ⅩⅦ
「閣下。少しばかり失礼致します」
シリアは聖騎士卿に引かれていた手を解くと、懐から紐でくくられて丸められた一枚の書状を取り出し、衛兵の長へと差し出した
「こちらを」
「……失礼します」
何らかの入城許可証であるのだろうか
そう思い書状を改めた男は、「この者の入城を許可する」という文言とともにその中に書かれた署名とその御印に目を見開いた
「なっ……」
書かれている署名は連座であったが、2人目は聖騎士卿のもの
それ自体はこうして直々に迎えに来るほどの間柄である以上は疑いようもないだろう
……いや、しかし問題なのは聖騎士卿たる彼の名が2つ目なのだということである
書状を開いてまず目に入ったのは王家の紋章
そしてその次にジーウェイン・ガイウス・フォン・エルフェンリートの御名と御印
ーーつまりは現国王陛下のものであったからだ
男は何度もその書状を見つめる
門番を務めている男たちはその書状の真贋を見極める目に優れている
というよりも、間者や国に害を成すものを通すわけにはいかない立場にいる以上、その書状が本物であるかどうかを見極める能力がなければ門番や関所の長としては決して認められないのである
もちろんこの場にいる彼もその例外ではなく王家の紋章や各王族の筆跡、そして彼ら王族が生まれた(あるいは嫁いだ)時に与えられる、彼ら個人を指して表す御印についても漏れなく記憶していた
しかし、穴が空くほど見つめ返しても、その書状に書かれているものはまず間違いなく陛下の直筆と正式な御印に違いないとしか思えなかった
あまりにも畏れ多く手が震え出す男が顔を上げ少女に向き直ると、彼女は左手を軽く握り心の臓の前に手を当てながら軽く頭を下げた
それは間違いなくエルフェンリート王国における貴族や騎士の行う一礼のそれである
「メイフェルベリー領領主にしてリスクラッド子爵家当主シリアノル・エル・リスクラッド
偉大なる国王陛下並びに我が叔父、聖騎士卿ファーレイン・ミシアス・リスクラッドの命により参上仕りました
入場の許可を頂きたく存じます」




