Ⅴ
エルフェンリート城内、執務棟ーー通称『白の館』などと呼ばれ、忙しなく官吏や上級役人たちが行き交う、王の居城からは少し離れているらしいそこをシリアはその叔父であるファーレインのエスコートを受けながら歩いていた
どうやら聖騎士卿は王宮内でもかなり親しまれているようで、彼らは皆通り過ぎる度に笑顔で一礼していたが、客人であろうシリアをエスコートしていたからか特に話しかけてくる様子はない
聖騎士卿もそれがわかっているのか、特段気にした様子もなく、ただ彼の姪の歩くペースに合わせて手を引きながら「王都まではひとりで来たのか?」「家のみんなは元気か?」などということを訊ねては、彼女が答える度に柔らかな笑顔を浮かべていた
逆にシリアが「これからどこへ行くのか」と尋ねても彼は「着けばわかるよ」と言うだけでそれ以上は何も答えなかったために、彼女は城門を抜けてからはずっと手を引かれるがままに歩き続けている
「着いた。この部屋だよ」
そうして彼がようやく立ち止まったのはいくつかの会議室や執務室が立ち並んでいるらしい区画
閉まっているその部屋の扉もあまり大きなものでもなく、造りも普通で、部屋の大きさや規模もせいぜい10人程度かそこらが使うであろうものなのだということが窺える
着いても全然わからないよ……などと思ってしまうシリアに、聖騎士卿は「ちょっと待ってて」と言って聞かせる
そのまま彼はその扉をしっかりとノックして「ファーレインです」と告げ、すぐに中から「入っていいよ」とまだ歳若い青年のものだと思われる凛として綺麗な声が聞こえてきた
「え……?」
「失礼致します」
わけがわからなくなっているシリアなどお構いなしといった具合に彼は扉を開き、手を引いたままで部屋の中へと足を踏み入れる
そうなればもちろん朱の髪を持つ少女も一緒に入らざるを得ないわけで、彼女は戦々恐々といった具合にその後に続いた
そっと後ろ手に扉を閉めてからシリアは部屋の中を見回す
彼女にしてみればさっきまでは閉まっていたのだから、そうしておいた方がいい気がしたというだけなのだけれど、結果的に言えばそれは大正解だった




