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マッチポンプで世界が変わる!?  作者: オーメル


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G計画の始まり

 G計画。正式名称は第一次Genesis計画と銘打たれたそれは、始まりと同時に幾つかの案が練り込まれた。

 一つ、怪獣を打倒可能であること。

 二つ、長期戦闘が可能であること。

 三つ、隠密性を保有していること。

 空我を超えることは基本であり、この中には盛り込まれていない。短いながらもフォートレスとヴェルサスが最も求める性能を記し、それに合わせて澪は幾つかの機体を3Dモデルと資料として形にした。

 提出された機体案は三つ。澪ではなく技術班からの提出として見せられた案に、フォートレス社長の渡辺は年甲斐もなく興奮した。


「形状としては操縦システムや民衆からの受け入れ率を加味して全て人型にしてある。 また、件の一号機は多くの人間の目に触れることになる為、デザインもサブカルチャー的要素を敢えて含ませている」


「おお。 だから何処かで見た事があるような姿のものが多いのですね! 下手に挑戦的なものを作るより、受け入れ易さを重視したと」


「ロボットに造詣が浅くとも、何処かで見たことがあるというデジャヴのお蔭で忌避感は幾らか下がるだろう。 だが、内部に関しては此方の自由だ」


 澪の言葉に、社長室で渡辺は何度も首を縦に振る。

 人々を守る正義のロボットとはいえ、いきなり人の前に出てきては警戒されるのが関の山。そのまま恐れられてしまえば如何に人に被害を与えなくとも評価は中々向上しないだろう。

 また、暫くは自衛隊か何処かの国の新型と思われる可能性もある。他国の軍の新型となれば国境を無断で越えたこととなるが、それを表立って叩く人間はあまり出てはこないと澪は考えていた。

 何もせずとも日本を守ってくれるのだ。第二のヴェルサスとして活躍してくれるのであれば、遠くから警戒するだけに留めて後は好きにさせても良い。

 

 その間に件の新型の出現地点を調査、もしくは新型そのものの調査を進めて自国の力にするのが一番今の日本に都合が良い。

 尤も、澪が本気で組んだ機体を再現するのは不可能であるが。

 整備班にも秘密を徹底させ、必要以上に知識を与えないようにしておくことも忘れない。

 自分達がその仕組みを解ってしまえば、万が一裏切った後に別の組織に入っても機体を再現することが出来る。彼等整備班の知識と経験は国家の宝となり、大いにロボットの兵器化を加速させるだろう。

 そんな真似をさせない為にも、原理は不明だが整備方法だけは解るという形に抑えたいのである。


「そちらの要請は理解しました。 ですが、ヴェルサスから裏切者が出た場合はどうするのですか?」


「そうなった場合は此方で処分する。 私を、いやレッドを裏切った者は総じて殺害だ。 情報漏洩の確認の後、迅速に切り捨てるので問題無い」


 フォートレス側からの情報漏洩を避ける理由については渡辺も理解している。そして、ヴェルサス側の対処についても彼女であれば納得出来てしまうことだ。

 特にフローであれば邪魔者は全て殺害を前提にしている。更生することも、罰を与えることも許さず、要らぬと滅却するのだ。

 冷たく容赦が無いのは常と変わらないと渡辺は内心溜息を吐くものの、それを表に出すことはしない。

 触れてはならぬ地雷は誰だって触れたくはない。スルー出来るのであればそれで十分だと、彼女の対応に頷く以外になかった。

 

「で、デザインについては文句は無いか? 無ければこのまま三機を作って人気の無い場所で稼働実験を行うが」


「勿論ですとも。 否など言おう筈がありません。 パイロットについても先にシミュレーターを提供してもらったお蔭で恙無く育成が進んでおります。 このまま余計な邪魔が入る前に、一直線で完成させてしまいましょう!」


「……それについては私も同意だ。 よろしい、ではこれで失礼する」


 白いパーカーを翻し、彼女はそのまま退室する。

 彼女の足音が遠くまで移動するまでにこやかな表情を保ち、次いで本音の部分である疲れた顔を表に出した。

 G計画そのものについてであれば楽しいのだが、それを話す相手がフローであるとなると過度な気遣いが必要となる。

 本人は飲み物も菓子類も一切要求せずに手短に用件に入ってくれるので短く済むが、だからといって疲れが溜まらない訳ではない。

 

「こういう時は様子を見に行くか。 仕事も落ち着いているしな」


 工場の生産について問題は無い。

 一月前から予約が始まった商品の販売が始まったので、そちらの売り上げも上々だ。昨今は会社が接触してくる機会も少なく、余程真木との一件を怖がっているのだろう。

 あるいは、身内からの攻撃を恐れて防御に回っているか。

 怪獣も出現せず、政府からちょっかいを受けることもない。極めて平和であり、だからこそこんな日は息抜きをしたくなるものだ。

 気分を高揚させながら居住スペースに進む。途中からは厳重なセキュリティで足を止められるが、彼の場合はカード一枚で突破することが出来る。

 進んだ先にあるのは、真新しい自動開閉ドアだ。此方もドア横にはカードの読み込み部分が存在し、同じカードを読み込ませると簡単に開いた。


「やっているか」


「あ、社長!」


 扉の先には三台の球体上の機械が横一列に設置されていた。

 各機械には人が一人入り、身体を動かしている。近くにはソファに座っている仲間達が居り、その中の一人である鳴滝は渡辺を見た瞬間に喜びを露にした。

 渡辺は彼女の声に手を振り、そのまま視線を機械に向ける。

 球体上の機械には平原が映され、内部の人間が歩くと同時に景色も動く。時には激しく身体を動かし、機械の補助を受けた上で無茶な機動を実現させている。

 此処はシミュレーションルーム。

 つい半月前に居住スペースの一部を改装して作られた部屋であり、表面上は危険実験室として社員達の立ち入りを禁止している。


 中に入れるのはパイロット適正がある者のみで、今此処に居る面々は最初の試験を無事に通った者だけになっていた。

 とはいえ、受けた者は嘗て空我に乗っていた者と子供組だ。

 今は大人達が占領している状態であり、彼等が満足するまでは子供組は操縦方法を体感だけでなく知識面からも覚える。教師は鳴滝が務め、子供組達は彼女の自作した教科書を読み込んでいた。

 

「どうかね、進捗は」


「皆やる気に溢れていますよ。 空我よりも違いが大きいので慣れは必要ですが、必ずものにします」


「ほう、初見で空我をほぼ完璧に操ってみせた君でも難しいかね?」


「機動速度、応答速度、可動域が特に空我と違いますね。 空我と同じ様に使おうとすると事故を引き起こします――――まぁ、もう慣れちゃった人が居るんですけどね」


「誰かね」


「ウチの兄貴です」


 快活な少女の声に、視線を横にズラす。

 ポニーテールを揺らす明るい奈々の言葉に、傍に居た蓮司は苦笑した。

 例の新型は確かに慣れが必要だった。実際に初めて蓮司が試した際も、軽く歩いただけで応答速度の差で転倒したのだ。

 実際の動きについてもほぼノータイムで再現された為、画面と視界の差によって軽い酔いも覚えていた。

 これは不味いのではないかと彼なりに不安を抱いたものだが、機動速度については既に実戦でこれ以上を体験している。

 

 FMCを前提とした機動速度に意識を合わせれば、自然と自分の中でのフィッティングも上手くいったのだ。

 

「実戦を経験したからこそです。 それに鳴滝もクルスももう十分戦えるくらいには慣れていますよ。 差なんて僅かなものでしかありません」


 新型に慣れることが出来るか否かは、やはり実戦が関わってくるだろう。

 その点で言えば奈々は一度も明確な怪獣戦闘を熟していない。対人間となれば経験はあるものの、怪物級を相手にしなかった所為で慣れることが難しかった。

 一応は他の面々からアドバイスを貰いはしたものの、理論的なものばかりで彼女は上手く飲み込めない。

 自然と表情が暗くなるのを避けられなかった。

 ロボットに乗れるかどうかで今後の進退が決まる訳ではないものの、活躍出来る幅は広い方が良い。

 特に兄のように戦えるのであれば、自分もヴェルサスに属していると胸を張って宣言することが出来る。


「そうか。 ……ふむ、これなら実機での稼働実験も問題は無いな。 実に喜ばしいことだ」


 渡辺はそんな彼女のことを見ていた。

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