Ⅲ
「クロムさんは植物にお詳しいんですね」
「そうだね。昔から育てているし、それなりには詳しいと思う」
薬師か何かなのか、思えば彼が昨日匿ってくれた部屋も調剤部屋だったことを思い出す
「じゃあ、ここの植物も、クロムさんが?」
「うん。そうだよ」
青々とした葉の植物が立ち並ぶ庭園を見渡しながらそう尋ねてみれば、彼は確りと頷いてみせた
「とはいえ、ひとりでやっているからそこまで大したものではないけど」
本当にそう思っているのかそれともただの謙遜か定かではないが、彼のそんな言葉にシリアはやや大げさとも思えるぐらいに横に大きく首を振る
「そんなことないです
すごく手入れが行き届いてて、それにとてもいい土だと思います」
「わかるの……?」
「はい。メイフェルベリー……その、私の住んでいた所は少し離れていますので、王都よりも自然に囲まれていて農業が盛んな土地でしたから」
緑豊かな自然の恵みと、すぐに分け入ることのできる小さな山々を有したメイフェルベリー領
そこに住まう人々はそれらの恩恵を与りながら生きていたし、そんな領民たちと同じ目線で歩む事を尊きとするリスクラッド家もまた当然のようにそうしていた
特にシリアはキルカの実が大好物であったこともあり、屋敷の庭の一部は彼女専用のキルカ畑にもなっていた程だった
もちろん庭師の助けも借りていたのだが、それでもその経験や今までに読んできた書の知識もあってかシリアも植物に関してはそれなりに詳しいと言えるだろう
とは言っても、書物に耽り、貪欲に知識を吸収していたシリアはだいたいの物ごとについてそれなりに詳しくはあるのだが……
それはさておき、そんな彼女の目から見ても、ここに作られた畑は隅々まで手入れが行き届いているように感じられた
「そっか。それは、素敵だね」
「はい。とっても素敵なところなんですよ」
シリアは大事な故郷が褒められたことを嬉しく思い、つい笑みが零れた
それを微笑ましく眺めるクロムに「お代わりは?」と尋ねられたのでありがたく頂いておくことにする




