ⅩⅢ
翌朝、日の出よりも早くに活動を始めたシリアがクロムとの朝食を済ませ、食後のお茶を楽しんでいると、宣言の通りにまたもや騎士団の紋章の入った馬車が王宮より訪れた
「ああ、今日も私のシリアは一段と輝いて見えるよ
やあクロム、いい朝だね」
クロムから馬車の到着を知らされたシリアたちが出迎えたことで、溢れんばかりの笑みを浮かべつつ昨日同様にファーレインが馬車から出てくる
まるで歯の浮くような気障な口調ではあったが、もう慣れたものであったのかシリアは笑顔で受け流しており、その代わりに昨日からそれを見ていた御者台に座る騎士が若干食傷気味な表情を浮かべていた
だが、それには触れることなく彼らが手短に挨拶を済ませていると、昨日とは異なり、さらに2人の人物がファーレインの後から下車をする
ひとりはまるで文官のような出で立ちに見えた
紫紺の髪を後ろでひとつ括りにしてある男性で、シリアよりもいくつか年上に見える
面立ちは優しげではあるものの、とても姿勢がよく、また下車をしてからは迷いのない動作で即座にファーレインの背後へと控えた
もうひとりの男はそれとは対照的で、緊張しているというのがその場にいる全員に伝わるほどだった
馬車と地面での段差で転びかけ、慌てて立ち上がるも同じ方の手と脚を同時に出すなど何ともぎこちない
身に纏うのは王城の中でも下級の者たちが纏う最低限度の支給品のもの
歳の頃はどちらかと言えばファーレインに近しいように見えた
王国の民には多い蔓草色の髪は切れ味の悪い刃物で短く切り揃えたからか、所々がハネてしまっている
「さて」
ファーレインの背後に控える先の青年とは異なり自身がどう振る舞えば良いのかがわかっていないのか、彼はそわそわと落ち着きなく辺りを見回していたが、そんな彼の様子を気に留めるでもなく、ファーレインは笑顔で話し始める
「昨日伝えた通り、シリア、きみを手伝ってくれる人たちを連れて来たよ」
そんな言葉とともに聖騎士卿はまずは後ろに控えていた青年を手で示す
それに合わせ貴族式の礼をしてから、青年は真っ直ぐにシリアの淡褐色の瞳を見つめてきた
「お初にお目にかかりますメイフェルベリー子爵
私はシェイド。シェイド・リュール・ラジーンと申します」
当然のごとく初対面ではあるのだけれど、しかしシリアは彼の家名についてはよく知っていた
「ラジーン家……というとエルトラーデ辺境伯領の……?」
王国の遥か西端、セルフィト公国と接する要衝の地を任されているエルフェンリートの番兵エルトラーデ辺境伯領
まさにその領家の名こそ彼が名乗ったラジーンというものであり、王国においてその貢献は計り知れない
その子弟などであれば、現時点では地方の一領主でしかないシリアよりも立場が上であってもおかしくはないのだが、しかし彼は姿勢を崩すことはなく優美な口調で、畏れ多くもその末席を汚させていただいている者ですと口にする
その後のファーレインの紹介に拠る所では、当主の四男で本妻の子ではあるらしいのだが、本人曰く剣術よりも書類仕事の方が性に合うとのことで王城に出仕してきたのだという
とはいえ代々国を守り抜いてきた辺境伯家の出身である以上はそこらの兵士よりも腕が立つのはまず間違いないだろうし、護衛の意味も兼ねてそんな人物が自分に付けられたのだということがシリアにはよくわかった




