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マッチポンプで世界が変わる!?  作者: オーメル


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表舞台に彼女は姿を現す

 黄金の光が何処かへと流れながら、鎧が解除される。

 再度出て来た生身の彼に鳴滝達は最大限の警戒を向けた。全員が銃身と剣を突き付け、露骨な様子に蓮司は危険な場であると知りながらも苦笑する。

 鎧を解除したのは、話すことがあるからだ。未だFMCのバッテリーは五十を下回っていないが、何時何処でマキシマムが必要になるか解らない。

 節約は大事だ。予備のバッテリーも今は無いので、彼を守る鎧は出来る限り出さない方が良いのである。


「そんな怖がらないでくださいよ。 別に取って食うつもりはありませんから」


『……信じられるとでも?』


「別に信じてもらおうと思ってはいません。 これは一種の形式的な挨拶ですから。 ……それよりも、貴方達は今知りたいことがある筈だ」


 蓮司が余裕なのは、彼等が絶対に自分を殺さないと解っているからだ。

 突然の無数の情報に、訳知り顔のヴェルサス。自衛隊の面々を除け者として繰り広げられた一連の流れは、即ち世界の裏だ。

 知りたくとも知る方法が無く、故に現時点で一番簡単に知るには蓮司や奈々を尋問する他ない。

 かといって、此度の戦闘で蓮司の力を彼等は知った。捕らえるのは不可能で、今この瞬間も逆転の手を用意していることは容易に想像が付く。

 

 つまり、彼等は警戒をするだけで引き金を押すことは出来ない。

 その情報を手にするまでは。歯噛みしながらも、立花も土方もトリガーに指を当てることしか許されなかった。

 

『早乙女さん。 貴方は私達が欲しい情報を提供していただけるのですか?』


「全てとはいきません。 レッドさんとフローさんが許可した情報だけ、共有することを許されています」


 この場では二人も公人である。

 口調は丁寧を心掛け、蓮司は彼女の望みを断つ。

 知りたいことは多くあるのだろうが、その悉くを教えるつもりはない。彼が教えるのはアーキタイプの情報についてだけだ。

 それ以上は今の彼等には分不相応。知ったところで何も出来はしない。精々が邪魔をしないことだが、一部の者はそれを知って余計な謀を脳裏に巡らせるだろう。

 知らないままで良い。お前達は最後まで無知のまま、ただ危機を何とかすることだけに集中していれば良いのだ。

 

 人類存続。

 それを成し遂げていたいのなら、馬鹿な事を考えてはいけない。自分の利益、欲求だけを追い求めた先にあるのはやはり破滅だ。

 蓮司の腰に入れたままの携帯が鳴る。仕事用の携帯は相変わらず頑丈そのもので、一瞬とはいえ全力を出したFMCの衝撃を物ともしていない。

 内容は着信。相手はフロー。

 出ない選択肢は彼には無い。通話ボタンを押して耳に当てると、直ぐにスピーカーモードに変えろと声がした。


『この声は聞こえているな』


「はい。 既に切り替わっています」


 戦場だった場所に響く女性の声。

 空我の高性能センサーがそれを拾い、後方の指揮所にも彼女の声が届く。人間の声とは思えぬ美しさを孕んだ声は、しかし優しさも暖かみもない。

 極寒の息吹。

 感情の色を削ぎ落した声は酷く無機質で、知らずの内に全員が悪寒を覚える。


『初めましてと、この場合は言うべきだろうな。 私はヴェルサスのトップが一人、フローだ。 この連続して襲撃が続く日本の監視を行い、適宜メンバーの召喚を行っている』


 ヴェルサスのトップ。

 それが示すは、高みの中の高み。ほぼ頂点に等しい人物からの言葉は、彼等の知る上官の厳しい言葉よりも恐ろしい。

 そんな人間が何の用で電話をしてきたのか。まるで想像出来ない中、何の反応も示さない面々にフローはわざとらしく溜息を吐く。


『……そちらの空我の実力は見せてもらった。 有り体に言ってまるで役に立たない屑鉄だが、盾としては十分だ』


『……ッ、空我は怪獣を撃破している!』


 辛辣なフローの評価に土方は思わず反論する。

 確かに空我はあのゴブリン相手に勝てるかどうか解らなかった。技術の面では完全に負け、一対一の状況なら負けは濃厚だったろう。

 されど、それでも実績は積んでいる。子供であれども怪獣は怪獣。それを倒した事実は覆せるものではない。

 土方の意見は正しいものだ。人々の目に確りと怪獣が撃破された瞬間が映れば、それを成した者達を素晴らしいと褒め称える。

 勝っているのだ、ならば辛辣な評価を貰う理由にはならないだろう。


『雑魚を潰した程度で息巻くな、見苦しい。 お前達が手を出すなと言うから傍観するだけに留めたが、動きが粗末に過ぎる。 あれでは大型は止められんよ』


 最上段からの言葉には二の句を言わせぬ力がある。

 実際、フローには空我は玩具にしか見えない。自分が作った玩具と誰かが作った玩具が遊び合っているだけだ。

 人形遊びに本気になる大人に普通に接することが出来るだろうか。

 答えは否だ。憐れむか、蔑むか、異常者かと思ってしまうだろう。そして、フローにとってはただただ哀れにしか感じられない。

 お前達の技術力が低いから、こんな玩具で遊ぶことしか出来ない。争いなんて間抜けなことをして進歩を遅らせるから、今の自分に追い付けない。


 子供なのだ。どこまでいっても。

 故に本気で扱わない。彼女が本気になるのは、彩斗に関することのみ。

 赤の他人に期待はしていないからこそ辛辣になれる。絶望的な感情の奈落を前に、常人は彼女と顔を合わせるのも難しいだろう。

 

『話が逸れたな。 私がお前達と会話をすることを選んだのは、先の戦闘があったからだ。 あの怪獣が余計なことを喋った所為でそちらに少し情報を提供する必要が出ている。 少年に任せるかと考えたが、齟齬が出ては困るからな』


「そもそも自分も深くは知りませんよ」


『解っている。 お前が知っているのは最低限だ。 ――さて、そちらはどうする? 別に断ってくれても構わんぞ』


 彼女の提案はこの状況を打破する一番の手だ。

 自衛隊本部に情報が伝われば即刻捕縛に動くだろうが、何も話す場が自衛隊の敷地内である必要は無い。

 指揮官も矢部博士もこのチャンスを逃すつもりはなかった。直ぐにパイロット達に受ける旨を伝え、指揮官は適した場に連絡を入れる。

 予約は早ければ早い程良い。その方が準備にも力が入れられるのだから。

 

『是非御聞きしたいとのことです。 場所と時間は追って伝えたいのですが、何か連絡する方法はありますか?』


『ヴェルサスのSNSにDMで送れ。 そこに出向くとしよう』


『……解りました』


『よし、伝えるべきは伝えたな。 少年、帰るぞ』


「了解。 それでは自分もこれで失礼します」


 通話が勝手に切れ、蓮司もポケットから取り出した一枚のカードで透明化を行う。

 突然姿を消した彼等に対して機動部隊の面々が追うような真似はしない。手早く予約を済ませた指揮官が撤収の指示を出し、空我達はヘリで基地まで運ばれた。

 今回の戦いは指揮官がヴェルサスによって討伐が終わったと本部に報告を行ったが、本部側は事実を隠蔽してメディアに空我の勝利を報道させる。

 我々は最強の兵器を手にしたのだと誇張し、機動部隊達はテレビに映る虚像をつまらぬ目で眺めていた。


 今回の戦いで皆覚ったのだ。所詮空我程度では怪獣は倒せず、結局ヴェルサスの力に頼るしかなかったことを。

 あのまま粘っていれば勝てたかもしれないが、ゴブリンの技術は正に戦士として研ぎ澄まされている。殺すことを基準にした動きの数々は、今の世界では到底受け入れられない。

 自衛隊員とて殺す技術を磨いてはいるが、ゴブリンは何時自分が死ぬかも判らぬ状況だ。磨かれた技術の質は高水準に纏まっていたと見るべきだろう。


「……では、行ってくる」


「頼みます。 私の方でも可能な限り彼等に近付ける努力をするよ」


「無理をするな、とは言えないな。 こんな状況で無茶をしないでいるのは不可能だ」


「そうだね」


 特務機動部隊・正門。

 予め用意されていた黒塗りの車を前に、指揮官の男と矢部博士は言葉を交わす。

 今この瞬間も世界存亡の危機が迫っている。被害を最小に留めるには、彼等の力をなんとしてでも借りねばならない。

 例えそれで指揮官自身が職を喪失しても、不都合な存在として消されようとも。

 矢部博士も彼と同じであり、故に別れた瞬間から空我の改良を始めるつもりだ。

 数%でもパイロットが生き残れるなら、そこに全力を注ぐ。彼は素材の開発者であるが、同時に空我の事を詳しく知る人間の一人でもあるのだから。


「――すみません!」


 そんな二人に声を掛けながら走って来る人物が居る。息を荒げながら向かってくるその姿は、制服に身を包んだ少女だった。

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