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☆ドク☆

廊下を走る。

 知りたくもない事実を聞いてしまった。明日の夜、奇襲を受ける。

 なりふり構ってられなかった。だから気が付くはずもない。

 大きな音をたてて廊下を走ろうものなら家の主が気が付かぬはずがないのだ。

 そして、大きな針が彼女の下腹部を貫通する。




枕が飛び交う戦場で。

 やはりパウロの枕の制御がずば抜けている。必中と言っても過言ではない。

 遊んでいるわけだが、これにも理由がある。

 というのもこんな場所で寝ていたらとんでもない目にあいそうだ、と思ったのが一つの理由だ。

 始めは遠慮していたパウロもいつの間にか普通に当ててくるようになった。

 そして同室の女性であるシャータインの枕も威力が高い。

 ヘタに受けたら怪我しかねない。多分このシャータインという女性は普通に強いのだろう。

 実力を詐称しているのか?

 まあ、人の感情に敏感な堕霊(サタン)が無反応なのだから大丈夫だろう。


(私は確かにそういう物を捉えることが得意です。ですが、彼女は膜を貼っているような油断ならぬ人物なようです)


丁寧な言葉遣いで私にそう言っていた。

 確かに一人の有能な仲間に頼り切るのは愚かである。警戒を緩めないようにしよう。

 その時扉を叩く音がした。

 埃の舞っている部屋を抜け出して扉をゆっくりと開ける。警戒はするがすぐに解くことになった。


「眠れましたか? 朝ご飯を用意させていただきました。朝食会場に案内します」


中の二人を呼んで部屋を(から)にする。




朝ごはんに出されたのは美味しそうなフルコースだった。

 新鮮な野菜と肉を使ったもので量も質もとても素晴らしいものだった。

 商団の大男も満足そうにしていた。

 そのまま浴場へと案内され男性陣とわかれる。

 そして脱衣所にて衣服と武器を私のスキルで収納する。少し変な臭いがするがきれいな場所だった。


「パウロのも預かっていい?」


コソッとパウロに尋ねると、


「お願いしてもよろしいでしょうか?」


と言われたのでそのまま預かることにした。


「私の服と武器もお願いしてもいいかしら」


シャータインから全てを受け取る。

 目の前のたわわな胸が現れる。

 なるほど、マニもつれてくるべきだったか。

 もったいないことをした。

 まあ後悔をしている場合ではない。家に帰ったら大きめのお風呂を作ってもらおうかしら、と少し思ったのだった。

 そして肝心のお風呂の中身だが、とても広い。

 魔法で拡張したのかいろんなところで他人の魔力を感じて不愉快ではあるが目をつむろう。

 岩で作られた風呂場にはすでに数人が入浴していた。

 シャータインがかなり朝ごはんをゆっくり食べるタイプだったのだ。ギャップ萌えである。

 身体をお湯で温めて、石鹸で洗う。


「かなり居心地悪いですね……」


パウロが私にそう耳打ちするが全面的に同意する。

 パウロの背中を洗いながら何時までここにいるという話だったかを一生懸命に思い出そうとする。

 羽根を丁寧に洗う。


「ありがとうございます」


パウロの羽根は丁寧にマニが洗っているのだが、今回はマニがいない。

 キレイな白色を取り戻した羽根。 


「入ろうか」


先に終わっていたシャータインに話しかける。こいつ、わざわざ私たちを待っていてくれていたのか?

 いい奴に違いない。


「いくぞ」


たっぷりのお湯を使った浴場は良く手入れされていた。

 使う人がメイドくらいだからというのもあるのだろう。


「今日も朝遅いらしい。それとももう上がったのかな? ねぇルヴァールを見なかった?」


一人の女性が私に話しかける。

 そういえばあと二人いたはずだ。

 

「アタシの友のことではないだろう? ならば知らないよ」

「────もし、見たら教えてほしい」


彼女は不安げな表情を浮かべながらそう言った。


「もちろんだ」


彼女はゆっくりと温泉から上がる。

 私たちは温泉に長らくいたのだった。




そして夕飯の時。

 あの女性はこなかった。


「心配だね……」


私はパウロにそう言う。


「そうですね。不気味ですし」


パウロは丁寧にわたしにそういった。

 すぐにご飯完食し、部屋に戻る。

 今日帰る予定だったのになぜか帰宅が一日遅れることになったのだ。


(来ますよ。ご注意を)


意味がわからなかった。

 サヴダシクの警告で私は警戒を強める。そしてすぐにサヴダシクの意図を理解した。

 臭い。空気にかすかに混ざるその匂いに気がついたのはきっと『グループ 人狼』のおかげだろう。

  

「換気して、窓を割ってでも」


シャータインも気が付いたらしい。

 彼女はやはり油断ならぬ人物だったらしい。


五輪能力(スキル) 掃除屋」


風を起こして部屋に風穴を開ける。

 外の冷たい空気が流れ込んでくる。 

 

『睡眠系統の毒っぽい。息をするな』


紙にさっと書いて私に渡してきた。

 パウロにも一応伝えるが、パウロは一切の毒を無効化する。

 睡眠も必要としないのでこの毒は気にする必要もないだろう。

 数分経っただろうか。私のスキルで換気を終え、呼吸が許された。

 

「いいか、耐えるぞ」


そう言うとシャータインは脱力したようにぐったりと壁に寄りかかる。

 それに倣って私も倒れる。パウロも一瞬焦ったようだが理解してベッドに突っ伏した。

 さらに数分後、ゆっくりと扉が開く。

 そして暗い部屋をゆっくりと進んでいく。

 彼らは重い毒対策の防具を着込んでるせいか、外の空気を感じていないようだ。

 私に光を照らし、寝ているのを確認してさらに奥へと進んでいく。そして正面を見て固まっている。


五輪能力(スキル) 掃除屋」


二振りの槍を水で創りその二つの背中に突き刺す。


「な、なぜ起きてい、る……?」


一人が残されたチカラでそう問う。


「ごめんね、私に毒は効かないんだ」


倒れた彼の腹から渦巻く水流が効率的に血を抜き出すように働く。

 すぐに死んだようだ。


「急ぎすぎだ。殺すなよ」


私に文句を漏らしているが、それに関しては伝えてないほうが悪いのだ。

 私は開き直ってそう考えたが絶対に口には出さない。

 

「次から気をつけましょう」


パウロがいつの間にか私の目の前まで歩いてきていた。

 そしてそのまま光線を放つ。

 手足を破壊(こうげき)してそのまま優しく話しかけるパウロ。


「誰が悪いの?」


鳥肌が立ってきた。

 詰問し続ける彼女は優しい顔だがされている方は恐怖でしかないだろう。


「わかりました!」


嬉しそうに私に駆け寄る彼女の後ろで用済みの敵にとどめを刺している。

 

「ここの館長が元凶だそうです。行きましょう!」


それに考えを巡らすシャータイン。

 そして納得したように一つ頷いて、


「気になる場所がある。来るか?」


いきなり聞かれてびっくりしたが、


「うん、行く」


また面倒事に巻き込まれたそうだ。

 私たちは廊下に飛び出して目的地に向けて走り出したのだった。




グループ


仲間にした魔物に対応するスキルを獲得できる。

 なぜ獲得できるのか分かっていない。

 グループや、ジョブなど別名を冠するだけで全ては『スキル』に属する。

 結局ニンゲンというのは名称を変えたいだけなのかもしれない。

 自分の魅力を語るには、相手を貶めるには、やはり括りを変えなければならないのだ。

来週辺りから週に基本2本投稿しようと思ってます。月曜日と木曜日の19時にします。木曜日は目標ということで投稿がない週もあるかもしれませんが、赦してください。

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