ⅩⅠ
エルフェンリート王国において、騎士は叙勲とともに準男爵位が与えられる
いかに準男爵と言えどそれが貴族であることに変わりはない
すなわち騎士とは称号であると同時に爵位でもあるとも言えるわけだ
当然、国に忠誠を誓い研鑽を積めば誰しもがなれるなどというものではない
たゆまぬ努力を積み重ね、人格や実力を認められたごく一部の者だけが騎士になることを許される狭き門なのだ
要はエリートの中のエリートだということであり、ただの騎士であったとしても一般の平民上がりの兵士からすれば雲の上の存在だと言えるだろう
だというのにその騎士たちを束ねる騎士団長であり、「騎士の中の騎士」だというこの国でただひとり「聖騎士」の称号を与えられたファーレインに向けられる敬意ともなれば、もはや王族にも匹敵するほどのものであった
しかし彼らはそんなお方がなぜ、とは決して口に出さない
とても嬉しそうに少女へと歩み寄るまだ若き騎士団長の姿から、彼がこの少女をとても懇意にしており、堪えきれずに自ら足を運んだということは明白だったからだ
なるほどたしかに美しい少女だ
宵闇を切り裂くような艶やかな朱の髪に温かみのある白玉のような肌
身に纏う服もとても上品にしつらえたものであり、彼女の魅力をより一層引き立てているようだった
王都に住まう貴族のご令嬢は好まないそれらだが、たしかにこのセンスのよさそうな聖騎士卿が少女に見立てたものだと言うのならば合点がいく
であるならば、この逢瀬は決して口外してはならないものであるというのは衛兵たちからすれば自明の理
聖騎士卿は妻を持たない
その理由はとうてい彼らのようなただの衛兵には推し量れるようなことではなかったが、おそらくは身分違いなど何らかの事情があって一緒になれないこの少女のために操を立てているのだと衛兵たちは推測したのだ
この裏門を預かる厳つい顔をした衛兵の長は、なるほど閣下は男の中の男であるのだと心の中で唸った




