ⅩⅠ
ーー権利を持たず、権威を持つ
そう、まさにこの位階において普段王太子と同じ従1位の位を持ちながらも、限定的に正1位と同じだけの発言をすることが許されている存在こそ、やがてはシリアも担うことになる『知の者』なのである
そういった意味ではシリアもやがてはあの王弟よりも上の立場となることがほぼ決定していたようなものではあるのだが、現時点では自分の身を守る盾にはなってくれそうもない上、むしろ今後も余計な軋轢を生みかねないだけと思えば気は重くなる一方だ
とはいえ、シリアの知る2人の人物のうち、好々爺然とした自らの先達ならばおそらくはこの状況をどうにかしてくれそうな気がした
噂によれば義に厚い人格者だとも聞くし、少なくとも自身の後継とする人物を見捨てるような真似はしないだろうとも信じたい
もしそうでなかったとしても自身に利用価値がある間には手放されはしないはずだなどと勘案している自分に苦笑しつつも、たとえその身に利用価値がなかったとしても絶対に力になってくれるであろうもう1つの例外について思いを巡らせた
シリアはその人物をよく知っている
物心の付くよりも前から深く深く知っている
この国に名高い英雄であり、陛下の腹心としても覚えめでたくこの国の歴史でただひとりその称号を許された"聖騎士"
たかだか地方中流貴族の次男坊であったはずの彼は、本来であれば国王妃と同じ正2位の位を与えられていた
いくら功績を立てたからだとはいえ、彼が現在国のNo.2として見られているのは、その称号とともにまさにこの王国内でーーその位以外の一切の権利を持たぬ知の者を除きーー2番目に高い位階を与えられているからに他ならない
当然、王弟陛下にその言動を諫め、かの聖騎士卿の人物像からは離れるものの、叱責または責任を追及することでさえ行うことができる正当な権利を持ち合わせている
そしてそんな彼であればまず間違いなく、たとえそれが他国の人間であったとしても助けようとするだろう人物だということもシリアは昔からよく知っていた
あまり身内贔屓などをされることは好まないシリアではあったが、今回ばかりは相手が相手
それに、さすがにそんなことを言っている場合でもなさそうである
たかが中流貴族の田舎娘だとは言えど、現在は国から賓客として迎えられている身
たとえ王族相手でも、いやむしろそれが王族の手によって害されてしまうようなことがあれば、王家はもとより現在自分の後ろ盾になっているであろう人々の面目を潰してしまい、それによって各所に軋轢を生んでしまいかねないというのをシリアはよく理解していたのだ




