↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マッチポンプで世界が変わる!?  作者: オーメル


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

238/304

謳わせてくれ、人類賛歌を!

「今見ている者達に言わせてもらう。 お前達の行っている行動は、あまりにも見苦しい」


 真剣な顔で告げる言葉には明確な棘が含まれている。

 誤解であるとも、勘違いであるとも認識させない断定の口調は公の場で使うにはあまりにも危険だ。ただでさえ大炎上が起きているとも言える状況で、バゼルの発言は油を注ぐようなもの。


「あらゆる垣根を越えた組織構築が困難を極めるのは誰とて理解しているものだ。 それが本当に叶う確率など極々低いもの。 態々罵倒されずとも解っている。 ――であればこそ、何の為にお前達は汚物を撒き散らすのだ」


 バゼルの言葉には問いも含まれている。

 勇気を持って発表した者を、どうして見ているだけの観客風情が罵倒する。これがただの意見や指摘であればまだ納得出来るものがあるが、コメント欄で垂れ流される罵倒には何の建設的な意見も無い。

 そんなに嫌ならば何もせずに無視を決め込めば良いだろうに。稚拙な言葉を垂れ流している時点で自分の質が悪く見られているとどうして考えない。

 よく考えずとも不思議な話ではある。人は合理的には動けない人間であるとはいえ、あまり自分の悪い面を見せたがらない種だ。

 であるからこそ自分の悪い面を敢えて出すことで注目を集めるテクニックがあるが、そんな真似をしようと思える人間など一握り。

 行き過ぎれば犯罪にまで発展する以上、やはり良い面だけを晒して生きていきたいと思うものだ。


「例えばとある競技の大会に出場する選手が居たとしよう。 その人物は努力家で、性格的にも問題は無い。 技術も一競技者としてなんら不足も無く、そんな選手が目標として世界の頂点を取ると語った。 ――何か問題があるか?」


 爆増する文句に問いを投げ掛けると、コメント欄を書き込む側は殆どの者が大言壮語だと思いはするが問題は無いと告げる。

 その言葉にバゼルも同意するように首を縦に振った。


「そうだとも。 夢など総じて大言壮語。 遠い未来に希望があると思うからこそ出て来る願望だ。 それはどれだけ小さいと言われる夢であっても変わりはしない。 ……それが解っていて、何故嘲笑を送る?」


 素晴らしい異性と結婚し、幸福な家庭を築きたい。

 そんな夢でも十分に夢だ。誰に否定される理由も無い、素晴らしき目標だろう。人生の目的と表現しても過言ではない。

 ならば、それと今回の話に何か大きな違いがあるというのか。

 共に協力し合い、巨悪に立ち向かう。今を生きる者達を双方で支え、少しでも明るい未来を将来に渡って残し続けよう。

 遥か壮大な、やはり大言と言われても何も返せぬ目標だ。一人間の生涯だけでは足りぬ時間が求められるだろう。


 道中にも障害が立ち塞がり続ける。様々な悪人が目標を叶えようとする人間から利益を奪おうとし、人類同士の争いになる出来事も一度や二度では済まされない。

 けれど、その志は間違いなく尊いものだ。

 現代では既に廃れたと呼んでも過言ではない輝きを、渡辺社長は確かに放っている。そこにはヴェルサスの影響が多分にあるのだろうが、重要なのは己で最後に決断した事実のみ。

 発端は蓮司達だった。それを良しと進めたのはレッド達だった。だが最後にそれを民間組織であるフォートレスで運用しようと決意したのは、間違いなく彼だ。

 

「素晴らしい夢じゃないか。 実に応援したいものではないか。 彼の為ならば、我々の力などいくらでも貸してやろう。 それだけの意思の強さを彼は持っている」


 現に渡辺社長は折れていない。子供組の必死な×マークから罵倒や否定の言葉が多く来ていることを察して、それでも堂々たる姿で今も立っている。

 レッドから見ても彼は素晴らしい人間だ。応援すべきと思うに相応しい、中々現代では生き辛い人間なのだろう。

 故に、否定も拒絶もさせはしない。その輝きを守る為、その意思を守る為、バゼルは己の本性を世界に晒す。

 

「心が貧しくなった。 世界の経済が善を否定している。 まともなままでは生きられぬし、他者を陥れねば上は目指せない。 成程それは理解出来よう。 しかし同時に、酷く醜い。 進歩など無い人生に一体どんな潤いがあるというのか」


 世間が苦しいと、人々は常識として語る。

 実際問題その通りであるし、中々脱却も難しいのも事実。誰しもが異なる理由で苦しみを抱え、何者かも解らぬ他人に愚痴を零す日々だ。

 仮にそこから上を目指すにせよ、今度は余計に人の醜さを見ることになる。失望に失望を重ね、世の中とはこんなものだとやがて諦めるのだ。 

 ――それを全て、バゼルは醜いと切って捨てた。

 苦しみを抱えるのなら解放に向けて努力しろ。脱却が難しいのは自分がそう思っているからだけであり、人の醜さに失望を覚えるのならば反面教師として逆に人々の前で輝いてみせろ。

 

 努力は将来を確約するものではないが、積み上げた事実は確かな力となる。それがどんな形で花開くかは定かではないとしても、少なくとも後ろを振り返れば痕跡があるのだ。

 重要なのは、失敗を積み重ねることが出来る場だ。いくらでも挑戦の機会があるからこそ、花は咲き誇るチャンスを無数に手に出来る。

 今の日本にそんな余裕は無い。元々の不況に怪獣という大打撃を受け、貧乏国家への道を直進している。

 一番の原因がヴェルサスであるのは誰も知らぬが、だからこそ最初の引き金を押したレッドは責任を取りたいとも思っていた。

 自分の所為で楽しむだけの余裕が喪失している。これでは自分が死んだ後、世界の不幸は加速度的に増加するだろう。


「不満を吐く口で自分の夢を語ろうとは思わないか。 文句を書く指で自分だけの物語を描こうとは思わないか。 他者の悪い所だけを探す目で誰かの長所を見ようとは思わないか」


 人は生まれた時点で悪性を持っていると語る人間が居る。

 同時に、人は生まれた時点で善性を持っていると語る人間も居る。

 どちらが正しいのかなど誰にも解らない。無垢に色など識別出来ないのだから、どちらが最初であるのかなど論じたところで意味は無い。

 ただ、人は両方の特性を有している。

 悪にも善にもなれるのが人だ。ならばその悪を、今一度己が善に変えてはみないか。

 始まりは小さいもので良い。他が聞けばなんてことはないような善でも、零から考えれば驚異的な一歩だ。


「怪獣に対抗する組織において、人々の協力は絶対条件と言っても良い。 それが叶わない時点で組織など空中分解するのが関の山だ。 ――今諦めている者よ、今絶望している者よ。 足掻くのであれば我々が手を差し伸ばすことも吝かではない。 人類を助けるのが、我等ヴェルサスの本懐であるのだから」


 そこに居るのは、ヴェルサスのトップとして相応しい男。

 雄々しい益荒男。未来の導として立つ先導者が一人。誰も彼もが、彼があの組織のトップの一人である事実に最早疑問など持ち得ない。

 彼は現実的な問題点の解決を一切口にしていなかった。ただ感情を揺さぶるだけで、それだけでは目の前の問題を解決することは出来ない。

 けれどこれで良いのだとレッドとフローは思う。

 始まりは心震えるナニカ。それが最高潮に達した時、人は自然と行動を開始する。並んだ問題を冷静に見据え、それらを解決する為の努力を計算するのだ。

 

 コメント欄は何時の間にか速度を落としてた。

 あれほど荒れ狂っていた悪意が収まり、流れる言葉には彼を讃えるものが増えている。子供組が確認することも容易な程に流れが落ち着き、けれど見ている人の数は減ってはいない。

 誰も彼もがバゼルに意識を向けていた。――その胸に熱いモノを宿らせて。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。