Ⅵ
部屋の中の様子は外から眺めた通りの極めて一般的なものだと言えた
広さもまあそこそこで調度品もそれなり、だがおそらくは実用性にこだわり抜かれたものだというのがシリアのそれまでの知識から理解できる
その部屋には彼女とその叔父の他に数人の姿があった
しかし全員の顔や服装などを確認する暇もなく、ただその部屋の中央に立っていた人物が目に入るとすぐにシリアは叔父の手を離し、その場で片膝を床につけた
いや、正確に表現するならばこう言った方がいいだろう
その姿を確認するや否や彼女は跪き、そのまま頭を垂れた
それはもちろんこの国における最上級の敬礼に他ならない
それもそのはず、先程の声の主らしきその青年の髪は金糸を織ったのではないかと疑いたくなるほどの透き通った金色であり、
その瞳はどこまでも続く水底を思わせるような知性を感じさせる深い青紫
それは誰がどう見ても、まず間違いなく王家の色
では彼が王家に連なる中で、どんな人物なのかなどというのはもう尋ねる必要もなかった
ーー聖騎士卿であるファルにーさまが忠節を尽くすのは、それこそ私に入城の許可を出せるような人物だっていうことで……
『変革王』ジーウェイン・ガイウス・フォン・エルフェンリート
まさに前国王陛下が亡くなった後に若くして即位し、歴代王家の中でも飛び抜けて優秀な頭脳と才覚を持って辣腕を奮う稀代の賢王に違いなかった
ーー説明もなしにいきなりなんてお方の前に連れてきてるのファルにーさま……!
彼女は心の中でこの場へと誘った自身の叔父を責め立てる
ーーせめて……せめて少しの心の準備ぐらいはさせてくれても……!
けれど、そんな少女の胸中など伝わるわけもなく、その正面に立っていた青年はなんでもないことのように「どうしたの?」と言った
どうしたもこうしたもないのだ
ただの中流貴族がその御姿を無遠慮に目にし、直答を許されるわけもない
ーーファルにーさまのばかぁあぁぁ
答えるにも答えられず、彼女は跪いたまま、もう何度目ともなくこころの中で叔父を責め立てていると、やがて青年は小さく笑い声をあげた




