Ⅲ
なんとなくだが、たぶん聞いてはいけないことなのだということは幼い私にもよくわかった
だからこそ、以降の私はもう彼に何かを尋ねることはしなくなった
……大好きなファルにーさまの悲しそうな顔は見たくなかったから
ちょうどその頃には徐々に忙しくなりだんだんと会えなくなる彼の代わりにと私は知識を得るために本を読むようになっていたのもある
当時の王太子である現国王陛下の近衛騎士となった叔父はそのことを聞いてたくさんの高価な本を送ってくれた
けれど、その中にはどこにもあの鳥のことは載っていなかったし、アルトローネという言葉の意味も見つけることができなかった
そうこうしているうちに父が亡くなった
現国王陛下である当時の王太子殿下の指導の元に行われた改革のおかげで幼い少女である私がリスクラッド家の当主となることが認められ、私はメイフェルベリーの地を受け継いだものの……右も左もわからず、ただ領民の暮らしを守りたいーー父や、叔父や、自分を育ててくれたリスクラッドの家のみんな、そしてメイフェルベリー領を支えてくれる領民たちに報いたいという、ただただその想いだけでいっぱいだった
結論として、ファルにーさまや本から身につけた知識はかなり役に立った
特に優れたところのないと思っていた私なのだけど、生来記憶力だけは他人よりも優れたものであったらしい
1度覚えたことについては2度とわすれることがなく、何か問題に直面することがある度にさまざまな知識がするすると湧いて出てきてはその解決を助けてくれた
それでも後悔がないわけじゃない
街道の整備など大きな改革を行うにあたり過去の私が一生懸命働いたのは間違いなく事実なのだけれど、今の私から見れば当時は視野が狭く、ひどく短絡的かつ浅慮であり、きちんと結果が見えていなかった
それでもなお領民の暮らしが昔よりも良くなっていったのはきっとみんながいたからだ
みんながメイフェルベリー領のために協力してくれたからだ
それは私の力不足であるというのと同時にとても誇らしいことでもある
そんな事実が私のこころには強く残った
この想いを忘れてはならない
私は自分の記憶力にも感謝した
だって私の記憶力であればきっと、何があったとしてもそれを忘れることはないだろうから




