ⅩⅠ
最初は既得権益者ーーつまりはこの国の上層部を占めていたような上流貴族たちだ
名だたる公爵家や侯爵家、一部伯爵家やその寄子となっていた騎士家系の者たちそういった者たちが前国王陛下が体調を崩された際、王太子排斥を求めてデリラ妃亡き後に後妻となっていた第2妃、ヘルメトラの下へと集まった
幸か不幸かヘルメトラ妃との間にも子が生まれていたこともある
アルベルト・ハイルノート・アルト・エルフェンリート
歳の頃は兄であるジーウェインと変わらず、しかし才覚はなにひとつとっても兄に及ぶところはなかったのだという彼を旗印としてそれは起こったのだ
後に「ドロミスの悲劇」と呼ばれることになるクーデター
近衛騎士としてヘルメトラ妃側の手の者に囲まれた王太子を救い出し、これを鎮圧することに成功した人物こそがかの聖騎士卿、ファーレイン・ミシアス・リスクラッドに他ならない
事件に加担した者のほとんどが王城で息絶え、また生き残った者も大半が投獄となり廃嫡あるいはお家断絶とされたその出来事であったが、首謀者であったヘルメトラ妃は行方をくらませており事件から8年もの月日が過ぎた今もなお足取りが掴めていない
またほぼ軟禁に近い状態で自室に閉じ込められていたアルベルト王子には王位簒奪の意思などなく、ただ妃に利用されていただけだったために一切の処罰はなかった
結果的に対抗勢力を一掃し、11歳にして即位
王宮内を掌握するに至った王太子とその騎士だったが、有力貴族たちの抜けた穴も、彼らが自領で重税を科すなど民を虐げていた爪痕も決して小さなものではなかった
このまま国が混乱に陥れば次は国外と争わねばならなくなる
そんな危機感とともに建て直しと改革を図る彼らだったが、そこでもまた反対の声を聞くことになる
それを発したのは他ならない一部の民達ーー特に稼ぎの少ない肉体労働者たちだった
誰かに従うのは楽なのだ
彼らは何も考えずにただ日々を生き、そしてその暮らしにただ不満を漏らせば良い
彼らが望んでいるのはただ楽をすることであり、民の自立を求める若き王の理想とは真っ向から対立をしていたのである
そうして国の助けを受けながらも、国のことを嫌っていた彼らは時に暴徒化することもあり、それを鎮めるために騎士団が動くことさえあった
しかしあくまでも目的は騒動の沈静化であり、民の粛清などは決して是とはしていないために、完全な解決には時間がかかってしまっているようだ




