ⅩⅥ
「……フィギュラス」
「あっはい。すみません領主サマ。こちらを」
小さくシェイドに諌められ、フィギュラスはようやく自分の役目を思い出したようで、懐から何かを取り出すとシリアへと手渡してくる
それは首掛け紐の付いた小さな笛だった
乳白色の石製で、吹穴が空いているだけで押さえ穴はない
特に扱ったことはないものの、彼ら鳥使いが鳥を呼び寄せる時に使う笛だったとシリアは記憶している
シリアがそれを受け取ると、それからこちらもと今度は小さな革袋を手渡された
わずかに甘い香りが漂ってくることを考えれば、なにかの果実が詰まっているのだろうか
「こ、これから領主サマにはシェイド様とのやり取りに使っていただく鳥に挨拶していただきます
よく躾てありますから、その笛を吹いて、手づから木の実を与えてくれた人にしか懐かないようになってますんで……」
「わかりました。もう吹いてもよろしいのですか?」
「えっ、あ、も、もうですか。い、いえ大丈夫です」
やや動揺しつつではありながらも同意を得られた事で、シリアはその笛を首に掛けるとそのまま吹く
高く澄んで伸びやかな音が響き渡り、それから数秒としないうちにどこからともなく笛の音とよく似た鳥の声が聞こえてくる
やがてやや大きな、シリアの顔よりはひと回り小さい程度の白い鳥が勢いよく滑空し、止まり木のように伸ばしていたフィギュラスの腕へと掴まった
その鳥は笛を吹いたのがシリアだということは理解しているのか、静かに、どこか知性を感じさせるような瞳を向けてくる
それから彼女がフィギュラスの指示に従いながら革袋に入っていたテルンザという黄色い実を掌に乗せて近付けると、ややおもむろに身体を伸ばし、テルンザを啄んだ
毛並み───いや羽並みはよく整えられ、シリアとしてもあまり見かけることのない種ではあったものの、食事を終えた後にやや首を傾げながらもこちらを見上げてくるその様はなんとも愛嬌を感じられる
フィギュラスへと尋ねてみたところどうやらメスであり、シェーナという名をつけているらしかった




