ⅩⅢ
またナイフを投げられても良いようにとなるべくは男との間に生垣などの遮蔽物が入るようにしていると、先程の場所からとっ、と何か軽い音がした
おそらくは山猫もこちらへと渡ってきたのだろうその音を聞きながらも冷静に自分が辿るべきルートを頭のなかで組み立てていく
ーーファルにーさまはこの時間であればまだギリギリ執務棟にいる……それならこっちの離宮を通り抜けた方が早いし、遮蔽物だって多いはず
そんな風に考え、少し暗くなり始めた中を進むシリアであったのだが、どれだけ彼女が進んだとしてもその目的の離宮が視界に入ることはなかった
ーーなに、ここ?
その代わりだとばかりにそこにあったのはかなり広々とした面積の庭園
いや、花の類は一切なく、手入れの行き届いているであろう畝には蒼々と茂っている草木が並んでいるその様は植物園だとでも評した方がいいかもしれない
少し遠くには温室であるのかガラス張りの建物が見え、その横に管理小屋にしてはかなり規模が大きく、かといって屋敷と呼ぶにはあまりにも飾り気のない木造の建物と井戸がある
ーーこんなとこ地図には……?
本来の地図上であればここは間違いなく現在は使われていない離宮のひとつが建っていたはずだ
もちろん、王城の施設であるからにはいつでも使えるようにと手入れはされているだろうが、こんな風に植物の管理までされることはない
であれば当然そこにはそれをする人がいて、ここには地図にすら載らなくなってしまう何らかの理由があるということに他ならない
そんなところに不用意に足を踏み入れて良いのかなどとわずかにシリアは逡巡したが、やはり気にしていられるような状況でもない
「ねえ、ちょっと」
やがて決心をして庭園を通り抜けようとすると、シリアはひとりの青年に話しかけられた
自分ひとりだと思っていた場所に唐突に現れた青年に思わずシリアの心臓が跳ねる
やはりここには立ち入るべきじゃなかったかなどと考えていれば、井戸の近くに立つシリアとは頭ひとつ分ほど離れた背を持つ青年はそのまま足早にシリアへと近付いた
「こっち来て」
「え……?」
それがどういうことなのか、わけもわからずただ困惑していると青年は焦れたようにシリアの手を掴む




