Ⅰ
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“知りたい”
ただそんなに根源的な感情に、欲求に自分が突き動かされているのだと気が付いたのは一体いつの事だろうか?
『知恵の実は大いなる愛によって育まれ、衝動的な好奇心によって地に落ちる』
はるか海の向こうにある東の国には若者を諌めるための言葉としてこんなものがあるらしい
けれど、シリアノルという少女が何かをしたいと思う原動力はいつもだいたいこの“何かを知りたい”という短絡的なまでの好奇心だった
私には母がいない
というよりも母がいたという記憶が無いと言った方が正しいのかもしれない
私が生まれてすぐの頃、物心がつく前に流行り病で亡くなったのだという
小さいながらも領地を持ち、民の生活を守るためにと尽力した父も、その病によって身体を弱くしてしまい、常に寝たきりの生活となっていた
私が覚えている父との会話も、ほとんどがベッドの上でのものなのも当然の話だ
だからだろうか
私は叔父とリスクラッド家に仕えてくれる人たちによって育てられたのだけれど、そこには何ひとつの不満もなかった
『救国の騎士』“聖騎士卿” ファーレイン・ミシアス・リスクラッド
今でこそエルフェンリート王国にこの人ありなんて言われて芝居にもなって民からも愛されているそんな人なのだけど、あの頃はまだ騎士になったばかりで、暇さえあれば私に逢いに来てくれて、そして実の妹や自分の娘であるかのように慈しみ、愛してくれた
私自身もそんな叔父が大好きで『ファルにーさま』なんて呼んで慕っていた
叔父が遊びに来てくれる安息日が近付くというだけでにこにこと、それはもう目に見えて上機嫌になり、ようやく会えたとなれば常に引っ付いて離れなかったほどだという
今考えればとても恥ずかしい思い出なのだけど、掃除婦のメリダはよく「あの頃のお嬢さまは大変愛らしくて……」なんて言ってくる
愛されてるのはわかるんだけど、本当にやめてほしい……




