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☆怖がりオリヴィア☆

礼拝堂には上から見下ろせるような場所が2層ある。

 獣がぶつかって壊れたのか地面に接続されていないはしごをジャンプで掴んでそのまま上に行く。


「私はあっち登るね」


マニは反対側のはしごを私と同じように登った。

 はしごを登ると柱が4本あり、その奥に宝箱があった。

 開けると、中から変な足の防具が現れた。


「なんだ、これ……?」


蛇のような紋様があちこちに彫られた足甲が現れた。

 とりあえずもらうことにする。


「姉ちゃん! こっちには不思議なモノが20本くらい入ってるよ」


大きな声でマニが私に伝える。

 

「とりあえず持ってここ出ようか!」


私はマニにそう言って高見台から飛び降りる。

 マニもまた少し悩んだようだが意を決して飛び降りた。

 そのまま外に出る。ひんやりとした空気が頬を撫でて鳥肌が立つ。

 寒さからか、恐怖からかよくわからなかった。

 レンガ道はいくつかに道が分かれていて一つの道を選んで進む。

 少し歩くと魔紙が落ちていた。外に落ちていて汚れているが、読むのには問題なさそうだ。


『誰かが入ってきた。そして礼拝堂に入ったようだ。私は上で待っている』


そのメモを見て上を見る。さっきまで居た礼拝堂の中に人がいるようには見えない。

 もしかしたら、カオスがやってきた時に上から落としたのかもしれない。

 ドキッとしてそのメモをセレイアに押し付けた。


「これ持っといて」


セレイアなら大丈夫だろう。

 セレイアはそのメモを撫でてその後受け取った。

 

「あ、あぁ。この道は行き止まりみたい! だからさっきの道まで戻ろうか」


声は震えていないはずだ。

 ルーヴァを前にして新たな道に入っていくことになった。

 すぐに入口について元々空いていた大扉をゆっくりくぐり抜ける。

 上のシャンデリアが揺れて音を立てる。視線をシャンデリアの方に向けるが何も見えない。

 

「猫だよ、猫……」


そう言い聞かせ、前に進んでいく。ルーヴァが先頭だが。

 ルーヴァがスキルで火を灯すと目の前に巨像が見える。

 ヒッと声が出そうになって口を押さえる。


「この四角の像は何でしょう? よく見てください」


ルーヴァは私を怖がらせようとそう聞いてきた。

 全身像を中心にして北東、南東、北西、南西の方向に正方形に配置されている。

 北東の像は胸から下がなく、額のエンブレムは『手』。

 南東の像もまた胸から下がなく、額のエンブレムは『足』。

 北西の像は膝から下がなく、額のエンブレムは『胴』。

 南西の像は腰から下がなく、額のエンブレムは『頭』。

 

「ふーん、それは何かの暗号みたいね。オリちゃん考えてみなよ」


セレイアは挑発的にそう言ってきた。


「今そんなの考えられないよ。怖くて……」


私がそう言うとマニが爆笑した。

 私が静かに怒りを抑えていたら、ルーヴァが。


「あ、ここ鍵いるのかも」


最悪だ。鍵のためにまたあっちこっち探索しなきゃいけないようだ。

 西の通路に出て、1つ目の扉を開ける。ここに鍵がありますように、と願いながら。

 開けると物置のようなところだった。とても腐敗臭がひどい。どこからか呻きが聞こえる気すらしてくる。

 鍵を探しながら奥へと進んでいく。

 また不思議な投げ武器が入った袋をマニが見つけた。

 

「ここには鍵がないみたい」


そう言うサヴダシクは棚のものを全部地面に落として探していたようだ。

 

「そ、そう……? じゃ隣の部屋行こうか……」


声が裏返った私をマニがケラケラと笑う。完全に立場が入れ替わった。

 ぞろぞろと部屋を出て隣の部屋のドアを勢いよく開ける。

 部屋はメイドの生活部屋のようで、中央の机にメモが落ちていた。

 比較的新しく、だがほこりをかぶっていた。


『ミスト子洋館には機構兵器があるようだ。裏庭にメイドも入れない場所があり、絡繰の音がよく響いている。いつか仲間が見に行ったら話を聞こう。


Date:29』


そのメモは他の人にも読ませてあげて、みなで考える。

 パウロが眉をひそめながら、


「……機構兵器? これ、噂の機構国の技術じゃありませんか?」


彼女の言葉が、胸に刺さっていた名もない違和感を言葉にしてくれた。

 トルンが頷く。


「機構国──あそこは、“機構体”という機械人間の開発をしていた国です。関連性は、あるかもしれませんね」


そして、ふとパウロに視線を向ける。


「……あなたも、その技術を用いた存在に見えます。違いますか?」

「いや、違う──違います。ヴェラの憎々しい技術で機械に変えられました。ですので……」


パウロはしどろもどろにそう答えた。

 

「そうですか……、触れるべきではなかったですね。申し訳ございません」

「いえ。大丈夫です」


丁寧に謝ったトルンの謝罪をパウロは優しく返した。


「ないみたいですし、次の部屋行きましょう。オリヴィア様」


気まずくなったのかパウロがそう私に提案してきた。


「うん、そうしようか」


隣の部屋もまたメイドの生活部屋で、今回は特に何もなかった。

 そして、メイドの部屋の目の間にある大きな扉の前に立つ。

 深く息を吸って、吐く。

 最近開けたのか、他の部屋よりは綺麗だ。

 くしゃみが出た。鼻を掻いて暗い部屋をルーヴァが灯してくれるのを待つ。


「あ、僕の仕事だったね」


私が怖がってるのをみんなで見物にしてやがる。コイツラの魂掃除してやろうかしら。

 そんな物騒なことを考えていると、部屋が明るくなった。机の上には一つのメモが。


『ミスト子洋館の裏庭は一階から直接行けないみたいです。窓を割ってみようかと思いましたが、音が響くと感じましたのでやめておきます。あ、『悪魔女帝(エンペレース)』様がお呼びになってらっしゃるようですね。ようやく会えますね。それでは。


Date:31』


薄汚れて、インクが滲んでいる。そして、明らかに読み手に話しかけてるようなメモ。

 自分のためではない、記録、日誌のような。

 そこにはこの日誌(メモ)を残した人物の武器というか盾が置かれていた。


「私がいただきたいのですが、よろしいですか?」


珍しくサヴダシクがそう聞いてきた。


「いいよ、持ち主が見つかったら返すけどね」

「もちろんです」


フサフサの毛を貼った盾。使えるのか、分からない。

 まあ、サヴダシクがいいならそれで良いのだが。


「あ、こんなことろに扉が!」


ヴェレーノがそう言った。あまり大きな声を出すな、驚いちゃうから。

 そろそろと音を立てないように扉に近づく。

 すると、ドンっと音が響き後ろを勢いよく振り向く。

 腰を擦るマルが申し訳なさそうにしていた。机に腰をぶつけたのか。……ぶつかるか? 


「オープン!」


なんでアイツら楽しそうなんだよ。そんな声張り上げて扉開けないでほしいわ。

 扉を開けたヴェレーノについていくように堕霊ふたりが暗闇に吸い込まれていく。

 

「ここは調理室みたいですよ。……オリヴィア様怖いんですか? 手繋ぎましょうか?」

「怖くなんかないよ? な、なにを言っちゃってんのよさ」


落ち着こう、落ち着くことが大事。深呼吸してこう、吸ってー、吐いてー。

 その最中に背中をたたかれた。情けない声が出る。

 

「分かった、分かった。怖いから驚かさないで……」


お手上げだ。そんなにみんなして驚かせに来なくて良いじゃん。

 マニが後ろで噴き出した。


「早く行こうよ、ふざけてないでさ。『にゃッ!?』だって……」


バカにしやがって、こいつ。声真似までしてくるな。しかも全ッ然似てないし。ていうかふざけてるのはあんたでしょ!?


「こっちのセリフだよ。もうやめてってば」


いつかやり返してやろうと決める。


「頼りにしてるよ!」


マリが私の方をポンと叩きながらニコリと笑う。


「任せてよ」


残念ながら調理室には何もなく、ただ私が戦々恐々としているのがバレてしまっただけだった。




礼拝の十字燭台


黒き炎でのみ炎を灯す特殊な燭台。

 ここの礼拝堂はしばらく使われていなかったようだ。

 あの獣がカオスを喰らったのはヴェラとの戦争の後らしい。

 戦後のために協定を結ぼうとやってきたステージのカオスらはミスト洋館に迷い込んでしまった。

 あの獣は、貪欲だったのだろう。




大蛇之足甲(おろち)


妖器の一つとされていた防具。鵺兵装の一部である。

 大蛇(たいじゃ)(かたど)った紋様があちこちに彫られている。

 足音を抑え、蹴りの時につま先から針が飛び出し、毒を相手に注入する。

 恐ろしい蛇は、私の友となり、そして助けてくれるのだろう。




猫ノ投毒


不思議な黒色の武器。

 小さな武器は指を通すくらいの穴が空いている。

 刃は投げると突き刺さる。

 敵の体に刺さると毒を注入して相手の動きが鈍る。

 高い技術を使ったこの機構はおそらくもう再現できないのだろう。

 



大妖ノ投器


不思議な黒色の武器。

 小さな武器は指を通すくらいの穴が空いている。

 刃は投げるとよく突き刺さる。

 投げると相手の体に深くささり、大きなダメージを与える。

 高い鍛冶技術を要するこの武器は今となっては作る必要はないようだ。




猫ノ毛盾


猫の妖怪の毛を貼ったとされる武器。妖器ではない。

 防火性能がとても高く、熱線も弾くらしい。

 この武器は誰のものだったのか。

 わかるのは、この盾の持ち主が二度と装備しなかったということだけだ。

 私ならもったいなくて拾いに来るが。いや、持ち主もこの館が怖かったのかもしれない。私は怖くないけど。ほんとに。

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