ⅩⅤ
学舎制度というのはシリアが自領で行った改革の中の1つだ
過去……とは言ってもここ数年ではあるのだが、シリアが領内で使われる道具の見直しや農村などの区画整理などを行ったことで領民たちの作業効率が大幅に改善され、その結果多くの時間が浮くようになった
その空き時間を有効利用できるようにと、誰もが無償でかつ自由に利用することのできる施設をつくり、そこに教師となる人材を雇い入れ、文字の読み書きや取引で必要となるであろう簡単な算術、または季節によって収穫できる森の恵みや簡単な怪我の手当てなどについての知識を学べるようにと取り組んだ仕組みこそがこの学舎制度である
当時のシリアとしては皆で読書が出来れば良いという程度の思いつきであり、特に強制などはしなかったのだが、おかげで領内の識字率等は大幅に向上し、商人から不当だったり極端な値の取引を行われることも少なくなったらしい
また識字率が向上したことで領民たちが効率的な商売を行うための方法について書かれた書物などについても触れることができるようになり様々なことについてもさらなる向上が見込め、同時にリスクラッド家が提供した書物などもあったことで自ら進んで学び、それらを足掛かりに良い勤め先を得た者もいるとシリアは聞いていた
そのおかげもあってか、幼くして自分の劇団を作るのが夢だと語っていた顔馴染みの少年がやがてシリアの誕生祭に際して彼女のそれまでを描いた脚本を書き上げることとなり、結果としてその劇の題名がシリアにとってはものすごく重い呼び名へと成っていくのだが……
つまるところ、このフィギュラスという青年も、そのようにして城に出仕することができるようになった人物だということなのだろう
シリアがしたことといえば、あくまで環境を作り上げただけ
だからこそ、それをなし得たのは当人の努力であるのだということは間違いない
しかし、自身のしてきたことがその一助となれていたのであれば、それはシリアにとってはまさに望外の喜びであると言えた
「今さらかもしれませんが、おめでとうございますフィギュラスさん!
私もとっても嬉しいです!」
「い、いい……いえ、領主サマにはいつも自分たちが感謝しっぱなしで……」
そんな姪とその領民のやり取りをファーレインはにこやかに眺める
他ならぬメイフェルベリー子爵に多大なる恩義を感じ、決して裏切る事のない信頼のおける人物
だからこそその役目に彼が選ばれたのは間違いがなかった




