ⅩⅥ
「そ、そう……っすね。ありがとうございます」
「いえ。こちらこそキルカを好きになっていただいて、ありがとうございます」
ようやく落ち着きを取り戻しそうになったところに正面から屈託のない笑みを向けられたことで彼は再び顔を紅潮させ、全身が石になってしまったかのように硬直した
「……さて、そろそろいいかな?」
そんな彼に助け舟を出したのは先輩の衛兵ではなく、にこやかに微笑んだままにそのやり取りを眺めていた聖騎士卿
彼は少しだけ申し訳なさそうに眉根を下げるとシリアの手を取る
「ごめんねシリア。色々と予定があるからあんまりゆっくりは出来ないんだ」
「それは、大変失礼致しました」
「うん。ごめんね。じゃあ着いてきてくれるかい?」
そうして彼女の了承とも取れる返答を得、とても自然にエスコートをする姿勢になってから衛兵の長へと視線を投げる
「いいよね?」
「はっ。もちろんです」
シリアが通っても構わないかという確認であろうそれに、厳つい顔の男は即座に姿勢を正して返答する
騎士団長かつ聖騎士卿が身元を保証する人物であれば疑う余地もなくーー、
また国のNo.2のみならず王城どころか王都全ての安全を司る者の言葉に、一介の衛兵が否を唱えられるはずもない
そんな当然とも言える男たちの会話に誰も疑問を抱くものはいないし、否定をする者がいるわけもなかった
「いえ、いけません」
ーーただひとり、朱の髪を持つ少女を除いては
「……どうしてだい?」
思わず、といった具合に首を傾げたファーレイン
彼はとても不思議といった具合に隣に立つ少女の顔を覗き込む
「私はこれでも騎士団長を務めているし、責任者の立場なんだよ?」
「なればこそ、です。閣下はその立場ゆえに他の者の模範として正しき道をその行いで示さねばなりません」
彼女は先程までと変わらない笑顔を浮かべたままーー、
しかし毅然とした態度でそうきっぱりと言ってのけた




