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第九話 妄想でどれだけの事考えてたって、現実がそれどころじゃなかったら、そんな雰囲気にはならないのよね。でも、しっかり目に焼き付けたわ(録画モード)

前回のあらすじ『プロポーズどころじゃないし、身体の変化に性y…心が付いて行くか心配。それに下着とか、メイクとか、女の子としての生活も考えないとね(下心)。でも、真の身に何か・・・』



「真っ!!…大丈夫?…って…」


荒い息のままベッドを見れば、赤い顔をして布団に包まっている真がいる。

…そう、言うなればダンゴムシのような…。


ベッドの周りには、服やタオルが散乱していて、明らかに慌てた様子が見て取れる。


…どういうこと?


状況が飲みこめず、思わず厳しい目のまま、部屋の中を見回してみるけれど。

他におかしな点は見当たらない。


「?」


「…る…瑠璃、お帰り。きょ…今日は、遅かったんだね…」


真っ赤な顔のまま、いまいち歯切れの悪い口調。

…何かあるわね…。


『まさかっ!!』


また何か身体に変化が出たのでは?

このあいだ女の子になったばかりだけど、それ以外の変化や変調が顕れない保証なんて、どこにもありはしない。


…他の人には見せられないような変化が!?


血の気が引く音がする。

持っていた袋は床に落ち、手は震え、足に力が入らない…。


それでも。


「真っ!大丈夫なの!?」


心配だけが先に走り、布団に包まる真へ手を伸ばす。


「えっ!?あ、ちょっと、瑠璃…やめ…っ!!」


布団ごと抱えてベッドに座らせると、しっかりと握られている布団を引っぺがす。


「…なっ!!…ま、真…!?」


思わず言葉を失った。


布団の中は、一糸纏わぬ姿の真。

その肩は羞恥に震え、上気した肌はほのかな桜色。

真っ赤に火照った頬は煽情的で、誰であろうと目を離すなんて無理に違いない。


でも。


今の私に、そんなことを気に留める余裕はない。


「大丈夫!?…痛いところや、変わったところは無い?」

「え?…あぁ、うん」


胸を隠すように身体を抱いていた手を取り、腕を見、脇から胸元、おへそのあたりまで、何度も見回すが…。


特に変わったところは無い…。


「苦しいところや…何か違和感とか…何でもいいわ!とにかく教えて?」


肩を掴んだまま、何度も揺さぶって問いただす。

形の良い胸が大きく動くけれど、それすら目に入らない。


ただただ、真の身体に異常が無いか…それだけしか気に留める事はない。


「る…瑠璃ぃ…」

「教えて、真っ!どこが苦しいの?…まさか、見せられないくらいに…?」


手が震え、唇がわななく。

動悸が激しくなり、目の焦点も合わない。

涙が…込み上げてくる…。


真…。


「ち…違うよっ!落ち着いてってば、瑠璃!!」


叫ぶような声を出し、私が怯んだ一瞬、肩を抱いていた手を振り払って…。


むにゅっ


その豊満な胸に、私は捕らわれていた。


頬に伝わる柔らかさ。

鼻腔をくすぐる香り。


思わず、空いた手を真の腰に回してしまう。


理屈でも、理性でもなく、ただ本能的に真に抱き着いていた。


そして深呼吸。


「瑠璃。落ち着いて聞いてっ」


真の声は冷静そのものだ。


「心配するようなことは、何もない。…何もないんだよ」


…でも、それならなぜあの時、布団に包まっていたの?

まるで何かを隠すように…。


「…そ…それは」


それは?


視線が逸れる。


沈黙。


「…」


…?


…あ


つまり、真は自分で自分の身体がどうなってるのか、知ろうとしてたのね。

具体的に言えば『(自主規制)』


「ちょっと瑠璃っ!!」


そっか、ご両親が不在で、私も今日は遅いから、手持無沙汰になった真は、気になってた自分の身体を弄ってたら気分が乗っちゃって、『(自主規制)』を『(自主規制)』で『(自主規制)』な事したり、『(自主規制)』で『(自主規制)』な『(自主規制)』をシていた時に、私が来たものだから大慌てで布団を被った…と。


「大きな声で言うなよ…」


真っ赤な顔の真が、私の手を振りほどいて、小さな声で呻くように呟く。

今度は、布団を頭まで被って引き籠ってしまった。


はぁ、と小さく息を吐く。


潜り込んだ布団の上から真に抱き着き、顔を埋めながら小さく呟く。


「…良かった」


込み上げて来た涙が布団を濡らすが、それでも私は離れない。

…真が無事で良かった。


僅かな時間ではあったけれど、この世の終わりのような絶望感に包まれ、生きた心地がしなかったもの。


布団越しに真の暖かさを感じられた。


このまま…時間が止まればいいのに。



「…くしゅんっ!」

「あ」


真のくしゃみで現実に引き戻される。


ナニかしてる最中から、ずっと裸だった真。

おかげで、身体が冷えてしまったみたい。





今日、買って来たものを真に差し出す。

コスメは後で良いとして、下着は着けて貰わないと。


大体、床に転がってる下着は、男物のトランクス。


…また履いてたのね。


「だって、解放感あるし、動きやすいし…」


女の子でそれは、アレコレ見えちゃうって事なんだけど、それわかってる??

気まずそうに俯く真。


というか、そもそもサイズが合わないから、落ちちゃうんじゃないの?


「それは…ズボン履いてれば関係ないし」


学校の指定は、女子はスカートなんだけど。

それに、学校へ続く坂は、吹き下ろす風でスカート捲れるのっ!

見られ放題な挙句に、トランクスの中まで見せちゃう気?


ぐうの音も出ない真。


「…」

「とにかく、新しい下着に着替えて。慣れなきゃいけないでしょ?」

「…うん」


真っ赤な顔のままで小さく頷き、真新しい下着を手にする。

そして何か気が付いたように、私の顔をじっと見つめた。


…なんだろう?

あ、もしかして新しい下着買って来たこと、ちょっと気にしてる?


もうっ!私と真のあいだだもの、そんなの気にする事じゃないわっ!!


「あの…」

「…?」

「見られてると…その、恥ずかしいんだけど…」



恥ずかしい?

…さっきまで全裸で、ナニかしてたのに?

しまったな…ナニかしてるところまで、ちゃんと見てればこれくらいのことで恥ずかしがったりしないのに。


小さくため息を吐いて、腰を上げる。


背を向けてドアを開け、部屋の外へ…。


「着替え終わったら呼んでよ?」

「…うん」


一旦、部屋の外…。

真が恥ずかしがるから、階段下で待ちましょうか。


たったそれだけの時間なのに。

それなのに、この胸の奥にある不快感は何?


少しだけ手を握る。

…汗ばんでるな。

呼吸も浅い。

足に力が入らず、階段に腰を下ろしてしまった。


…はぁ…


少しだけ深呼吸。

あぁ、手が震えてきた。


……怖い。


本当に、怖い。


真が、どこか遠くへ行ってしまいそうで。

私の知らない何かに変わってしまいそうで。


「……やだな」


小さく呟く。


私は…


ただ、真にここにいてほしいだけなのに。

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