ⅩⅡ
確かあの傭兵崩れとの会話の中でクロムはここのことを第3庭園と呼んでいたことをシリアは思い出す
いかに庭園内とはいえ特別待遇で王城の敷地内で住まうことを許可されているのだから、もしかすると、王家に対する多大なる恩義や貢献があったのかもしれない
職人仕事に見える家具は手製のものより幾分グレードが高く見えるが、かといって部屋全体の調和は損なっておらず、昼間のように一瞬見ただけではどれがそれであるのか気が付かないほどだ
実際、このレリーフに着目しなければシリアもそれに気付くことは無かっただろう
それほどまでに馴染んでいるのは、おそらくこの家具を注文した人物がこの部屋のつくりを完璧に理解していたということに他ならない
つまるところ、その人物がこの部屋に足繁く通っていたという事実を示しているに違いなかった
数代前の国王陛下の際に作られていた見取り図では、本来ここには確かに離宮があり、現在は使われてはいないはずだった
だからこそ、それを記憶していたシリアはこの敷地内を通って逃げることを選ぶこととなり、その結果、クロムに匿われて難を逃れることが出来た
この屋敷が建てられたのはその見取り図が作られた後の出来事だということになるため、近年であると言えるのだろう
不慣れな王城を逃げている最中にそんなところに辿り着くというのは彼女の叔父が言う通り運がよかったのだろうとは思うが、しかしそんなひとことで片付けてしまうには色々と出来すぎているようにすら感じられる
果たして誰かの策謀によるものか、それとも単に星の巡り合わせか
しかし、そのどちらであったとしてもシリアがクロムに救われ、そして親切にしてもらっているという事実は変わらない
そんな相手に今、自分の返せることは何なのか
小さくあたまを悩ませながらも、支度を済ませたシリアはベッドの上へと倒れ込む
やはりこちらも高価なものであったのか、予想以上に柔らかなマットレスにそのけして大きくはない体躯は深く沈み込んでいった




