Ⅶ
「顔合わせはまた次回。ここに連れてくる事になると思うから」
「……はい」
隠そうとはするもののやはり煩わしいというような感情が漏れてしまったのか、ファーレインはどこか困ったように笑うと手を伸ばしてシリアの艶やかな髪を撫でる
「少し不自由にはなってしまうだろうけど、それもまた私たちの務めだよ」
「それは、理解しています」
そう、シリアにだってそれが貴族の籍に身を置くものとして必要不可欠であるということは理解している
けれども理解ができるからとはいえ、全て納得して飲み込めるかどうかというのは全く別の話だ
やはり、常に誰かの視線を感じるというのはシリアにとって少々煩わしく思えた
自分で動けば済むことをわざわざ人に伝えてしてもらうというのも面倒な上に相手に迷惑がかかると思ってしまうし、かといって伝えないでいて自分の意図とは異なったことをされると単純に困る
命を待って側に控えられていると気になってしまうし、そうなると好きな時に読書に没頭することさえできなくなってしまう
それでも、それをうまく使いこなすのが上の立場の人間の仕事だと言われればそれまでで……
だからこそ、シリアには自らがその経験を怠っているという自覚も確かにあるのだ
「うん。それならいいんだ」
そんな彼女の心中など知ってか知らずか、しばらくそうしてからやがてどこか名残惜しそうに離れていく叔父の手
ファーレインはひとつ頷くと、場の空気を入れ換えようとでもするみたいに、さて、と発した
「話としては以上だよ。遅くとも数日のうちにはまた来るから、それまではクロムの言うことをよく聞いてきちんと守るように」
「叔父様っ!」
どこか幼い子供に言い聞かせるかのような文言にむむっとシリアが口先を尖らせれば、聖騎士卿はそれの何が不満なのかはよくわかっているとでも言いたげにからからと笑った
「もうっ!」
なおも抗議の声を上げるも、楽しそうに笑うばかりでまともに取り合ってくれそうにない
それどころか頬を膨らませかけたシリアを放置したままで、彼は再びクロムの方へと視線を投げかける
「クロム。この後すぐにでもシリアの生活に必要なものは届けさせる」
「わかった。対応できるようにしておくよ」
「ああ。どうか姪のことを頼む」
「うん。任せて」
そうして手短な挨拶を済ませるとすぐさま馬車へと乗り込んでしまう叔父に結局シリアはそれ以上言い返すことは出来なかった
やはり忙しい合間を縫ってわざわざ会いに来てくれたのだろう
そうさせるほどの問題を起こしてしまったというのは申し訳なくもあったが、しかし同時にそれだけ自分を心配してくれたのだという事実がシリアには本当に心強く思えた




