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マッチポンプで世界が変わる!?  作者: オーメル


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世界に轟け、怪獣の狂騒

「今日はクリスマス。 準備の所為で満足にケーキを食べる時間も確保出来ていないけど、この日が素晴らしいものとなるのは確実だッ」


「喜んでいるのは解るが、此処にはお前と俺しか居ないぞ?」


 高層ビルの頂点。

 無人の屋上で東京を見下ろす澪は、この日を心底待ち侘びていたと子供のように瞳を輝かせる。その場には呆れた表情の彩斗も居て、今日はマスクとパーカーを着たレッドとして立っていた。

 眼下にはクリスマスで賑わいを見せる人々の群れがある。誰も彼もが幸せの表情をしている訳ではないが、家族連れやカップルがいやに多い。

 この日を特別と定めているからこそ、店にはチキンやケーキも並んでいる。学校も今日は休みで、蓮司達も自分の家でクリスマスを過ごしている筈だ。


「これが終わったらケーキを皆で食べよう。 きっと疲れているだろうから市販品になるけど」


「そもそも店を継続していられる余裕があるかだな。 ま、最悪は何時ものより少し豪華にすればいい。 それくらいなら出来るだろ」


 言いながら彩斗は携帯を起動する。

 スリープから解除された画面には赤い光点が世界中に五つ点滅していた。場所は全て海底か地中のどちらかで、予定通りに噴出する形で今回は登場する。

 肝となるのは五体の怪獣だ。彼等は各々β程の強さは持っていないものの、固有の能力によって異なる強みを持っている。

 世界各国の軍がどれだけ戦力を注ぎ込んでも打倒出来ない力を見せ付けるのだ。そして、その上で外国ももう無視は出来ない状況に晒されることとなる。

 兵器開発はますます加速するだろう。何時かは本当の意味で怪獣に匹敵する兵器が生まれることを願って、クリスマスを地獄に作り変える。


「日本には楓、アント、モザン、イブ、蓮司をそのままぶつける。 そして私は東シナ海に出てくる奴を相手にし――」


「俺はアメリカ近海の大西洋に出現する奴を潰す。 で、残りの二体をアイツに任せると」


「調整は時間が許される限りしたけど完璧じゃない。 本人が戦いながら加減を出来るよう、敢えて敵の数を二倍にしてあるよ」


 散らばった五体は一斉に起動させる。

 勢いよく暴れ出した怪獣達は陸を目指し、日本以外は上陸する前に滅ぼす。日本だけは他よりも縛りを緩め、上陸されても気にしないことをメンバーには伝えてある。

 一部に深刻なダメージが刻まれるだろうが、そのお蔭で彼等も知るだろう。

 上陸前に止められなければどうなるかを。国家防衛リストから排除されたその意味を。

 深く深く、恐怖と共に刻み込まれた市民は政府を叩く。デモも恐らく連日に渡って起きるだろう。


「各員に通達。 これより五体の怪獣を目覚めさせる。 モザンの端末に怪獣の情報を送信し、それを蓮司君と奈々ちゃんに送ってくれ」


『了解』


 バックグラウンドで起動していた通話アプリでメンバー全員に開始の合図を送ると、静かに全員が返す。

 そして、彩斗は五つの光点が点滅する画面で右下にある起動のボタンをタッチした。

 点滅は消失し、残るは強く輝く赤い点。同時に澪が仕掛けていた小型カメラが自動で動き始め、空になった地底湖の怪獣が起動する。

 日本の地中で眠っていた怪獣の身体は非常に複雑だ。姿形も色もサイズも異なる部位が強引に繋がり、一つの生物を形作っている。

 四つの足を持ち、五つの龍の首を生やし、一対の翼を持つ怪獣は――正にキメラ。

 龍の首は各々色が異なり、その色に対応した属性を有している。赤ならば炎で、青ならば氷、そして黄ならば雷。

 

 起き出した身体は容易く天井に届き、岩を砕く。

 一直線に崩しながらの進行。その所為で局所的な地震が起き、人々は震度五と流れた情報でもしやと慌てて避難を開始する。

 今の日本人は震災をイコール怪獣の登場だと考えるようになった。それは警察や自衛隊にとってこれまでの速度を超えた避難スピードを見せることになるが、お陰で初動の動きも早くなる。

 奈良の重要文化財を避ける形で地面が吹き飛び、そこからキメラが姿を現した。

 巨大な体躯と異常な姿形は人々の畏怖を煽るには十分。

 蓮司は端末でその情報を知ったと同時に奈々を大声で呼び、FMCを起動して彼女を横に抱いた。


『急ぐぞッ、舌噛むなよ!』


「私に遠慮しないで!!」


 幻想幻夢のマキシマム。それが出せる暴力的な加速に、奈々は潰されるような感覚を抱きながら懸命に耐え、フォートレスの前で小さなクレーターを作りながら着陸。

 奈々が降りたと同時にフォートレスに居たヴェルサスメンバーも姿を現し、モザンは奈々の端末に自身の端末を無線で接続した。


「端末に情報は全部送った。 アドリブになるけど後をお願い」


「解りました。 ご武運を」


「うん。 ――行くよッ!」


 険しい顔をするモザンが叫び、合わせて全員が横一列になって奈良を目指す。

 蓮司はイブによって空中で怪獣の情報を聞くことになり、そのあまりの異常事態に絶句する。

 無理もない。いきなり世界中に複数の怪獣が出たとなれば、冷静なままではいられないものだ。

 ましてや、蓮司の脳裏にはあのβの影がある。全員の真剣な顔と合わさり、もしやと考えるのも不思議ではない。


「怖がるな。 今回出てきている奴等は残らずアーキテクト以下だ。 ……一番の大物は奈良の奴のようだがな」


『奈良の奴はそんなに強そうなんですか?』


「戦ってみなければ詳しい所は見えてこないが、あれは複数の怪獣が合わさっている。 能力を持っているだけ厄介さは増すだろうな」


 炎だけなら水を掛ければ良い。

 水だけなら即席の道を構築して受け流すことも出来る。

 雷ならば、それこそ耐電対策を施せば良いだけだ。水と同様に即座に作れるだけの能力がこの面々には備わっているし、最悪回避も出来る。

 一つだけなら攻略も容易。されど、今回の敵は複数の特徴を持った大物である。その全ての能力は戦って初めて解ることで、現時点では見た目から判断するしかない。

 そして、イブは最後に最大の懸念事項を口にする。


「今回の戦闘でレッドやフローも散っている。 手助けは無いと思え」


『……了解』


 最強の鬼札は今回登場しない。

 その事実は思いの外深く彼に突き刺さるが、萎縮する身体を彼は無理矢理奮起させる。

 ここで怯えて丸まるようではメンバーである資格は無い。FMCの力をフルに活用して怪獣撃破に貢献し、更に周囲に認めさせる。

 力をどれだけつけても、それが結果に繋がらなければ意味が無い。人は結果のみに非ずと言うが、過程のみで全てを語れる程優しくもないのだから。

 奈良の近くまで到着すると、途端に周囲の破壊音が聞こえて来る。

 目標のキメラは建物を壊し、道路を粉砕し、逃げ惑う人々を殺さないようにしながら慎重に破壊活動に勤しんでいた。何れ散っている怪獣達も此処に集まり始め、日本各地で同様の惨事を引き起こすだろう。

 

 忘れるなかれ。如何にレッドやフローが強者でも、取り逃さない可能性は零ではない。


「空我も来ましたね」


 アントの声に視線を横に向けると、ヘリに輸送される空我が見える。

 数はあれから増えたようで、二十にも及ぶ軍勢は圧が強い。手にした武器に近接パックは存在せず、皆持ってるのは空戦か砲戦だ。

 鳴滝程の才能を持った人間が現れなかったということだろう。その時点で今の空我の練度など察してあまりあるが、それを指摘するほどヴェルサス達に義理はない。

 壊れるならそれまで。邪魔をするようなら足と腕を壊す気ですらある。

 

「イブ様ッ、あの空我達……」


「ああ。 どうやら我々のことも敵と認識しているらしい。 銃口の一部が此方に向いている」


『嘘でしょう……』


 よくよく見れば、後方の砲戦パックは着地と同時に武器を構えている。

 十機の空我の内の七機がキメラを狙い、残りの三機が飛来する蓮司達に狙いを定めていた。

 FMCにはロックオン警告が流れるものの、脅威度は五段階中の一と低い評価を出している。例え直撃しても今の彼には傷一つ付けられない。

 人類同士で争っている暇は無いというのに、どうして攻撃姿勢を取るのか。

 相変わらずの意味不明は健在で、戦場に突入したにも関わらず蓮司は呆れた。

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