ⅩⅥ
「ふむ、それではわしからも1つよろしいかな?」
「は……はい」
「ほっほ。そんなに緊張せんでも、こんなところにいるのはただのじじいのような
のらしいからのう」
ギルマンは先の金色の青年の言葉をなぞりつつ、まるで孫に言い聞かせるように朗らかに告げる
「なに、大したことじゃないわい。ちょうどここまで来る途中で耳に挟んでの
どうやらお嬢さんは城まで徒歩で参られたとか」
けれども同じ笑顔であるはずなのに若き王や叔父のそれとは違い、シリアは自分という人間がこの老人にどこか見透かされているような気がしてならなかった
「はい。1度自分の目で王都を見て回りたかったので」
故にシリアは正直に答える
彼女は自分がこれから住み働くことになる都市を、そこにいる人々のことを知りたかった
だからこそ彼女は護衛役にひとりだけ連れていたリスクラッド家の従士を入国前にここまででいいと帰したのである
当の従士ももうそんな彼女の性分は知ってのことか文句の1つも言わずに彼女を送り出してくれていた
「ほほう。それはまた」
「……王都まではどのように?」
興味深そうに目を細めて頷くギルマン
気の抜けないままにその様子を見ていると今度は金色の青年より尋ねられる
「せっかくでしたしほとんどの道程は街道沿いを乗合馬車で、中継の村が近いときには歩いたこともあります
やはりこちらも1度自分の目で確認しておきたかったですし」
「確認をするだけなら家の馬車でという手もあったのでは?」
次いだその問いに、シリアはいいえと小さく首を横に振る
「旅をするのは楽しいじゃないですか
自分が今まで見た事ないものに触れ、聞いたことのないものを聞く
それがただただ好きなんです
それにーー、」
笑顔で答えつつも思い浮かぶのは自分がまだ幼い時、薬の匂いの染み渡るそこで優しく微笑みながら頭を撫でてくれた弱々しくも大きな手
大好きだった自分と同じ色の暖かな瞳
「亡くなった父の教えなんです
民たちと同じ目線で見て、同じように歩かなければ正しく彼らを理解することは出来ないって」




