Ⅴ
「ファーレイン、お茶は?」
「ああ、大丈夫。今回のことで色々動かなきゃいけないことが出来た
無事は確認できたし、シリアに軽くこれからの話をしたらすぐに戻ることになる」
クロムの勧めをやんわりと躱すと、聖騎士卿は再びシリアの方へと顔を向けた
自分の名を呼ばれたことで、若干混乱が深まったシリアではあったものの、それがいつもの優しい叔父の表情であったことで少し落ち着きを取り戻した
「さてシリア。まずは本当に無事でよかった
きみが王弟の遣いに追われて保護されたという報せを受けた時は気が気じゃなかった」
「それは……大変申し訳……」
「ううん。きみが無事ならそれでいいんだ
それにきみは間違ったことはしていない」
身分の差を考えなかったこと、もっとうまくやれた可能性はあったこと
そう昨晩から何度も後悔を繰り返したシリアではあったのだが、どこまで事態を把握しているのか彼女の叔父は間違ったことはしていない、となおも繰り返し言い切った
「それで、これからのことなんだけど
シリアは正しいけど、今回ばかりは相手が相手だからね
まだあの傭兵崩れは諦めていないだろうし、しばらくはここにいて貰うことになる。クロム、頼めるかな?」
「うん、もう兄さんにも伝えてあるしそのつもりだよ」
「そうか。助かる」
「え、あ、あの……?」
納得しあったように頷きあうクロムとファーレインだが、当の本人であるシリアには全くといっていいほど事情が掴めない
やや困惑していると、彼女の叔父はひとつ小さく頷いてから目線を合わせてきた
「ふざけた話だけどシリアにやり込められてこのまま逃げられたんじゃ面白くないだろうし、あれは絶対に何かやり返そうとしてくるはず
あんな性格をしているけど、それでも王族であることには変わらないからね
シリアの身柄を寄越せと言われれば、それを拒否できるのはそういないんだ」
そのしつこさに渋面を浮かべたくなるものの、何とか我慢する
いくら国のNo2と言えど王弟殿下をあれ呼ばわりとはさすがに笑えないが、その気持ちはシリアにもよくわかった
とはいえ、向こうからすれば横からちょっかいをかけて喧嘩を売ったのはこちらだということになるのだろう




