ⅩⅣ
少なくともこの屋敷にいる間はシリアの元へと文書を届けることが彼の主な役周りであるらしい
今後は幾度となくこの屋敷を訪れる事になるだろうということでシリアだけではなく屋敷の主人であるクロムともしっかりと面通しを行っていた
届いた情報はシリアが精査した後に再びシェイドを通してファーレインへと伝えてもらう
しかし、屋敷から出ることの出来ないシリアがどうやってシェイドに届ければいいのかと疑問に思っていたところで、ようやく、先程から石像と化していたもうひとりの男が示されることとなった
「じっ、じじ、自分はっ。王宮連絡隊第2部隊所属。とっ鳥使いのふぃぐっ、フィギュラスと申します」
やはりシェイドとはひどく対称的な、たどたどしい様子でフィギュラスは名乗り、そしてシリアに対し勢いよく頭を下げた
相手によってはあまりにも不出来で無作法だと取られてしまうような振る舞いではあるのだが、自領の民たちと近しい距離で接して来たシリアからすれば特に気にならなかった
むしろおそらくは平民の出であろう彼の一生懸命とも思えるような立ち振る舞いは、その真っ直ぐな心根を示しているようにさえ感じられて好感を覚えるぐらいだ
「フィギュラスさんはじめまして。私はメイフェルベリー領にて領主を務めておりますシリアノル・エル・リスクラッドです」
シリアはなるべくは固い印象を与えないように、彼の緊張を解きほぐせるようにと微笑とともに返してはみるものの、大して効果はないようだった
より一層恐縮しきった様子で大柄な身を縮こまさせると存じておりますと精一杯口にする
わざわざ自分に面通しするようにと叔父に連れられて来たのだから、知っていて当然であったのだろう
どこか納得しつつも、ではどう声をかけるのが良いかとシリアが考えていると、やはり笑顔を浮かべてその様子を見守っていた彼女の叔父が口を開いた
「フィギュラスはメイフェルベリーの出身でね、シリアの定めた学舎制度のおかげで城勤めができるようになったと日頃から感謝していたそうだよ」
「まあ! そうなんですか?!」
その内容に、シリアは思わず喜びの声をあげた




