Ⅷ
「実は私は近頃ファーレインに色々と教わる機会があってね。そういった意味では私と君は同じ学問の師を持つ姉弟弟子にあたるわけだ。そこで」
まっすぐシリアの目を見つめながら話す金色の青年
その目を見つめ返す方がいいのかそれとも目を合わせるべきではないのか、どちらの方がより不敬になってしまうのかとそわそわしつつも、シリアは彼から目を離せなくなってしまう
「どうだろうか、姉上。どうかこの至らない弟に優秀な姉上からいくつかご教授いただけないだろうか?」
自分の口が開きそうになるのに気づき、慌てて顔の筋肉に力を入れることでどうにか表情を取り繕うことには成功したものの、彼女の頭は明らかに混乱していた
ーーご教授……!? な、なんでっ!?
ほんとに一体何を言ったのファルにーさま!?!?
そもそもいくら記憶力に優れているとはいえ自分などただの地方中流貴族
こんな私が歴代屈指の名君だと名高い陛下に何かをお伝えすることなどできるのだろうか、などとそんなことを考え不安になる彼女だが、もちろんそんな身分であるからこそ、この青年の頼みを断れるはずもないのであってーー、
「はい……私のお答えできることであればよいのですが……」
決して噛んだり声が震えたりしないように強く意識しながらどうにかそれだけを返せば、彼は大丈夫。優秀な姉上にはきっととても簡単なことだろうから、と微笑とともに返してくる
自分を落ち着かせるためにも小さく深呼吸をしてその問いを待っていると、やがて彼は再び口を開いた
「さて、そうだな、まず姉上から見て、今のこの国はどう見える?」
脳に酸素を取り込みどうにか気を落ち着かせたシリアは、彼の言葉に人差し指を唇にあて軽く首を捻る
国のこととひとくちに言ってもその意味は多岐に渡るだろう
人口や景気、流行、食糧事情、気候、災害、周辺諸国との関係や貿易、
役人や貴族、政治の仕組み、税や使い道……など項目を上げていけばキリがない
「申し訳ありません。あまりにも含意が広すぎて……」
自分にはわかりかねます……とそう素直に告げようとすると
「じゃあそうだね。今のこの国の王の治世についてにしようか、姉上はどう思う?」
「……はい?」
やはりなんでもないことのようにそう尋ねられ、今度こそ気の抜けた声が出てしまった




