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URIEL【4つの神話と月人の双子】 ~ある日、大切な親友と離れ離れになった少年が身を投じたのはカラフルな電子海か、支配者を決める戦いか、永い過去の清算か……あるいはその全てか~  作者: リプラ
2大勢力編「その名は」

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第60話「抗う者(レジスタンサー)」

 龍妖彩のどこか、海沿いにある倉庫の中。

 木槿はその中へ入ると同時に、羽織っていた白衣を脱ぎ捨てる。


「よく生きてたな。」


「……へへ……ほんとにノコノコと来やがったな、死神のドレパニ()ィ!」


 倉庫の中央でパイプ椅子に座っていたブラットバッドが、組んでいた足を解きながら肩を揺らす。


「見えるか?この目と、腕が……。」


「見える、だからなんだ?」


 木槿の冷めきった声が倉庫に響いてから数秒後、ブラットバッドが静かに立ち上がる。


「……ルルイエでの借り、此処で返して殺してやるよ!!!!」


「そうか、楽に死ねるといいな。」



「「装着開始。」」



 レジスタンサーを起動した瞬間、両者の周囲に現れたホログラムが互いに衝突を始めた。

 赤い粒子と、それより更に赤黒い、血のような色の粒子が倉庫内に浮遊する。


「P,P,P,Pale(ペイル) Rider(ライダー)!!!!」

「RRRRRR……Red(レッド)……RIder(ライダー)…… 」


What is(望みは) your hope(何だ)? Ready……say it(言ってみろ)!!!!」

What is(お前は) your(何を)……hate(憎む)……RRRRRR……ready……say it(言え).」


 銀のレジスタンサーから、機械音声の叫ぶような歌声が聞こえる。

 深紅のレジスタンサーから、唸る獣のような機械音声が流れ始めた。


「全ての者へ正しい休息()と、安寧(終わり)を。」

「全部だ、気に入らねぇ物も奴も全部壊してやる!!!!」


 互いを鋭い視線で睨みつけながら、木槿とブラットバッドが深く息を吐く。


「O,O,Okay(良し)!!!!Now!Time to become true(叶えろ) the hope!!!!」

「O,O…………Now……Time to become true(叶えろ) the hope.」


 睨みあう両者を、広がる装甲が包んでいった。


「レジスタンサー4、ペイルライダー。」

「レジスタンサー2……レッドライダー。」


「「起動!!」」



 ­­­――­­­――­­­――­­­――



 およそ10年前、地球を東西に分けるようにして始まった戦争は、ブライツ及びソレに与する龍妖彩が圧倒的な有利を得た状態で最終局面を迎えていた。

 当時の竜人円卓主は終戦を痛み分けという形にするため、所有していた『(そう)(こう)(滅光の古い呼称)海上基地 ルルイエ』を龍妖彩にあるブライツシティへ特攻させ始める。


 ルルイエの防衛を命令されていた『ゴッドイストドート』を始めとする傭兵部隊や、竜彩の軍隊。

 突如としてコスモス大陸から飛来し、湾岸よりルルイエを迎撃していた者達へ襲いかかった謎の黒い人型ライボット。


 それらと対峙しルルイエを止めんとする、若きオーダーやリプロダクションも含むブライツと、竜妖彩の連合軍。

 両勢力が負けるわけにはいかない(いくさ)の中で、いくつかの思惑と共に1機の白い人型ライボットがルルイエへ降り立った。


 畳んでいた足を広げ、ブースターを回転させ変形していく白いライボットが数秒のうちに飛行形態から戦闘形態へ変形を完了させる。

 滑走路に降り立つ飛行機のように着陸した白いライボットが、眼前に現れた竜彩のライボットの懐へ一瞬にして入り込んだ。


 ブースターと一体化した巨大なクローが竜彩のライボットを殴り飛ばし、そのクローから放たれた風の弾丸が"ハチの巣"を作り出す。


 殴り飛ばした勢いのままブースターを起動し、空へと舞い上がった白いライボットを見つめながら、ブラットバッドは操縦桿を冷や汗で濡らした。


「(あの機体についているエンブレム……リボルバー……ナイフ……エンブレムを囲う、死神のローブは……!!!!)」


 上空に浮かぶ白いライボットが放つ風の弾幕は、正確無比にルルイエの防衛設備とブラットバッドの仲間達を撃ち抜いていく。


「(機体の性能が……いや、ソレだけじゃ……!?練度も違いすぎる……アイツ……あの機体に()()()()()()()()……!?!?俺のコイツでさえ、1か月前に配備されたばっかりの新型だってのに――)」


 砲台の陰に隠れていたブラットバッドの隣で、最後の僚機がクローを突き立てられて爆散する。

 爆煙の中から、白いライボットが赤色の"目"を光らせた。


「あとは……俺だけ……!?まだ1分も経ってねぇだろ!?!?」


 ブラットバッドが操縦桿のボタンを割れそうな勢いで押し込んだ瞬間、彼の乗っていたライボットが握っていたマシンガンを乱射する。


「……。」


 白いライボットが空高く飛び上がり、空中で全ての弾丸を回避していく。

 その光景にブラットバッドはただ絶句していた。


「(がむしゃらに動いて避けてるわけじゃない……コイツ……全部わかって――)」


 彼がブースターの光を視認した直後、白いライボットがブラットバッドを叩き飛ばす。

 液晶が割れ、その破片がブラットバッドの右目に深く突き刺さった。

 装甲やコックピットを越えて彼にさえ届いた、死神の(δρεπάνι)のように。


 海に落ちたライボットが漂流し、ルルイエから離れていく。

 液晶のほとんどが暗転した中、コックピットごと潰された片腕がブラットバッドに罰のごとく苦痛を与え続ける。


 数少ないまだ機能している液晶を通して、ブラットバッドはルルイエを睨む。

 白いライボットがその上で戦い続け、やがて黒いライボットすらも撃破した光景も、彼は片目で目撃する。

 とうとうルルイエが傾き、至るところから炎や煙をあげて沈んでいく。


 ブラットバッドが見、聞き、感じている全てが彼へ完全なる敗北を告げていた。



 ­­­――­­­――­­­――­­­――



 木槿の眼前で赤黒い複眼を輝かせながら、レッドライダー(ブラットバッド)がもがいている。


「お前に落とされるまで……俺の人生は全て上手くいってたんだ……!!気に入った奴とだけ酒飲んで、好きなだけ女侍らせて気に入らねぇ奴ぁ脳みそぶちまけて、殺してなぁぁぁぁ!!!!」


 ブラットバッドの握りしめた拳の中で火球が激しく輝く。

 ソレが地面に叩きつけられた直後に激しい爆発が起こり、倉庫は跡形もなく吹き飛んだ。


 ペイルライダーをまとった木槿は爆風によって後ろへ飛ばされながらも、素早い身のこなしで上から襲い来るブラットバッドを躱す。

 廃工場の道路上、金属音が鳴り響く。


「知らねぇ場所に流れ着いて……落ちぶれて……俺はテメェに復讐するために情報を集め続けた。驚いたぜ……死神の(ドレパニ)がテメェみたいなクソガキで、ソレに加えて黒髪黒目のアズノーンだと知った時は。」


ソレ(黒いアズノーンの子供)に負けた気分はどうだ?」


 レッドライダーの外装を突き破って現れた月鉱の槍が、赤い金属の破片を巻き込む。


「死ねェ!!!!」


 木槿へ向けられた刃先が瞬時に伸び、彼の心臓を貫きにかかる。

 軌道を()()()()、避けた木槿の背後で槍が枝分かれを始めた。


 放射線状に広がった月鉱の針の隙間を縫い、ブラットバッドに接近した木槿が足を強く前に突き出す。


 膝で突かれたブラットバッドは歯を食い縛りながらも、月鉱を刀に変形させた。

 懐へもぐりこんだ木槿を刺し殺すために伸ばした刀の先は木槿に当たらず、虚を貫く。


「(……気持ち(わり)ぃ……!!!!)」


 必要最小限の動きで接近、回避、攻撃、反撃を行う木槿を見て、ブラットバッドは10年前と同様の悪寒に襲われた。


「(前とは違う、生物としても……使う武器も……俺の方が圧倒的に有利なはずだ。なんで、なんでコイツに当たらない……なんでコイツは……俺の動きを()()()()()()!!!!)」


 月鉱でハンマーを作って振り回しても、針を散らしても、槍を伸ばして何度も突こうとしても。

 ソレらが木槿に当たることはない。


「【ハーデース】……。」


 木槿がそう呟いた瞬間、白い霧と共に彼が姿を消す。


「!?」


 ブラットバッドは一瞬だけ骨の馬のような影を幻視しながら、飛び退いて周囲を見回した。


「レジスタンサー4、ペイルライダーは4つのレジスタンサーシリーズの中では1番使用感のクセも無く、使用から来る反動も少ない……。」


 廃工場から伸びた煙突の上で、霧をまといながら木槿が呟く。


「……【ハーデース】もその例に漏れない、名前こそ物騒だが効果は至ってシンプル、『身体能力の更なる向上、それに伴う反動の増加』だ。」


「(コイツ……この気配……まさか――)」


 木槿の周囲を覆っていた灰色の霧が晴れた直後。

 青天の空へ砕けた煙突の破片が散りばめられる。


「ぐっ……!?」


 木槿の蹴りを受け止めたブラットバッドの足を中心に、地面へ亀裂が広がっていった。


「((月人)と……身体能力が大差なくなりやがった!?!?)」


「30秒後には全身動かせなくなるだろう……が、十分だ。」


 ブラットバッドを蹴り飛ばした木槿が、周囲に霧をまといながら拳を構える。


「(なんだこの感覚は……殺すつもりなのか?……殺せるのか!?この(月人)を……!?!?)」


「……!」


 木槿がまたもや姿を消した直後、ブラットバッドの視界を危険信号が埋め尽くした。


「(左へ消え……いや、コイツは……!?!?)」


 木槿の纏うペイルライダーが大量の霧を出し、ブラットバッドと自身を霧の中へ隠していく。


「(この霧は毒か!!俺には害こそねぇが……クソ、危険マークが邪魔でアイツが見えねぇ!!!!)」


 ブラットバッドが舌を鳴らした瞬間、レッドライダーの複眼が妖しく光り両手にエネルギーを充填させ始めた。


「【赤兎馬剣(セキトバノツルギ)】ィ!!!!」


 先程崩れた煙突よりも巨大な火柱が、大剣のようになってブラットバッドに振り回される。


「どうせ接近戦しかできねぇんだろ!?どこにいようが、居場所ごと消し飛ばしてやりゃいい!!!!」


 周囲を一瞬の内に両断し、設備も道も何もかもが焼き溶かされ消し飛んでいく。

 1振りごとにおよそ半径20mを溶かし斬りながらブラットバッドは狂ったように笑った。


「本当の戦争を知ってるか!?隠れるなんざ対人戦でしか意味がねぇ!!!!爆撃機や遺物の前じゃ!!隠れた場所ごと消し飛ばされんのさ!!!!テメェみたいなクソガキが!!俺に楯突くなんざ1000年早かったんだよォ!!!!」



 直後、彼の右側から強烈な一撃が叩き込まれる。



「!!(コイツ……見えねぇ(潰れた右目の)方を……殺意の感知も追いつかねぇ速度で!?)」


 間髪入れずに叩き込まれ始めた乱撃が、炎を握ったままのレッドライダーを廃工場の壁へ何度も叩きつけた。


「(……!?)」


 抵抗のために体をひねらせ、右へ振り向いたブラットバッドは目を見開いてソレを凝視する。



 ペイルライダーと共に自身へ乱撃を叩き込んでいる、もう1体の『黒いレジスタンサー』を。



「て……テメェ――」



 乱撃の全ては上半身に集中し、更にその半分以上が彼の頭部へ確かな衝撃を与えていく。

 ブラットバッドの両手から離れた赤兎馬剣が消滅し、衝撃に揺れる視界の奥で、ブラットバッドの意識が朦朧とし始めた。


「……なんで……(月人)……が……こんな……クソガキ(地球人)……に…………。」

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