Ⅸ
本当にわけがわからなかった
つまり対面で、シリアに自身を評せというわけである
陛下に対してのことを軽々しく口にするだけでも不敬がすぎるというのにましてやその批評
相手が相手であれば処罰の対象となってもおかしくないものであるのだということをシリアはよく知っていた
ーームリっ! さすがにそれはムリ!!
「……私はそのようなことを申し上げても良い立場では……」
「学術的な問ですよ姉上」
言葉尻を濁しつつも絞り出すように否定の言葉を述べるが、青年は優しげに目を細めたままにこやかな笑顔を絶やさない
「それにあくまで姉弟子と弟弟子との会話、身分や立場など何を憚ることがありましょう。後世の歴史家が語るようにこの時代というものを遥か空の彼方から見た時、姉上にはどう見えているのかをお伝えいただきたいのです」
そしてシリアとしてもそこまで言われてしまえばこれ以上は引き下がるわけにもいかない
彼女を見つめる青紫の瞳はどこまでも真っ直ぐでお世辞のようなものは到底望まれてはいないのだろうことはよくわかった
そういう耳にいいだけの気遣いなんてもう嫌というほど聞いて、聞き飽きているだろうし、だからこそ忌憚なく意見を求めるためにこうやって非公式の場を設けようとしたに違いないのだ
「わかりました……あくまで私ごときの見立てに過ぎませんが」
ようやく決心をしたシリアはそう前置きをしてから青年の目を見つめ返し、一息で「陛下が知らしめる御世は、まず、間違いなく安定した時代ではありません」と言いきった




