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マッチポンプで世界が変わる!?  作者: オーメル


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処理は事務的に。会社相手は小事である。

 絶望した真木との会話はその後三十分も続かなかった。

 彼女自身なんとか助かる道を模索していたものの、レッドを見た瞬間には萎縮して何も口に出来なかったのである。

 自分よりも遥かに格上で、且つ絶対の君臨者であると認識すれば、最早彼の決定に異を唱えることは不可能であった。

 二人はそのまま家を出て、レッドは透明化を行う。その場には蓮司自身が残され、彼はレッドの歩調に合わせて並んで帰路についた。


「これからアイツはどうなるんでしょうか」


「さぁな。 残りの人生をどうするかはあの家の者達が決めることだ。 我々が口を出す権利はそこにはない」


「……そう、ですね。 なんだかんだ学校で関りが深かったから気にしちゃいました」


 蓮司の声には感慨深さがある。

 嘗ては自身を虐めていた相手。当時は勝てるなどと考えたこともなかったが、現実はあまりにも奇想天外だった。

 今や世界的にも勝ち組であるのは蓮司で間違いはない。逆に真木は崖際に追い込まれ、今にも落ちそうな人生に立たされている。

 誰かが彼女を助ける未来はない。あるとすれば親が作った人脈だが、相手はその程度想定しているだろう。

 誰かの妨害が入ることは想定の内。けれど、その妨害相手が一番相手にしたくないヴェルサスやフォートレスであることは想像の外の筈だ。


「――もうじき情報も集まるだろう。 我々の情報部も動き出した」


「それは、なんというか相手が可哀想になりますね。 もう負け確じゃないですか」


 情報部。正確にはイブと澪だが、この二名が現在斉藤とは別口から情報を集めている。

 本来は斉藤に全てを任せ、二人は静観を決め込むつもりだった。しかし、斉藤の集める速度に澪が我慢出来なくなったのだ。

 最高の頭脳を持った者から見れば、酷く彼の手段は遅く見えたのだろう。イブも巻き込まれる形で参加し、今や丸裸になる勢いで全ての情報が暴露されている。

 一応は斉藤を立てる為に全てを報告するつもりはない。けれど、遅々として相手の正体にまで辿り着けなかった場合はイブの口から報告が入る。

 

 余計な時間を浪費したくはないのだ。人生は長くないのだから、したいことを全て達成する為にも障害は最短で破壊したい。

 渡辺社長も我慢している。早く潰して製作を進めたいと思いながら、此方も無視は出来ないと社長室で指示出しをしていた。

 一会社と戦うにしてはあまりにも必死さが無いが、怪獣相手でないのであれば彼等はこんなものである。

 特に悪者が此方でない以上、迂遠な手を使う必要もない。正面から対応し、そして粉砕するのだ。


「結局あの会社はどうするんですか? あんなに大きいなら吸収してしまうのも手だと思いますけど」


「どうもしない。 放置しておけば勝手に潰れる会社を態々吸収しても、何の益も無いだろう。 それに吸収したとして、管理する人間を選ぶ作業がある。 そうなってはフォートレスの社長が我慢出来まい」


「あー、あの人予想以上に興奮していましたね。 そんなにロボットが好きなんでしょうか?」


「……単純に、直接的に日本を守れる手段を手に出来る事実に喜んでいるのだろうな」


 男ならばロボットに憧れない筈がない。

 渡辺社長も一種のロマンを感じる人間かもしれないが、それよりも手にした力で怪獣と戦える事実に彼は喜んでいるのではないかとレッドは予測している。

 元は空我達の指揮官でもあった男だ。命令によって指揮官にされたとしても、同じ職場の者達との絆は誰かに強制されたものではない。

 このまま会社を経営していくのも良いだろう。少なくとも、直接的に死ぬような事態を避けることは出来る。

 けれど、本音で言えば彼はあの場で仲間と共に戦いたかった筈だ。空我の末路に寂しさを覚えていた目を、レッドは知っている。


 これはそれが叶う絶好の機会だ。

 今度こそ、誰に縛られるでもなくやりたいことをやれる。ヴェルサスはその活動を阻害しないと予め決定している為、開発されたロボット達の全ての権限は彼持ちだ。

 後方の人間に決定権を持たせていても意味は無い。判断力の高い指揮官にこそ、運用に関する全ての権利を与えるべきだ。

 勿論、そこには信用が必要となる。渡辺社長が裏切らないだろうとレッドは思っているから、全ての権限を彼に与えることにしたのだ。


「兎も角。 これで情報を除いて事前準備は済ませた」


「次は直接攻撃に?」


「ああ。 配信で情報を流しておけば、情報拡散は直ぐに済む。 政府も大慌てで関係者全員を逮捕して会社を倒産させるだろうな。 あの会社の扱う製品も特に限定的な物はないから他が代替可能だ」


「……まさかガス抜きも狙いましたか?」


 レッドの言葉に、蓮司は違和感を抱いた。

 その感覚をそのまま言葉として口に出したが、レッドは口角を歪めてさぁなとだけ返す。

 明言はしなかったものの、蓮司にはそれが狙ったもののように感じられた。

 政府の信用失墜は加速度的に進み、一般職員達の不満は日々高まっている。

 自分達は真面目に仕事をしているのに、上は不正をしていたのだ。その不正によって危機に追い込まれたのだから、退職出来るのであれば誰とて退職する。

 されど、この信用失墜によって経済市場も弱体化した。会社からリストラを勧告される人も多く、その中で公務員はやはり安定職なのだ。

 安易に辞めて次があるとは限らない。このまま無職となって住む場所も食べる物も失えば、待っているのは長く続く苦しみだ。

 

 そうなるくらいなら、今を我慢するしかない。

 けれど不満とは明確に身体に悪影響を及ぼすもの。ストレスが蓄積され続ければ、何れ精神にせよ肉体にせよ支障が出る。

 そんな彼等に僅かにせよすっきりさせるには、やはり上層の人間が奈落の底まで落ちていく様子を見せることだろう。

 人の悪意は無限大だ。罵倒にせよ暴力にせよ、その行動は対象が死ぬまでエスカレートする。

 配信によって会社の幹部達が悪と定められた時、向けられる悪意は如何程だろうか。


 そして、そんな光景を見て、政府に属する人間がまた馬鹿なことをしたものだと大いに一般職員達は笑うだろう。

 その光景は醜悪に過ぎるが、だからこそ最も効果的にガスを抜くことが出来る。

 会社を吸収しようとしないのも恐らくはこの点からではないかと蓮司は推測を繋げた。

 下手に救済と間違われるような方法を取れば、余計な誤解を受け取られかねない。

 

「配信についてはフォートレスに一任している。 そちらと連携し準備を進めておけ」


「解りました。 あ、ついでにフォートレスの新作商品の宣伝をしても?」


「お前な……。 好きにして良いが、過度にはするなよ」


「解ってますって。 最後にちょっと出すだけですから」


 蓮司の確認に、レッドは呆れた顔で承諾する。

 その後、二人は別々の道を使って家へと帰宅した。蓮司は家族達に今回の顛末を伝え、奈々に配信の用意をするように頼む。

 クルスも参加する旨を伝えたが、彼女には参加するだけの理由が無い。なので当日の弁当等を頼むと、彼女は残念そうにしながらも配信参加を諦めてくれた。

 フォートレスにも連絡を送り、蓮司は早速チャットで予定を詰めていく。情報が集まり次第なので詳細な時間は決定出来ないが、ヴェルサスの収集速度を加味して早めに用意を済ませることになった。


 そして、レッドは自宅でパーカーを脱いで椅子に座る。

 澪は何やら二階で作業をしているようで、脳内からもお帰りの言葉は無かった。

 

「邪魔が、邪魔が多過ぎる……」


 項垂れながら愚痴を吐くその姿は、さながら仕事帰りの社畜のようだった。

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