ⅩⅣ
「あ、いえ、あの、その……はい」
合わせるように会釈を返すシリアだが、やはり身分も実年齢も自身より上の相手に姉などと呼ばれるのは少しむず痒かったようである
どのような表情を浮かべていれば良いのかもわからずそのまま少しばかり顔を俯かせた
「やっぱり君の言う通り、シリアノル嬢はとても優秀な人物で間違いないねファーレイン」
「もちろんです。シリアより優れたご婦人など早々おりません」
するとおそらくは背後でずっと壁際に控えていたのであろう、自身の叔父の自慢気な声が聞こえて来た
今にでも顔を両手で覆って蹲りたい気分になってしまうシリアだが、なんとか表情を保ったまま堪えていると金色の青年ーージーウェインはその両の眼でその顔を覗き込んでくる
「姉上。不出来な弟には非常に残念なことに姉上が先程述べられた塩梅とやらを見極める目が欠けていてね。ぜひまたこうやって姉上のお話をお聞かせ願えないだろうか?」
「え、私がですか……?」
「もちろん。……姉上さえよければ、だけど」
「そ、それは構いませんが……」
少し申し訳なさそうに眉根を下げる青年に慌ててそう返してしまえば、彼は先程までの表情がまるで演技であったかのようににっこりと微笑んだ
「だそうだよギルマン」
「……ふぇ?」
自分や叔父とは違う方向へと投げられた言葉によくわからない声が漏れてしまう
一体いつからそこに、などと疑問符を浮かべながらシリアがそちらに目をやると、春に咲く花のような淡い紫色のローブを身に纏いソファに腰掛けている2人の男の姿があった
「これはこれは、利発そうな娘さんじゃのう」
ひとりは先程青年にギルマンと呼ばれたであろう好々爺然とした禿頭の老人
目線の高さはシリアとほぼ変わらないのだが、見た目の年齢の割に腰などは曲がらずに伸びており、どこか快活さも感じさせる
対し、もうひとりの男はすらっとした長身であり聖騎士卿とほぼ変わらない歳の頃
整った面立ちと切れ長な瞳がどこか冷たい印象を与える美丈夫で、ローブよりも色味が濃い紫の髪を後ろでひとつに括っていた
またもや叫び出したくなる自分をシリアは必死に宥める
男たちとは初対面ではあったものの、彼らが身に纏うその衣の意味も、この男たちのことについてもシリアはよく知っていたのだ




