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マッチポンプで世界が変わる!?  作者: オーメル


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異種・前哨戦

 海中で適当に爆弾を投げている彩斗の網膜に未確認の接近情報が表示された。

 サイズは今までの怪獣を軽く凌駕し、最早一つの山が動いているのかと錯覚する程。極端に巨大過ぎる物体は彩斗の直上に到達し、その瞬間に携帯は軽快な着信音を響かせた。

 

『こっちは着いたよ。 今君の真上に居る』


「おし、じゃあゆっくり来てくれ。 いきなりドボンしたら俺が潰れるからな」


『大丈夫大丈夫。 土台ごと纏めて持ってきたから』


 言って、直ぐに海中に何かが沈む音が聞こえた。

 外から見れば円形の透明な何かが沈む姿が観測出来ただろうが、この付近を監視している国は無い。

 監視網の存在しない海域を狙ったのだから当然だ。時間を掛けて全てが海に沈み、彩斗の居る地点までに氷の土台は溶けて中の怪物を解き放っていく。

 最初に見えたのは足。次に腕、胴体と露出していき、最後にリアリティの有り過ぎる頭蓋骨を目にして彼は思わずドン引きした。

 

 これまでも澪の開発によって驚くべき物や怪獣を見てきたが、今回は別格だ。

 彩斗が今居るのはとある深海の底も底。最深部の砂の上に足を付け、太陽の光なんてまったく差し込んではこない。

 そんな場所にβは着陸するが、足だけでも普段の怪獣一体分である。上を見ると僅かに二つの灯りが見え、彼女の設定通りであれば眼光なのだろうと彼は推測した。

 そんな彩斗の前に四人の人物が姿を見せる。


 二人は見知った人物だが、残り二人は姿しか知らない。

 海底で彩斗を目にした二人は、喜びを露に丁寧に頭を下げた。絶対の上位者に対する服従を示すように。

 彼等との関係に上下を付けるつもりは彩斗には無い。無いが、二人にはそれがあるのだろう。

 最初からそのような設定をした覚えは澪にも無い。けれど、AIが勝手に二人の認識を決めてしまう例は他に存在する。例えば――


「親父殿! ついにこっちでも会えたな!!」


「うぉっと。 そうだな、データ通りじゃないか」


「そこらへんはお袋殿だからな。 失敗するなんて思ってなかったよ」


 飛び込んで抱き着いたイブは二人の事を自分にとっての親と定義している。

 その認識はある意味間違いではないが、これもまた澪が設定しない情報だ。開発したAIには知識を詰める関係でネットと接続する機会があるが、その過程で一部の認識が想定外のものとなっている、と澪は考えている。

 だが、これもまた悪くないものだ。

 甘える子供同然のイブを楓が引き剥がし、アントは二人の喧嘩をずっと続くんだろうなぁと微笑ましさを加味した目で見ている。


 最初は二人から始まった演劇も、既に六人にまでスタッフは増えた。

 彼等の関係は全てAIによって定義されているとはいえ、その心中に芽生えるものは彼等が抱いた確かな感情だ。

 膨大なデータ群が人間と変わらぬ情動を再現し、一個の人間として確立させている。

 彼等が彩斗を嫌うことはないし、澪の事を嫌うこともしない。

 最初から設定されている通り、彼等が裏切る可能性は零だ。卑怯な手段であるものの、他者を信じられぬ彩斗と澪では真実の信頼関係を結ぶのは不可能に近い。


「はいはい、騒ぐのはここまでだよ。 取り敢えず、これからの予定について説明するね」


 海の底で手を叩いても音は鳴らないが、彼等はマスクの技術を応用して顔を海水に浸からせないようにしている。

 見かけは何も付けていないようだが、その実薄い膜のような物体が張り付いているのだ。彼等の声もマスクから響き、普段のマスクによる通話と然程変わりはない。

 閑話休題。

 澪の予定であれば、これから超巨大怪獣が活動を本格的なものになる。攻撃頻度も範囲も増えたことになり、今から少なからず彼等は損傷を負う。

 

「出来立てほやほやな君達だけど、時間軸的にはずっと足止めをしていたことになっているからね。 怪我が無いってのは違和感を持たれやすい。 悪いね」


「構いません。 澪様と彩斗様が望むのであれば半壊でも大丈夫です」


「動けなくなるのは個人的には嫌だけどね」


「流石にそこまで追い込みはしないよ。 現状は僕と彩斗と君達だけでコレを倒してもらうんだから、動けない程のダメージは負うにしても終盤になるね」


 怪我を作りながらβに深海を抜けてもらい、その姿を日本近海辺りで晒す。

 ちなみにβの移動方法は徒歩。一歩でも数㎞を進めるので、一日と掛からずに無事に到達してくれるだろう。

 その後の展開についても説明を受け、いよいよ作戦は開始となる。

 今回の戦いは特にシナリオ通りになってもらわねばならない。余計な不穏分子は澪が積極的に動いて消し、防げないなら瞬時に情報共有をした上でアドリブとなる。


 澪と彩斗は常に意識を繋げているが、更に深めて繋がり合うつもりだ。

 両者の感情が融合してどっちがどっちの思考をしているか判断が付け難くなるデメリットがあるものの、そこは長年の経験で解決させる。

 何処までが自分で何処までが相手か。その見極めはずっと繋がりながら生活している二人だからこそ出来るもので、繋がったばかりの人間がいきなりやろうとしても失敗に終わる。

 これを用いて澪が冷静に予定外の出来事を全体に周知させ、解決策を全員で模索するのだ。その方が好転する確率も高くなる。


「残り数日。 当日は少年達も前線に参加するし、あの空我も全機出撃するだろう。 総力戦とまではいかないけど、全力全開の戦いとなるのは覚悟してくれ。 ……特に彩斗、君は一番覚悟しておくんだ」


「解ってる。 あれも貰ったことだしな」


 彩斗は袖の内側にある物体に手を触れながら答える。

 レッドというキャラを最強にする為に。そしてヴェルサスの地位を不動のものとする為に。

 彩斗の役割は一番重要だ。失敗すればヴェルサスの必要性が消失するどころか、最悪彩斗が澪を巻き込んで死んでしまう。

 折角楽しくなってきたというのに、道半ばで死ぬつもりは毛頭無い。どれだけ予想外な出来事が発生したとしても、己は死ぬ気で生還してみせる。

 

「よし――それでは、現時間より作戦を開始する。 全員、全力を尽くして遊んでくれることを切に願う」


 物質生成のし過ぎで休んでいるモザンを除き、他のメンバー全員の顔を見回して澪は宣言する。

 同時、彼女は自身の意識の一部を飛ばしてβに命令を下す。

 内容は移動。妨害する者に対し死なない程度の攻撃を仕掛けること。

 指示されたことで超巨大な質量が動き始め、ゆっくりとした所作で一歩を刻む。

 歩幅は有り得ない程に広く、たった二歩で全員を遥か後方にまで置いて行ってしまった。

 慌てて彼等は海中を泳ぎながら進んでいき、炎の使えない彩斗は残りの爆弾を全て新品のβの足に叩き付けた。


『OOOOOOOOooooooooooooooo……』


 野太い声が髑髏から鳴る。

 一定のダメージを刻んだ事で自動的に痛みを感じたような振舞いをし、早速怪物は爆発で邪魔をする彩斗に攻撃を仕掛ける。

 槍のような腕で直接彩斗を狙い、彼は泳いで巨大な一撃を回避。その隙にアントと楓で足を崩そうと蹴りを放つが、彼等の規格外な一発でも罅すら入らない。

 そして、邪魔をされたことで二名も攻撃の対象となった。

 腕の槍を向けず、βは蹴られた箇所から黒い棒を突き出す。表面からいきなり生えた黒い棒は両名を突き飛ばし、そのまま少し離れた海域に送られる。

 

 更に伸びた棒からも複数の棒が生え、一気に増殖した棒が彩斗を押し潰さんと迫る。 

 その攻撃を横に避けるが、避けた瞬間から追跡するように黒い棒が連続で生えた。

 生成速度は視認が辛うじて出来る程度。見てから回避は不可能であり、AMSを着ている状態でも完全回避は難しい。

 この状況を脱するには横槍だけ。追いかける黒い棒の側面に狙われていないイブが手刀を見舞い、細くなった棒を折ることで追跡を強制的に遮断する。


「地味だが、厄介極まりないな……」


 ついに始まったβとの前哨戦。最初の攻撃を経験し、彩斗が零した評価は今後の未来を暗示しているようだった。

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