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都の人攫い

 母親から離れて三年、娘は女らしさを少しずつ身につけ華やかさを纏うようになるも、弟の母親代わりに無理をしていた。弟とはいうと、村の女へ悪戯に、年の近い子供とはしゃぐまでになっていた。

 洗濯物を干していた姉のお尻を思い切り叩き、怒られまいと逃げだした。

「もー!!カズキ!私は忙しいのよ!悪戯しないで!」

「三つにもなって、五つと変わらないくらいはしゃぐとか、そう無いぞ」

「むー……元気なことはいいですが。……お帰りなさい姉さま」

「山桃があった。お土産だ」

「うわぁ。ありがとうございます!」

 空になった籠の中に山桃を入れると、イブキと一緒に家に入る。

「山賊たちはどうなりました?」

「全員捕まえた。お役所に渡したから、やっと静かになるねぇ」

「ああ、よかった。私たちが疑われるなんて失礼にも程がありますもの」

 イブキが水を飲んでいる間に、ミサカは荷物を纏める。

「……早いね」

「温泉なんて久しぶりですもの!」

 村の男達は狩に出るのがほとんどだが、時々別の村から、害獣や賊を追い払う仕事を持ってくる。腕の立つ男が多いせいもあるが、イブキが小さい頃からだったので疑問は無かったが、ミサカはそれは凄いと驚いて、今はこの村を誇らしく感じているようだった。


 村付近が物騒だったため、水辺近くやまして温泉が湧くところなど警戒して近づけなかったが、今日で片付くことが分ると、ミサカは家の仕事を手早く片付けたのだ。

 しきりにイブキと二人きりで入りたいと言い募っていたので、日は高いが、男達も出払い、女達も村に留まっている頃に二人で出かける。

「なんでまた。何かあった?」

 入り始めた頃はひりつくような錯覚を覚えたが、馴染んでしまえば肌に心地よく、早くもふやけてしまいそうなほどだ。

「んとね、あの、姉さまは好いた殿方はいらっしゃる?」

「ないなぁ……」

「ほんと、に?」

 信じられないのは分るが、ミサカの唐突な質問には苦笑してしまう。

「あたしらは、家族ってしか思ってなかったからなぁ。今更、若い奴に色目もないね」

「ど、どうしてですか?私は、そう思えなくって。皆、姉さまと似た感じだし。私、だけなの……誰にも言えなくて」

 小さい頭を優しく撫でた。

「変なことじゃない。ミサカもいい年頃だもの、相手も見つけなくちゃ」

 ミサカの顔が赤くなる。

「……まぁ、湯につかってこんな話しも長くはできないよ。ちょっと涼もう」

 腰掛けるのにいい岩を見つけ、静かに吹く風に火照った身体を涼ませる。

「姉さまは、お相手を探さないの?」

「誰も貰っちゃくれないよ」

 腕に、腹に、背中に、足に。ここかしこ、新しい傷もあれば古い傷も残っている。

「そ、そんなに綺麗な身体をしてるのに?」

「綺麗?」

 まさかそんなことを言われるとは思わなかった。村の女から比べても傷は多いし、包容力のない身体だ。

「そかなぁ」

「綺麗、だと思います。私は胸も育たないし、足も腕も細い」

「ミサカはこれからだよ。大丈夫。ミサカは今村一番の美人だから」

「そんな、うそ」

「嘘じゃないよ。あんたの母さんだってとっても綺麗な人だったもの。あんたはその娘」

 母と聞いて、ミサかは顔を曇らせた。やはり寂しさもあるのだろう。

「今度、都に行くけど、行くかい?」

「いい」

 直ぐに首を横にふった。何度か都に行くかと誘ったが、ミサかは頑なに行きたがらなかった。

「姉さま。気をつけて行ってきて。……ちゃんと帰ってきてね」

「ん。大丈夫」

 少しだけ冷えてきたので、湯につかる。

「ところで、ミサカは誰がいいの?」

「え、あ、きゃぁあ!」

ミサカが身体を丸め、イブキは慌てて湯から出る。

「あんたら!」

 手ごろな石を投げつけるも、空しく人が逃げる音しか聞こえなかった。

「すまん、ミサカ。……あいつらも上手くなったな」

「いえ。だいじょうぶです。仕返しは必ず……」

「もちろんだ」

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