Ⅳ
いつの間にか朝日が登り始め、ゆっくりと空気が暖まっていく
冷たい朝の空気は胸いっぱいに吸い込むと気分がすっきりとするものではあるが、やはりぽかぽかとしている方が心地よくてシリアは好きだ
焚き火に当たりつつまだ柔らかい朝の陽射しに目を細めていると、やがて対面に座っていたクロムがふと何かに気が付いたかのように数度目を瞬かせ、それからピンと背を伸ばした
「……どうかしたんですか?」
「うん。どうやらお客さまみたい」
シリアが尋ねれば、クロムはそう返してくれる
だが、辺りに人の気配はなければ、特に何らかの音が聞こえてくるわけでもない
シリアが少し不思議そうな顔をすると彼は「他の人よりも少しだけ色々聞こえるんだ」と言って笑った
そして、特に何をするでもなくそのまま2人でお茶を飲んでいると、しばらくして馬の走る蹄の音と、その馬が牽いているのであろう車の音が聞こえてきた
おそらくは王城の方からやってきたのだろう、王国騎士団の紋章の入った馬車はやがて屋敷の前で停車し、御者の合図も待たずに勢いよく扉が開くと中から白銀の鎧に身を包んだひとりの男が降りてくる
「シリア! 無事だったかい?!」
「ふぁ、ファルにーさま!?」
こんなに朝早くから一体どうしたというのか
この国で2番目に偉いはずの聖騎士卿はすぐにこちらへと駆け寄ってくるとシリアの姿を確認して、それからようやく安心したかのように大きく息を吐いた
おそらくはシリアとの間に焚き火がなければ抱きしめられていたに違いないぐらいの勢いだった
「ああ、よかった。シリア。きみが無事で本当によかった」
「ファルに……じゃなくて叔父様、どうしてこちらに?」
もう既に手遅れではあるのだが、シリアは驚きのあまり懐かしい呼び方を口にしかけ、叔父以外の目があることを思い出してあわてて飲み込む
代わりに誤魔化すように疑問を投げかけてみれば、彼は昨夜のうちに言伝をもらったんだと口にして、シリアの対面に座っていた黒髪の青年の方へと向き直った
「ありがとうクロム。本当に助かった」
「ううん。別に気にしないでいいよ
それよりあの人がまた迷惑をかけたみたいで……」
「それこそクロムのせいじゃないさ
だが、シリアに手を出したんだ
今度という今度こそは徹底的に絞り上げてやる」
どうやらこの青年とかの聖騎士卿は旧知の中であったらしい
少し混乱しているシリアの前でどこか親しげに感じられるようなやり取りをしつつも、ファーレインは自身の姪を傷付けたであろう人物に対して目を怒らせていた




