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マッチポンプで世界が変わる!?  作者: オーメル


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最強生物、遂に起動する ※ついでに新キャラも動き出す

 三体の怪獣が死亡した。

 数ヶ月を用いた襲撃は空我の評価を上げに上げ、日本を代表する最強戦力の一つとして数えられるようになった。

 企業主導でグッズ展開もされ、様々なCMで空我や機動部隊の面々がお茶の間に流れるようになっている。

 最初は邪魔な人間を集めただけの組織が、今や人類を守る盾として注目の的だ。

 空我パイロットは花形職に一躍躍り出て、今後も怪獣を撃破し続けていればやがて不動の地位に就けるだろう。


 ネットの評価も悪くはない。

 世間の操作された評価と異なり冷静な意見が多いが、概ね悪い評価はされていない以上彼等が空我を受け入れているのは瞭然である。

 澪にとって退屈な時間が流れたが、社会は予定通りに動いた。

 これならばもう出しても良いだろう。モニターを操作しつつ、彼女はテーブルに置きっぱなしにしていた携帯で彩斗に電話を掛ける。


「良い感じだ。 暴れるには最適なタイミングだよ」


『――っよし。 んじゃやるか』


 澪からの電話を深海の底で聞き、マスクの内側で興奮の笑みを浮かべる。

 空我が目立ち、ヴェルサスが影になった。勢い任せに突き進む自衛隊は必死になって自分達を排除しようと動き回り、常に蓮司と奈々は遠くから監視されている。

 その事実を教えてはいないが、数が増えれば流石に気付くだろう。そうなるように鍛えたし、奈々の傍には護衛用のクマが居る。

 今この瞬間において、蓮司達は放置で構わない。それよりも、先ずは危機の象徴を出現させることに注力するべきだ。


「βはもう完成してるよ。 起動させれば直ぐに暴れさせることも出来るけど、一度そっちに運ぶね」


『OK。 こっちは周囲を警戒しているから、近付いたら連絡をくれ』


「解った。 ついでに新しい子もそっちに寄越すから、悪いようには使わないでね?」


『俺がそんな真似するかよ。 使ってるのは主にお前じゃないか』


 呆れた彩斗の声にまぁねとだけ返し、澪は通話を切る。 

 席を立って背後を振り向き、そこに居並ぶ三人に視線を向けた。口元は楽しそうに弧を描き、三人は命令を待つ。

 今度の三人もモザンのように完全個別のAIが搭載され、ある程度の自主性が認められている。ネタバレと裏側暴露に関する話題は絶対に避けるよう設定され、それ以外については基本的に自由だ。

 一人は白い衣服の黒髪の女。白衣を纏い、その内側も白のカッターシャツで完全に上を白で纏めている。それとは別に下半身は赤く金の装飾がされたロングスカートに赤い靴と赤尽くしで、さながら赤十字の病院をイメージさせられた。

 

 一人は執事服を着た金髪の青年。

 日本人的特徴ばかりでは面白味が無いと、金髪碧眼と馴染深い外国的特徴を付与している。黒い燕尾服を着た彼の顔は穏やかで、とても棘があるようには見えない。

 体勢は一切揺るがず、靴を揃えて直立する様は正に本職。実際はデータを入れて少し動作確認をしただけだが、澪が開発したAIはそれだけで完璧な動作を可能にさせる。

 

 そして最後は、金髪を膝裏まで伸ばした快活な子供。

 他二人とは異なり、子供は何度も澪や彩斗と会話を重ねているので初対面ではない。

 青地に白のラインを左右入れたシャツに、白のクローク。黒地のスカートの端は全て赤く染まり、子供が少女であることを示している。

 その名はイブ。蓮司が見た彼女の姿とは異なり、ついに少女は肉体を獲得して電脳空間から外に出た。

 彼女は勇敢で男勝りな性格がインストールされているが、基本的にそれを表に出すのはこの家や関係者が居ない間だけだ。

 

「これから皆にはβを運んでもらいつつ、彩斗の元に向かってもらう。 ボディは透明化で隠せるから然程気にしなくても良いけど、一応は周りを確認しながら進んでくれ」


「ういっす。 ちなみに親父殿に接触するのは有り?」


「どういう意味かによるかな。 過度な触れ合いで勘違いを引き起こさないでよ?」


「大丈夫大丈夫。 俺はちょっと抱き着いてみたいだけだって」


 あっけらかんと口にするが、美少女からの積極的なスキンシップは彩斗のような恋愛のれの字も経験していない者には厳しいだろう。

 敵であれば冷酷無情になれるが、イブは愛すべき家族だ。そんな家族が友好的に接してくれば、恥ずかしさを抱えながらも彼は表面上は普通に接する。

 今から絶叫が共有されるんだろうなぁと澪は溜息を吐くが、イブがこのような発言をするのは予測の範疇。

 その為に三人にしたのだ。イブのお守りとして設定しただけあって、他二人は比較的常識人である。

 特に女――楓と名付けられた個体は真顔でイブの頭を思い切り叩いた。


「あだっ!? 何すんだよ、俺は先輩だぞ!」


「私達の間に上下の関係は無いでしょう。 澪様と彩斗様が上位者なのですから、もっと礼儀を正しなさい。 いざという時に演技が出来ませんでしたではお話になりませんよ」


「んだと赤子が――」


「はいはい、そこまで。 不必要に暴れるとバッテリーが無駄に消費されるよ」


 手を数度叩いて男――アントは穏やかな顔で注意する。

 それは強制力に欠けるが、内容そのものは至って正論だ。これから超巨大物体を運ぶ関係上、途中でバッテリー切れを起こすのは許容されない。

 イブは一度楓を睨み、子供っぽくそっぽを向く。楓は楓で眦を吊り上げるが、そこから先は進まずに無言を貫いた。

 アントはやれやれと苦笑し、澪は二人の関係を微笑ましく眺める。

 まるで嘗ての自分と彩斗を見ているようだ。正論を愚痴として吐き出す澪に、その言葉に文句を言ってばかりだった彩斗。

 喧嘩をするのは当然で、脳内で半戦争状態にまで発展したものだ。


「喧嘩が終わったなら行くよ。 時間は有限なんだから」


 懐かしさを感じながらも、止まったタイミングで窘めて透明化を行う。

 全員の姿が消失した後に外へと出て、薄い氷を空中に生成して最短距離を進む。四人全員が渡った瞬間に砕けるように調整しているので、不自然な冷たい物体が道路に落ちても直ぐに溶けて消えるだろう。

 澪がβを作っていた場所は、成層圏。そこにガラスに近い材質の土台を敷き、半円状の擬態フィールドを展開している。


 透明化と異なるのは、この擬態は燃費が良いことだ。

 長時間の運用が求められる関係上、透明化は燃費が悪い。人一人に施す程度なら大きな電力を必要としないが、巨大な怪獣を隠すとなると発電施設が一つ必要になってくる。

 家の小型発電機は莫大な電力量を生成してくれるものの、流石にフィールドの維持を可能とする程ではない。その為、少ない電力で自身の色を変えることにした。


 青空と雲が目立つ色は近くで見てもそれが本物か偽物か解らない。

 センサー類もこのフィールドをすり抜け、問題無しと使用者に伝えるだろう。外の人間が気付くには一度衝突するしかない。

 半円のフィールドに使われている素材は布だ。故に暖簾を潜るように内部に入り、目の前に現れた怪物に澪を除いた三人が身構える。


「落ち着け。 あれが今回の敵役であるβだ。 今はまだ起動していないぞ」


「……でっけぇ」


 彼等の眼前にあったのは人間の頭蓋骨だ。

 髑髏の目からは光は無く、何処までも深い闇が広がっている。横も縦も異常に巨大で、それ自体が何かの建物のようだ。

 βは身体を横にした形で沈黙している。ボディに肉は無く、あるのは黒い棒。

 複数の黒い棒が繋がり、棒人間のような見た目となっているのが三人には見えた。足先と腕先は鋭く尖り、何かを掴むことは出来ないだろう。

 全長を調べるのは目視の範囲では不可能だ。あまりにも長過ぎて、腰から先が一つの塊にしか見受けられない。


 これこそがβ。人類最強の敵にして、今回全力を出さねばならない相手である。

 澪はそっとβの頭部に手を添え、己の電力を流し込む。胸の部分に用意されていた電源が稼働を始め、目の無い空間に光が灯る。

 口を開けながら四つん這いになり、βが全員を見下ろす。

 巨人と小人。赤子と大人。――そんな極端な差異を見せる怪物が、ついに動き出したのだ。

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