ⅩⅠ
それから、シリアたちは暖炉のある談話室で食事を摂ることになった
食堂が設けられていない分、ここで食事をする設計になっているようで、どうやら奥の部屋にはキッチンがあるらしい
簡素なものだけど、と言いながらも出された魚と野菜、それから薬草の入ったスープは絶品で、また一緒に用意された黒パンは王都の市場の店のもの
シリアが王宮で作られた物じゃないのかと尋ねたところ、どうやらここにあるのは薬師の真似事のように作った薬を王都や付近の村に届け、そのお礼として貰ったものがほとんどであるのだという
おそらく先日シリアと街中で出逢ったのもこの道中であったのだろう
それこそ、先ほど使用人たちが運んできた食材を除けば、貰い物ばかりなのだとか
そう答える青年の笑顔はどこか誇らしげでもあって、シリアはどこか温かい気持ちになる
そうしてささやかながらも楽しい食事会を終えてからは、今度は調薬しているところを見学させてもらえることになった
本人が薬師の真似事と言っていた以上当然と言えば当然なのだろうが、それはとても手馴れたもので、シリアは集中の邪魔になってはいけないとは思いつつも、作業の端々で質問をしてしまう
作業の手を止めることなく、けれども一切の不満は漏らさずに答えてくれる黒髪の青年に、多少の申し訳なさは覚えつつも深く感謝した
さて、そんなこんなをしているうちに渡りの時間がやってくる
食事を済ませてからお互いに挨拶を交わし、そしてシリアは自分に与えられた部屋へとやってくることになった
意を決して扉を開く
室内は夜であるにも関わらず、その調度品のおかげもあってかやはりどこか温かく感じられる
それはシリアにはこの屋敷の主である青年と、その名も知らないお母君の人柄を表しているようにも思えて自然と笑みが溢れた
その材質の良さに恐縮しつつも自分に用意された夜着に袖を通す
それから櫛を通した後で緩く髪を纏めようとして、ふとその鏡台に彫り込まれた細工が目に入った
紋様の上をシリアの指が滑り、そっとなぞっていく
昼間にも若干気にはなっていたものの、すごく丁寧に仕事された見事な細工だ
モチーフとしてはなにかの植物と渦巻模様が組み合わさったかのようで、よくよく見るとクローゼットや鏡台、寝台といったおそらくは職人仕事だと思われる品には必ず彫られている
反面、どこか不揃いなーーおそらくは手製の品々には一切の彫刻がない
職人に作らせる際には徹底して細工がされているところを考えるとお母君やこれらの贈り主を示す紋章であったのだろうか
とはいえここまで精巧な細工を施せるというのであれば、それは相当腕の立つ職人でなければ不可能だろうし、そうなると当然値段も跳ね上がる
そこまでして細工をするとなると、よっぽど大切な印だということになるのだろう
それこそ各王族に与えられる王家の御印みたいに




