ、このクソカレン(Karen)が!!【シルバー(銀月の)・エレファンツ・ショットグラス――」


「今度は逃がさない……!【イノベイティブ・レイ・コンバージェンス(一点集中)――」


「……【サルド・セッコ(Saldo seco)――」


 拳から放たれる虹色のオーラが、獲物を捉えた目の放つ光が、魔法が放つ輝きが、装甲の破損した箇所から漏れ出るエネルギーが、暗闇とマリーゴールドを眩しく照らしていく。

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