ⅩⅧ
「正直に申し上げればその礼賛的内容のほとんどを疑っていたのですが、どうやら得てして現実とやらは創作物よりも時に創作物然としてしまうらしいようですね」
「な……ななななんで……!」
あまりにも余裕のなくなったシリアは叫び声にも近いほど大きな声になってしまうが、紫の髪の男はさして動じる様子もない
「知らなかったのですか? あれは近頃ここ王都で上演されていることもあるのですよ? 人気な演目であるとも聞きます」
「えっ……ええっ!?」
自分の知らない情報に思わずそんな声を上げてしまえば、話を聞いていたギルマンは「わしも1度見たが、たしかにいい芝居だったのう」などと楽しそうに言ってのけた
「私も1度。座長はまだ若いですが、彼女の領の出身で実体験も含まれているのだとか」
「となってくれば今度は確度の高い情報として見てもいいというわけじゃな」
「ええ。相違ないかと」
世にも名高い知の者たちの間で淡々と交わされる自分を題材にした会話にシリアも今度ばかりはすぐにでも地に伏してしまいたい気分だったが、どうにか心を落ち着けるためにと少し温くなってしまった紅茶を口へと運ぶ
かなり上等ーーというよりもおそらくは王国内でも最上級のものだと思われるそれはカップに注がれてから少々時間が経ってもなお香り高く、シリアは少しずつ肩の力が解れていくのを感じた
とはいえそんなに早く顔の熱りが引くでもなく、多少紅潮した頬のままお代わりを注ごうとする青年の従者にやんわりと断っていると、どうやら何か話が纏まったらしくやがてギルマンが「では、承認じゃな」と呟き、アイゼルが「異論ありません」と続く
シリアは話についていけてない自分は口を挟むべきではないだろうと思い精神を鎮めることに集中していたのだが、学問の頂点たる2人とこの国の頂点である青年の視線が再びこちらへ向けられたことに気付き、小さく肩を窄めーー、
「それでは規定に則りギルマン、アイゼル現行2名以上の承認を得たことにより
この者、シリアノル・エル・リスクラッドをギルマン・ラルセトスの後継とし、知の者の称号を与えるものとする」
そうして金色の髪を持つ青年が澄んだ声で告げたその内容にーー、
「え……ええええぇぇええええ!?!?!?!?」
シリアは間違いなく今日1番の驚愕の叫びをあげた




