Ⅰ
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これは嘘かそれとも誠か
かの聖騎士卿ファーレイン・ミシアス・リスクラッドについて書かれた本『救国の騎士』の冒頭ではこんな一幕がある
当時はまだ幼い王太子、つまりは今上陛下であるジーウェインがとある視察に赴いた際のことだ
彼はそこで目にした水路についての質問を周囲にいたものたちへと投げかけた
それは非常に難解で、同時にかなり専門的な分野のことでもあり、同行していた役人はおろか現場で働いているはずのものたちですら答えることができなかったのである
しかし、そんな難題であるにも関わらず体調を崩していた騎士に代わり、たまたま臨時の護衛に着いていた年若い騎士がその知識を持ち合わせており、すらすらと答えてしまったのだ
疑問に思った王太子はさらに尋ねた
「なぜそなたはそのような知識を持ち合わせているのか」
それに対し、騎士はこう答えたのだ
「目についたものは何でも知りたがる年頃の姪に答えるため、聞かれそうなことは予めすべて説明できるようにしているのです」と
それではと王太子がさらにいくつかの物事について尋ねてみるとたしかに騎士は澱みなく答えていく
その知識量は周囲にいた役人たちも唸るほどであり、また同時に物知らぬ相手へと説明する能力にも長けていたのもある
これに感嘆した王太子は道中その騎士を伴って歩くことにしたのだが、やはりどこへ赴いたとしても彼は投げかけられた疑問へとしっかり答えたのだという
以降この若き騎士は王太子の信を得て、その後は近衛として重用されていくこととなる
後に見せた様々な武勇のみならず、このように若くしてあらゆる知識をも持ち合わせた賢き騎士こそが、かのファーレイン・ミシアス・リスクラッドなのだ、と本の中ではそう締めくくられている
そして、
その若き騎士の言葉に登場した『何でも知りたがる年頃の姪』こそ─────、
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