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シリアの笑顔と感謝に思わず息を飲んだ衛兵たちを眺めてから、彼女の叔父はさて、と声をかけ再びその手を差し出す
「シリア。今度こそもういいかな?」
「はい。閣下」
こほん、と小さく咳払いをしてまた貴族然とした笑みを浮かべつつ、自身の手を取ったシリアに今度ばかりはファーレインも苦笑いを浮かべた
「もうそれいい加減やめようよシリア。むず痒くなってきちゃうから」
「……では叔父さまがいいですか?」
「うん、そっちでお願い。本当は前みたいにファルにーさまって呼んで欲しいんだけど……」
「それは子どもっぽいのでダメです。私はもう淑女なので」
「え〜、残念だなぁ。シリアはいつまで経っても愛しのシリアなのに」
そうして仲の良さそうな会話をしながら自分たちに目だけで礼をして通り過ぎていく彼女たちを衛兵たちは何も言えないままに目で追う
ひとりだけ結婚しており、娘を持っていた長の男は今度こそ聖騎士卿という人物の胸中が理解出来た気がしていた
なるほど、たしかにあんな姪御がいるのだとすれば全力で愛でてしまうのも仕方のないことだろう
「……まさに『清処女』さまだな」
先ほど自分たちへと向けられた言葉と笑みを思い出しながら、兵士たちはただ彼らの去りゆく後ろ姿を見送るのだった
ーーちなみに、
これは余談なのだが、かの聖騎士卿ファーレインは貴族たち社交界においてとてつもないまでの、度を越した姪煩悩であることが知れ渡っており、自身のことよりも愛しい姪に手をかけようとしすぎる結果、彼自身はおろかその愛しの姪の婚姻が疎かになっているなどということは、平民出身の衛兵である彼らは全くもってこれっぽっちも知る由がなかったのであった
1.朱の髪を持つ少女 終
2.知の者 始




