10/80
Ⅹ
「シリア……!」
と、そんな風に思っていた彼らの後ろから嬉しそうなまだ若い落ち着いた男の声が投げられた
そうしてその声の主を確かめようと振り返った衛兵たちは……いや、シリアと本人を除くその声の主を確認した全員が硬直した
そこに居たのは整った顔立ちに柔和な笑みを浮かべた背の高い男
決して大男というわけではないが、よく鍛えられた身体に近衛騎士団に所属するものの証である団服のと、あまり華美に光らないようにと釉を塗った白銀の鎧を纏っている
歳の数は30にも満たないものの、曲者揃いの王城で一際大きな存在感を放つその人物の名を知らない者はこの城に、いや、この国にはいないと言っても過言ではなかった
「せ、聖騎士卿閣下……!」
聖騎士卿ーーファーレイン・ミシアス・リスクラッド
地方中流貴族の生まれながらも数々の功績を打ち立て騎士団長に就任後、国内で王位継承権争いが起こった際には現国王陛下の後見役となり即位を助け、陛下が直々に聞こしめす現在ではその片腕や腹心であると言っても過言ではない人物
正にこの国のNo.2であり、エルフェンリート王国にかの者ありと他国にまで知れ渡った英傑でもある
そんな人物が、わざわざ下級使用人用の通用路にまで足を運んでいるという事実だけで平民の出である衛兵たちは頭が下がりそうになった




